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英雄の送人  作者: SOGEKIKUN
第三章〜追憶の君へ〜
63/77

⑨「憂鬱な季節②」

          

          ―見出し―


―『ここ、交易都市エディソンで謎の襲撃!!

      奴らの目的はいったい何なのか!?』―


記載日:聖暦207年10月24日

記載者:マーコス=マーレ(偽名)

記載元:エディソン領所属「空風の落とし子」より


 皆さん、もうすでにご存知でしょうか? 

 数日前多くの町民を震撼させた事件[城門襲撃事件]が起こりました。


 謎の集団による組織的な襲撃事件はここ、交易都市エディソンの人々を脅かしました。


 目撃者のある商人の証言によると、何でもその人数は千人は超えていたという情報も。


 幸いにも、一般の人々達には被害は確認されていめせんが、城壁に大きな被害が出たと言う情報もありました。


 このことについて、ネフェルタリア家領主ネフェルタリア=エルサレン様に私達の取材に応じてくださいました。


 ここからは彼の言葉と取材の様子をそのまま記載させていただきます。


取材班:「今回襲撃された事件についてですが、民たちに大きな被害は起きなかったのでしょうか?」


領主様:「今回の襲撃では、奇跡的に大きな被害はなかった。襲撃に気がついた守衛がいち早く反応して、逃げる商人達をいち早く門内に保護してくれたおかげだ。彼らには一人の領主として、とても感謝しているよ。」


取材班:「組織的な犯行だったと噂でお聞きしましたが、実際のところお伺いできますか?」


領主様:「それについてだが、これは、複数の盗賊団が結束して、エディソンにある物資を強奪しようとしたのが事実だ。組織的だったが、冬を越そうと行われた偶発的な行動だと思える。」


取材班:「あくまでも計画的ではないと?」


領主様:「そうだ。」


取材班:「そうですか。ありがとうございます。

 では、次の質問です。封鎖された壁の外で、魔法らしき、いくつかの爆音が起こっていましたが、彼らは相当の戦力を持っていたのですか?」


領主様:「それについては、防ぎようがない事実だ。彼らの中には、魔術を使ってくるものもいた。

 幸い、こちらにも魔術師は多く雇っていたから、問題はなかった。」


取材班:「ありとうございました。最後に、何故私達のような組織を自らお立ち上げになられたのですか?場合によっては、軍事機密も、漏れる可能性がありますが。」


領主様:「ここは私個人の感想だ。現在のマクロス王国での王国民の習字率は低い状況だ。

 習字率が低ければ、情報の伝達が遅くなり、結果として王国ないでの物資の流通を大きく阻害してしまう。

 これは、ここ「王国の食糧庫」であるエディソンには痛い打撃となるだろう。

 しかし、王国民の多くが字を読み書き出来るようになれば、国の運営効率が良くなる。

 そこで、私は国王様に貴方たちの組織を設立することを相談させていただいた結果、初歩的に我が領地で実験的に実行しても良いというお許しを授かったのだ。」


取材班:「多少のリスクよりも、大きなメリットを選んだということですね。取材は以上です。ありがとうございました。」


 


 続いては、王都での事件についでです。


―『王都にて、義賊再び襲来!!またもや悪徳領主から財産を頂戴し、貧民層にばら撒き…


―――――                ―――――


 リリアはため息をつきながら、読んでいた「新聞」と言うものを伏せた。


相変わらず、上手い情報の出し方だ。

 嘘と真実をごちゃ混ぜにして含ませて、真実味のある情報に仕立て上げてある。

 この記事で、先日の事件で不安を抱いている街の人々も、安心してしまうだろう。


 それよりも、何故私がため息をしているのかを教えて上げる。

 私達が紅い鳥の騎士団との訓練をしたあと、せっかく冒険者依頼を受けようとしたのに、何故かここエディソンの北東の地域で複数のBランクの個体が確認されてしまった結果、Fランク以上の依頼を受けることができなくなってしまったからだ。


(せっかく、今回の活躍でEランクに昇格出来たというのに、前途多難よ!!)


(どうしてだい?今回の任務で、1ヶ月は依頼を受けなくて済むくらい報酬をもらったじゃないか?)


(!?)


(幸い僕達の武具は普通の武器とは違うから修理は安くつくし、元々僕達の防具は最低限だっでしょ?

 ポーション類とかも騎士団からお裾分けしてもらったものもあるし…)


(ちょっと!?兄さん?人の思考に入ってくるのは辞めてくれません?)


(いや〜、かわいい妹の思考なら入り込むのは余裕だよ。これが兄ちゃんパワーだ。)


(何が兄ちゃんパワーよ!!、普通の人はこんなこと出来ないから。てっ!?もしかして、長男も出来たりしないわよね!?)


