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英雄の送人  作者: SOGEKIKUN
第三章〜追憶の君へ〜
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③「紅い鳥の騎士団・訓練編・前編・Side:マーティカ」


 マーティカは絶望していた。


何故、あんなクソ野郎に教えを請われなければいけないのか良く分からなかった。


 強面で、大柄な体で、それに見合うほどの大きな大剣を背中に背負った男だ。


 嫌と言うほど、私のキライな父に似ていた。

酒が好きで、家事は母に任せて何処かふらっと消えてはたまに帰ってくる。


私の気も知らないで、冒険者稼業に身を費やして金を貯めてから母さんと私を置いて死んじゃった。


ただ、一緒に居たかっただけなのに。

私の父は死んだ。


後で聞いた話だが、パーティー仲間を魔物から庇って死んだらしい。


どうして、その人よりお母さんと私を優先してくれなかったの?


そんな疑問を持つばかりだ。


小さい頃の記憶だが、母さんは父が死んでから一人で私を育てながら、商人として独り立ちしていった。


その時の母さんの顔はどうにも悲しそうだった。


どうして、母さんはあんな男を好きなったんだろう?


 母さんを悲しませた父を、そして冒険者を嫌いになった。


 そんな母を少しでも守るために、私は一生懸命努力して紅い鳥の騎士団に入団した。


 なのに…よりによってなんで私達訓練兵を教えているのが冒険者なの!?


 マーティカは絶望が頭に浮かんでくるなか、無駄な努力だが、隙を見てはあのガタイの良い臨時教官を睨んだ。


 なぜ騎士団は信頼の置けない冒険者なんて雇ったんだろうか?


 そんな疑問を抱くばかりで、握っている剣に全く集中できなかった。


「大丈夫かい?集中できていないよ?」


 私の打ち合いの相手に手を抜いているのがバレてしまったらしい。


無理もない、今の私の剣先はブレにぶれているから。


「ごめんなさい。」


 そう打ち合いの相手に謝って、丁度打ち合いの手を止めていた、気の弱い短髪のロッシュに注意をしている臨時教官を見た。


私の相手も私の視線を追って、片方に付けてあるピアスを揺らしてクスッと笑った。


「ああ、彼のことね…」


 元々顔が整っている彼のその笑顔は私を赤面させた。

そんな私の様子に気づかず、彼は一度木刀を下ろして、臨時教官の方向に振り向いて言った。


「彼に不満があるのかい?」


「えぇ…なんで冒険者が教官に?」


「まあ、彼を知ればそのうち理由が分かる…よっ!」


そう、含みのある様子で私の相手は私に振り向いた瞬間。木刀の斬撃をぶつけてきた。


「くっ!?何か彼について知ってるんですか?」


「さあね。」


あっさり濁されてしまった。


 その後も濁流のように止め処なく、打ち合いが続いていく。


 剣を打ち合って行くうちに、段々と相手の剣筋が急に早く、激しく、そして私の急所をフェイントを交えながら、的確に狙ってくるようになった。


私は必死に喰らいつこうとするが、まるで歯が立たない。


「くっ!?」


 どうやら相手も、集中できなかった私に合わせて手を抜いていたようだ。


ついに打ち合いが終わるまで、相手に終始圧倒され続けていた。


(こ、この人、なんで訓練兵の中にいるの?)


こんなの素人のうる覚えの剣先ではない。


 臨時教官の打ち合いの終了の合図により、訓練が終わった。


私は両手を両膝に置いて息絶え絶えになっていると、私の打ち合い相手の青髪の青年が軍用の水筒を差し出してきた。


「よく、頑張ってるね。君、独学だろう?」


「な、何故それをっ!?」


 私は顔を急いで上げて相手の顔を見ると、相手の笑顔にまた顔を赤らめてしまう。


 私はその顔を隠すように勢いよく水筒の水を口に流し込んだ。


「だって、君の剣は荒々しいからね。基礎が出来上がってない証拠だよ。」


 そう言って、私に続くように私の打ち合い相手は軍用の水筒をゆっくりと傾けた。


 その時に気がついたが、彼は私と違って汗一つかいていなかったのに気が付いた。


(ウソっ、あんなに激しく動いていたのに?)