(何を言ってるんだい?出来るに決まっているだろう?)


私は、二度目のため息をついたのだった。


(もうヤダこの兄達…)


今、私は「眠りの風」のカウンターで昼飯後の食休みをしている。


 直ぐ隣ではサンソンが紅茶を嗜み、カウンターの向こうでは、ジルが楽しそうに鼻歌を歌いながら、昼飯分の皿を拭いていた。


いい気なものだ。

 まあ、宿屋を営んでいるジルにとって、普段から街を離れる冒険者がしばらく泊まるようになるので、いい商売の機会となるのは理解できる。


それにしても、上機嫌である。


 私達とは逆に、最近、何か良いことがあったのかもしれない。


「そんなに良いことでもあった?ジル?」


「よくぞ、聞いてくれたわっ!!」


ジルはいきなり凄い勢いでカウンターのテーブルに手をつけて、私達に姿勢を傾けた。


ほん投げられた皿は、サンソンがいち早く反応したお陰で奇跡的に割れることはなかった。


「ちょっと!? ジルさん!?」


サンソンが不満を溢すがジルはそんなこと気にしている余裕はないようだ。


「実は、私ね。好きな人が出来たのよ?久しぶりの恋だわ!!」


普段は落ち着いているジルの変わりように、少しだけ驚きながらリリアは落ち着くために、紅茶を啜る。


(うぅ…まだ熱い。)


少し口の中を火傷してしまった。


「ジルさんって…ロマンス派なんだね。」


 サンソンが皿をカウンターに戻しながら口ずさむと、ジルは両手を絡み合わせて、クルクルと身体を回転させながら神に祈るポーズを取り始めた。


「ああっ、神様に私の特製ホットケーキ十段盛りをあげたい気分だわ!!」


「ジルはどうして、その人を好きに?」


「それは、乙女の秘密よ? けど、これだけは言っても良いわ。彼と私は一緒に世界中を回る約束をしたの。きっと、いい新婚旅行になると思うわ〜!!」


(ギャァァァ!?目が?目がぁぁぁ↗)


(誰かぁぁぁ私のジルの笑顔を今すぐ写して!!

早く!消えてしまう前に!!)


私は、顔を僅かに赤らめて笑顔を振りまくジルの後光に両手で目を覆いかざしながら目を瞑った。


「行けない!!しっかりこの目に焼き付けなくては。もう、この天使の笑顔が最後なら私は目が見えなくなってもいいっ!!(よかったじゃない。)」


「本音と建前が真逆だよ!?」


 ツッコミを入れるサンソンをよそに、そのままジルは再び同じ皿を拭き続き始めてマイワールドに入っていってしまった。


ありゃりゃぁ…こりゃあしばらくこっちに戻ってこないかも。


ジルは結婚後のスケジュールを頭の中で高速回転させているようだ。


「エヘヘへ。」


いつも大人びたジルが出すとは思えない声を出しながら皿を布で擦る姿にリリアは興奮を高めた。


(キャア、かわいい!!)


「もう、死んでも文句言わない。ありがとう神様。」


「何を口走っているんだうちの妹は…」


その時、「眠りの風」の入り口から二人の男性の声がしてきた。


 リリアとサンソンが振り向くと、そこに立っていたのは、獣人の二人だった。


()()()()()()である。

ちなみに、背が高い兄がリューク、少し低い弟がデュークだ。


「お疲れ様っす。」

「こんちわ〜…ありゃぁ?、ジル姉さん。心ここにあらずって感じですね?」


2人は、ジルが店を始める前に裏路地で、拾った兄弟らしい。


拾ったって何?