見ての通り、私は汗だくだ。

アンダーシャツが見えてしまうと心配してしまうほど、身体中から滝のように汗を流している。


彼は、まだあれでも本気ではなかったのかもしれない。


そういえば、この人。


私が入団し始めて、二ヶ月たったが見たことがない。


庶民にはない上品さがあったのだ。

 けど、貴族出身の訓練兵なら、平民の訓練に参加はしないだろう。


それに槍使いの少女も見たことがない顔だった。

 槍使いの少女は、同じ槍使いのジョシアと楽しそうに槍を突き合わせていた。


(あれ?、おかしいな、この騎士団は募集は年に二回なのに…?)


少なくとも今日ではないはずだ。


新入団員なら私達が一番新しい世代のはず。

一応名前を聞いてみよう。


「良かったら名前、聞いても良い?」

「ああ、そうだったね。僕はサンソンだ。。」


「ええ、私はマーティカ。よろしく。」

(サンソン…そんな人、訓練兵にいたっけ?)


「マーティカかい?良い名前だ。よろしく。」


彼は朝日を思わせる爽やかな笑顔て手を差し出してきた。


(うぅ…その笑顔、止めてっ!!)


自分の顔がまた赤く水蒸気を発していないか心配しながら、マーティカは手を握った。


「ありがとう。そういえば貴方、いつからここに…」


「訓練生、集合。」

その時、私たちの会話を遮るように臨時教官から整列の合図が掛かった。


私はすぐに自分の整列に走り出した。

 前の教官には遅れた時によく怒声を上げられてきたので、嫌でも体が勝手に動く。


私達が整列し終わる頃には正面から、ブルーメル=ジーリス大隊長が訓練場に入って来るのに気が付いた。


ブルーメル大隊長は私が入団する時にいた審査官だ。


伯爵家であるジーリス家のエリートの出であること町のちまたでは有名だ。


この土地を治めているネフェルタリア=エルサレン辺境伯家の次に偉いと言えば分かるだろう。


 彼は騎士団の業務を殆ど単体でこなしていて、エディソンの町警護の責任者で、

私が入団する前に一度、町中で冒険者を取り締まっているのを見かけたことがある。


 荒くれ者の多い冒険者を取り締まってくれる彼は正直言って、とてもかっこよかった。

 その時の彼に憧れていたこともあって、ここに入団したのだ。


そんな彼が、何故ここを訪ねてきたのだろうか?


やがて、私たちの前で立ち止まった。


「全員、構えっ!!」


急に臨時教官から指示が出て、油断していた私は少し動きがズレてしまった。

臨時教官が、私を含めた動きがズレているものを睨みつけた。


(な、何よ?やるの?)


私は一瞬躊躇してから睨み返すが、

 その頃には臨時教官の視線はブルーメル大隊長に集中していた。


「良く訓練に励んでいるようだな。諸君らも既にご存知だろうが、

 この騎士団員は貴族出身のものもも交じっている。基本的には身分差は気にしないことになっているが、最低限程度の礼儀をわきまえるように。」


「さて、前置きは此処までにして…訓練生は3日後に合同訓練に参加することになった。

 貴族グループと平民グループも一緒にだ。詳しいことは午後の集まりに話す。質問があるものは?」


彼の言っていることに私は困惑してしまった。


どういうこと?


私以外の訓練兵達はザワめき出したようだ。


「どういうことだ?」

不良のような見た目のガルーが叫んだ。


「何故僕達が合同訓練に?」

ロッシュが手を上げながらブルーメル大隊長に質問した。


「より早く戦力を補給するためだ。」


まだ私たちには合同訓練に参加できるほど、よく訓練されていない。余りにも時期尚早だった。


しかし、私は逆によいチャンスだと思った。

 今回が負けることが必然的でも、先達者達の技を経験出来るいい機会だからだ。


先達者という言葉でサンソンを思い出した。

そういえば、サンソンはどこに言ったんだろう。


私が整列していたときには整列の中には居るようには見えなかった。


まあ、私が確認できていないだけで何処かで並んでいるのだろう。


訓練兵達の質問がこれ以上ないと、判断したブルーメル大隊長は、話を続けた。


「あと、そこの臨時教官。こっちへ来い…」


ブルーメル大隊長に呼ばれた臨時教官がブルーメル大隊長に近づいていく。


なんだか、個人的な話をしているようだ。

その時のブルーメル大隊長の顔は笑顔だった。


何故か嫉妬の念が私の心にまとわりついてきた。


(はあ!?なんで、ブルーメル大隊長とあんなに仲良く話してるのよ!?)


やはり、あの冒険者は私の敵のようだ。


   ―――――――――――――――――――――――


私は目を見開いていた。

 私は今、騎士団の敷地にある中央の敷地で騎士団員に交じって整列していた。


(どうして…どこかに消えていたサンソンがあの臨時教官の隣に立っていの?)


もう片方にはあの槍使いの少女もいる。


(まさか…サンソンも、冒険者なの?)


もし彼が冒険者なら私の先程の質問は完全に失言だった。


 彼に嫌われるたかもしれない、と思って焦ってしまったが、よくよく考えみてその後の彼の優しい対応を思い出して、無理やりその念を振り切る。


(もし、彼が嫌がってたら素直に謝ろう。)


ブルーメル大隊長の言葉を聞いていた周りの訓練兵達がどよめき出した。


 規則違反になるが、私はこっそりと隣で目を丸くしている親友のジェシアに話しかけた。


「ねぇ、あの臨時教官の隣に立ってる槍使いの少女って…。」


 ジョシアも驚きを隠せていないようだ。明らかに動揺している。


「そ、そうね。彼女は私と一緒に槍の打ち合いをしていたわ。いったいどういうことなのかしら?」


「さあ?」


私は、わざとらしく肩をすくめた。


ジョシアは入団式の時に私の隣にいた子だった。

私から話しかけてみたら、彼女は戸惑いながらも丁寧な口調で、答えてくれた。


 同じ商人の出だったこともありあっという間に仲良くなっていった。

 今では、よく一緒にいる私の大事なパートナーだ。


「ちょっと。整列中にそんなに体勢を崩したら、後で、罰が下っちゃうわ。」


こういう時、いつも私の駄目なところをしっかりと注意してくれるしっかり屋さんだ。


普段だらしない私には丁度いいパートナーだと思わない?