いくらなんでもこんなデカい生き物をそこらの野良犬と同じように言うのはどうかと思う。


「こんにちわっす。リリアさん。サンソンさん。ジル姉さん。取り敢えず、店の食糧庫にしまっておきやすよ?」


 私とサンソンに挨拶をしたリュークがそう言いながらカウンターの奥に入っていく。勿論デュークも食べ物が入った木製の箱を持ちながら、ついていく。


2人とは、この二〜三週間の間でとても仲良くなった。

二人とも気のいい近所のお兄ちゃんって感じだ。


そして、この店の用心棒兼店の手伝いをしている。

どちらも、虎の獣人だけあって喧嘩や戦闘能力は備わっている。


元来、獣人族はどの種族も、魔物に負けず劣らず力を持っているものだ。


鼻も利くことで宿屋の警備としては最高の戦力になるだろう。


そして、彼らにはプライドがあり、果敢に敵に立ち向かう。いわば、"怖い物知らず"な種族だ。


その中で、大型の獣人族は兄弟な力を誇る。


もし、冒険者のランクで表すなら、Aランクの上位に余裕で食い込むことが出来る。


 だから、荒々しい冒険者が入ってきたとしても、大抵はこの二人がおもちゃにしてしまう。


この宿が人気な理由な一つだ。

この二人が守る宿は、とにかく、安心感が半端ないのだ。


 一見、ガサツそうな2人だが、料理の腕は料理上手のジルと同等の腕前だ。


この前、振る舞い料理のオークの丸焼きをスライスしたものを食べさせてもらったが、絶品だった。


また作ってもらいたいものだ。


「そういえば、アンセムは?どこいったんだい?」


サンソンがふと思い出したように言う。


「アンセムは、大剣の鞘を取りに行ったわよ。私達には秘密の鍛冶屋らしいわ。あの人、いったい何個秘密を持ってるのかしら?」





――――                  ――――



 俺は馴れ親しんだ雰囲気の暗い通路を歩いていた。


何度かバスターソードが古い骨董品にぶつかり小さな音が廊下に響き、いい音色を奏でている。


ちなみに、前方にはいつも通りロアが先行してくれていた。


そう、俺は「鋼の炎」にいる。

 先日に頼んでいたバードの鞘を受け取りに来たのだ。


 迷路のような通路を歩いていると、角を曲がったところで赤い光が見えてきた。


 その光の奥から金属音がこだましているのが聞こえてくる。


 そして、杉の木製で出来た扉の前に近づき、二人とも、そこで立ち止まる。


 そして、ロアは、振り向きながらドアを開けて、中に入るように手招きした。


「どうぞ。」


俺は、開かれたドアの向こうに進む。


俺は目の前で金槌を叩くドワーフの爺さんに話しかけた。


「七日ぶりだな。爺さん。」


ガーノルフは金槌を止めて、こちらを見ると厳しそうな目つきを優しい目つきに変えた。


「遅かったぞ。この老骨を予定日よりも二日も待たせるとは、何か面白いことでも独り占めしておったな。」


「まあ、そんなところだ。鞘は出来てるのか?」


「ああ、出来てるとも。そこに差し掛けてある。」


ガーノルフが指差したところを見ると、剣が沢山刺し掛かっている樽の中に一つ大剣用の鞘が刺してあった。


柄の真ん中には綺麗な青色の魔石がはめ込まれていた。


 そう、アオの形見だ。

 "アオ"とは、俺がダンジョン?を旅したときに出会った青色のスライムだ。

 魔石をあげたら懐かれて、それからは、アオと一緒に辛い、厳しい冒険者をした。

 そして、脱出手前で、ボスに殺されそうになった俺を庇って死んでしまった。


 今では、綺麗な魔石が残るのみで、俺はそれを大事にしている。

 

 そして、ガーノルフ爺さんの提案によって剣の柄にはめて有効活用することにした。


冒険者が魔物の命に対する弔いの習慣らしい。


 俺は、差し掛けてある大剣の柄を抜いて、ゆっくりとバスターソードを鞘にしまう。


「最高かの?」


 かなり、いい出来栄えだ。

 ズレもなく、違和感が全くない。


「ああ、最高だ。ありがとうな。」


「そりゃあ良かったの。アオというスライムも喜んでいるだろう。ところで、神剣様は、どうしたかの?

 声が聞こえてこんのじゃが。」


「音信不通さ。聖剣の相手をしているらしい。」


「そうかの…」


ガーノルフはそう言うと、肩を落とした。


「本人は、そのうち戻って来るって、言ってたから大丈夫さ。その時にはいの一番に会わせてやるよ。」


 そう言って、俺は騎士団から、先の戦いで手柄を挙げたときの報酬で貰った元よりさらに大きなマジックバックから聖剣を取り出した。


 改めて見ると、とても綺麗な刀身だった。純白ミスリルが光輝いていて、不純物なんて一つもない。


 いや、一つあったな…。


 あの聖なる魔力を発しているミスリルソードには、誰もが認めるだろうやかましいの娘が宿っているのだ。


 今は静かだが、帰ってきた時のことを考えたら虫唾が走りそうになる。


 まだ、バードのほうがうるさくない。


「ほう…綺麗じゃの。聖剣というのは、その剣の声が言っていっおったのか?」


「ああ。そうだ。」


「アッハッハッハ。」


 急にガーノルフが短い足を叩いて、大声で笑い出した。


「ど、どうしたんだ!?」


「いや、それはお主。女神セシティアから寵愛の加護を受けておるようだの? 

 まあ、仕方がなかろう。彼女は創造神のほかに、戦の女神でもあるからの。

 お主なら、いつ戦士の加護を受けてもおかしくはなかろうに…。

 わしが知る限り、その加護を持っていたいたものは、史上三度目じゃろうな。」


ウソだろ?


「少なくとも、俺は神を信仰していないはずだが?」


「お主の信仰というよりも、女神様がお主を気に入っているのだ。そこに信仰も何もなかろう。今それをつかめることが、何よりの証拠じゃよ。」


 確かに、騎士団に取り調べを受けたときにこの聖剣を預けようとしたが、何故か手渡された騎士団員はいくら持とうとしても、手が弾かれてしまって持てなかった。


俺としたら、あのじゃじゃ馬娘が好き嫌いしているだけだと思ったが、そんなことがあるのか。


まあいい、神様が俺を使って何をさせようかなんて、今考えても意味がない。


俺は今を生きるだけだ。


「それよりも、どこで手に入れたのだ。その聖剣は?」


「それはだな…」


俺はこの数日間の一連の出来事や、誰かの記憶を垣間見たことをガーノルフに話した。


「ふむ…興味深げな話じゃ。もしかしたらお主は女神様に「英雄の送人」としての役を与えになったのかもしれぬ。」


「英雄の送人?」


「おや、知らんのか?、そうじゃったな。お主は今は記憶喪失だったの。

 英雄の送人とはな、英雄の最期を見届け、あの世へ送り出す者のことじゃ。他に、英雄の旅立ちを見届ける者とも言い伝えられておる。

 英雄の送る人生の多くは悲惨な者が多い。大いなる力、大いなる責任。そして、絶望と渇望。その苦しみは英雄本人にしか分からぬ。

 だから、英雄は後に厄災となることもある。

その苦しみから救って、粗奴らの最期を見送って死後厄災となることを防ぐ役割を担うらしい。

 これは文献から読み取ると、太古から続く、女神セルビアに授かった役割だそうな。それ以外は何も分かっておらん。

 ただ分かることは、英雄が最期を迎えるとき、何処となく現れて、最期を見届けるのみだと…。

 お主、いくらか心当たりはないのか?」


興味深い話だった。

だが、到底信じらることはできなかった。


そんなおとぎ話のようなことがあるのか?


いや、目の前に神剣と聖剣がいるからなんともいえないが…。


「お主の立てた傭兵団の名前だって、それからつけられたのだぞ?」


「そうか…しかし、俺にはおとぎ話でしかない。

確かに俺は爺さんの言う「英雄の送人」に近い経験をしたが、それは偶然の一致に過ぎないんじゃぁ…」


「偶然も必然も、神から見れば()()であるぞ、我が友よ。」


「………。」


「まあ、あまり信じられないが頭の片隅に置いておくよ。ところで料金についてたが………」


「ああ、それについてだが要らんよ。」


「え?」


「変わりに、頼みたいことがある。おい、ロア。」


「ハイ。」


どこからともなく、ロアがお茶を持って鍛冶部屋に入ってきた。


そして、目の前のテーブルに置いて、ガーノルフの隣にあった椅子に座った。


「ある村から依頼があっての。まあ、修理したバトルアックスの届け出だが、そのことについて、ロアの護衛を頼みたい。

 今まではわしが直接訪れていたんじゃが、たまたま予定が会わん。

 だからロアに代理を担ってもらうことになったが、いかんせんタイミングが悪い。道中、Bランク以上の魔物が蔓延るようになってな。」


「それが代金ってことか?」


「ああ、そうとも。ここは友の頼みを聞いてくれるかの?」


「少し、考えてみる。今はパーティーメンバーもいるしな。」


「ほう?丁度良かろう。お主のためになるしな…」


「今、なんか言ったか?」


「いや、何も言っておらんよ。それよりも、他の冒険者パーティーも雇ってある。」


「冒険者パーティー?」


「ああ、少々生意気な若造がパーティーリーダーを務めていったがの。少しだけ手ほどきしておいた。まあ、根は良さそうな奴だ。そいつらの面倒も頼んでいいかの?」


「あ〜あ〜分かったよ。やるよ。けど、これとそれは、話が別だ。鞘の料金は払うし、後でその依頼に成功したときにもらう。」


「記憶を無くしても、誠実なところは変わらんの。まあ良い。見た目に反して、真面目な所が気に入ったからの。それでは頼んだぞ。」


「ところで、その冒険者パーティーはどこに?」


「冒険者ギルドの二階のテラスに待たせてある。ロア、同伴して上げなさい。」


「ハイ」                



次回は来週の土曜日0:00です。

お楽しみに〜!!

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