「そうだぜっ!!お前、前の教官にそれで何回も罰を受けてたじゃねぇか。

 怒られないうちに止めとけ?お前の嫌いな冒険者なんだろ?なっ?、だったら目をつけられないうちに、やめといたほうがいいぜ?」


ジョシアの向こう側から荒々しい声が聞こえきた。


ガルーだった。


彼はこの中で一番剣の腕前がよく、身体を動かすなら誰にも引けを取らない体力自慢だ。


不良のようなガラの悪い見た目をしている割には、性格は悪くない。


むしろ、気のいいやつだ。

入団直後の時、忘れ物をしてしまった私を被って、変わりに怒られたしまったことがあるくらいだ。


彼も同様にだらしない私を気にかけてくれている一人だ。


そんな陽気な一人だが、なぜかよく気の弱いロッシュと一緒にいることが多い。


ガルー曰く、ロッシュは私以上に駄目な所があって、ほっとけないらしい。


「フンッ、あんたもね。このぐうたら息子。」


ガルーの後ろからツンとした声が聞こえてくる。


「イテッ、わかってるよ!お前が起こしてくれなかったら俺は今ごろ腕立て150回なんだろ?」


 見ると、マイが黒髪の短い黒髪を揺らしながらロッシュの股に蹴りを入れていた。


マイはこの街の靴屋の家出身だ。

 彼女はとにかく気が強い。あのガルーを尻に置いているほどだ。


これでもガルーは町中で喧嘩は強いと有名なのだ。

私もガルーのことを本気で怒らせないようにしている。


だからこそ、彼女の凄さが分かる。


「次は起こさないよ!!」


ちなみに、マイとロッシュ、ガルーの三人は幼馴染らしい。


まあ、そういう関係だからこそ、こういうことが言えるのかもしれない。


「シッ、ブルーメル大隊長が喋り始めたわよ。」


ジョシアが私たちに注意をしたのと同時に、

第一部隊の隊長ブルーメル=ジーリスが口を開いた。


「団員諸君、此度の任務誠に見事だった。」


この広場にブルーメルの声が響き渡る。


「非常に厳しい任務だったが各々がよく戦い、励まし合う姿はこのマクロス王国の盾となるこの紅い鳥の騎士団に恥じないよい戦いぶりだった。」


ブルーメルがそう言うと、広場に集まっていた騎士団員達が歓声を上げた。


ブルーメルが再び手を上げて歓声の声を止めた。


「そんな激戦の中、騎士団に負けず劣らず働いた者達がいた。」


 騎士団員達の歓声が打って変わってがシーンと静まり返った。


「こちらの三名の冒険者だ。」


 そう、ブルーメルが俺達の方向に腕を伸ばすと、騎士団員達がザワきだした。


「どういうこと?」


「なぜ冒険者が…。」


「俺見たぞ。特に真ん中の図体のデカい奴がアンデッド達をバッサバッサ切ってたぞ!!」


「あの冒険者が?」


予想はしてたけど、やっぱりサンソンは彼と同じ冒険者だった。


(失礼なことを言っちゃったな…後で、ちゃんと謝らないと。)


「彼らは此度の騒動のアンデッドの大群の元凶を見つけ出し、私たちのピンチを救った。そのためにたった数人だけであの数のアンデッドに切り込みにいく度量と実力、国を守る我々に恥じない勇猛果敢な姿であった。」


「特に真ん中に立っている者は大隊長クラスの実力を持っている。」


再び騎士団員達がいたザワつきだした。


(ハァッ!?、あの男がブルーメル大隊長と同格?)


私は耳を疑った。


「うなわけねえだろ?なあ、ジョシア?」


ガルーが不安げにジョシアに聞く。

対して、ジョシアはガルーの言葉は耳には入っていないようだ。


ブツブツと独り言を呟いている。


「最近の冒険者のレベルは、そんなに高くないって…祖父がいってたのに。」


「本当かよ!?スゲーなあの冒険者!!」


マイは素直にブルーメル大隊長の言葉を受け入れているようだ。


この子、器が大きいのか、素直な子なのかどっちなんだろう?


再び、ブルーメル大隊長が話を続けた。


「我々紅い鳥の騎士団の規模は現在成長最中だ。そのため、人材不足は必然。そのため、この成績を勝ち取った彼を臨時訓練教官に就任してもらうことになった。」


「はあ!?」


「誰があんなゴロツキ共に教わりたいんだよ?」

「イヤよ。あのケダモノ達からなんて。」


さっきから酷い言われようである。

まあ、そう言われてもいいくらい今の冒険者の民度は終わっていると言っても過言ではない。


盗賊ギルドに負けないくらいにはボンクラが集まっている。

それくらい酷いのだ。


でも、王都での冒険者の質は中々マシらしい。

とにかく、ここでの冒険者の評判は悪いと思って欲しい。


「諸君らの気持ちは良く分かる。動揺や困惑しているものもいるだろう。そこで3日後の騎士団全体で部隊ごとで合同演習を行うことが決まった。」


ザワつきがさらに増した。


「そこで彼には自分で育てた訓練兵を率いて一つの大隊として合同演習に参加してもらうことになった。そこで彼の力を示してもらいたいと思っている。」


騎士団員達のザワつきが絶好調になる。


「細かいルールは順を追って後に説明するが、簡単に言うと、一つの山の頂上を最終時刻まで占拠していた者が勝ちだ。それ以外のものには厳しい罰則が待っていると思え。指揮官は最後の1人になるまでは戦っては行けない。武器は木刀などの練習用の者のみとする。」



次回は再来週の土曜日です。

次回もお楽しみに〜!!

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