㉞「滅亡の刻」
途中で切らせていただきます。
明日の日曜の午前中までには再投稿します。
追伸:終わリました。
空が赤黒く染まりきった瞬間、大きな肉塊に似た何かが大量に町へと降り注ぎいで街の風景を赤く染める。
そのあとの記憶がはっきりしなかった。
赤い光に照らされて、サムは目が覚めた。
ボーとした頭で周りを見渡す。
街中に火が広がり、さっきまで平和だった風景がたったの一瞬で、地獄絵図とかしていた。
火だるまになった多くの男が絶叫しながら踊り狂い、
その一方、道端では少女が目の前で肉塊のようなものに潰された家族だったものを絶望の眼差しで静かに膝を落として眺めている。
その少女の周りでは、人々の阿鼻叫喚がこだましていた。
その光景を見て、サムは何が起きたのかを思い出した。
そうだ!?
私はいきなり落ちてきた沢山の肉塊もどきの一つに巻き込まれた時に、咄嗟にアンを庇ってその時に頭に瓦礫がぶつかってしまい気を失ったんだった。
ふと、目の前を見るとなんだろうか?
光っている物が落ちている。これは何だ?
先ほどサムの近くに落ちた肉塊もどきから飛び出てきたのを気を失う前に見たクリスタルがあった。
手に収まるくらいの大きさの不気味に光る赤いクリスタルだった。
正体の分からない不気味なものだったが、サムは黙ってこれを拾って眺めた。
何故かは分からなかったが、これが自分の運命を大きく変える何かなのは予感で分かった。
どうやらアンはサムの下敷きになっていたらしい。
サムの身体のしたから声が聞こえた。
「サム!?大丈夫?」
「あ…、あぁ。大丈夫だ。」
アンを下敷きしていたことに気付いたサムは急いで胸のポケットにそのクリスタルに入れてからすぐに立ち上がり、アンに手を差し伸べた。
「アンこそケガは無いのか?」
アンは素早く立ち上がり周りを見渡す。
「えぇ。サムが庇ってくれたお陰で…。」
アンもこの光景を理解したらしく、冷静そうに口を開いた。
「これは…酷いわ。すぐに教会に行きましょう。」
その声からは弱々しさが微塵も見つからなかった。
理不尽などに負けないという強い意志が含まれているように見えた。
アンとサムは、絶望に包まれている人々を今すぐに助けたいのを堪えて教会へ足を進めた。
それが一番効率が良いのである。
個人が動いて助けるよりも、集団で助けたほうが良い。
そのために、教会で救助部隊を設ける必要がある。
それにはこの混乱のなかまともに機能しそうな組織が必要だ。
幸い、教会は遠目だが被害は少なさそうに見える。
一番多くの人々を助けるのはこの手段が一番なのだ。
だから、二人は絶望に明け暮れて、救いの手を求めている人びとの目から背けて真っ直ぐ前を向くしか無かった…。
アンセムは、そんな二人の後ろを走って追いかけていた。
所々、瓦礫にぶつかるが、全部身体の中を通り過ぎて後ろに消えていく。
最初は驚いていたが、何回か同じ事を繰り返して行くうちに慣れていった。
瓦礫を避ける必要がないはずだが、二人になかなか追いつけなかった。
おかしい。
俺は瓦礫を避けないで進んでいるんだが。
瓦礫を避けながら進んでいるはずの二人のスピードは、一向に落ちる気配はなかった。
流石、魔王との戦闘を経験した者たちだ。
混乱する人々をなんとか落ち着かせようする衛兵の真横を通るが、気配を消した二人に対して気付く様子はない。
この非常事態に「誰が通ったか」など、気にする余裕もないので、衛兵が気づいたかどうか、関係ないがそれでも気配が全く感じられなかった。
あっという間に衛兵の横を通り過ぎて、見えなくなった。
遠くで人々の悲鳴が聞こえた。
いったい、ここで何が起こっているんだ?
そんなことを思っていると、一瞬だけ、一人の男の声が怒鳴っているのに気が付いた。
当事者ではなかったから…冷静にいられたからか、
その声は周りのざわめき声や怒鳴り声、悲しみに明け暮れる誰かの泣き声に掻き消され駆けていて微かに響いていた。
この声はこの混乱では聞き取ることは困難だろう。
2人もその声に気づいている様子はない。
しかし、戦場で鍛えられたこの耳は聞き逃さなかった。
「あっちは化け物が!そっちに行くなっ!!」
その何処からか、響く男の声は混乱している人々には雨が降っているなかのたった一つの雨粒の落ちる音のようなものだった。
アンセムは何処かで騒いでいる男の言葉をもっと聞きたかったが、
少し気を抜けば二人を見失ってしまいそうで、そんな余裕もなく、仕方なく二人についていくことだけに集中した。
少しして、二人は熱く燃え上がっている瓦礫をかき分けてなんとか教会の目の前の広場まで近づくことが出来た。
広場の入り口付近には聖騎士や、シスター達がケガを負っている人や避難してきた人々を招き入れている。
よく見ると教会は無傷のままだ。
何故ならば、教会には結界を張っていたからだ。
僅かに黄色の半透明の光が教会全体を覆っている。
二人が広場を駈け抜ける途中、教会の上に十数メートル肉塊もどきが落ちてきた。
教会の広場の前でたむろしていた人々の悲鳴が響き渡るが、その悲鳴に反して教会は無傷だった。
肉塊もどきは教会の手前で見えない壁が光った瞬間、ぶつかるように砕けたからだ。
しかし、一つ問題がある。
その砕け散った肉塊もどきが教会付近の人々に降り注ぐことだ。
実際、そのうちの一つが広場に跳ね返ってきて、まだ成長期も来ていなそうな小さな子供と、その子供を連れていた母親の方向に飛んでいった。
今すぐ助けに行きたい。しかし、今の身体ではこの空間に置いて干渉できないことが残酷なことに感じてしまう。
無力感が自分の胸を通り過ぎた。
サムは、降ってくる肉塊もどきにいち早く気付いていたらしい。
地面を強く蹴って、砕け散った肉塊もどきを俺にも見えない速度で切り刻み粉々にした。
彼の剣の光はこの絶望の中の唯一の光のように見える。
「光よ、闇より出でし邪の者を消し去れ…【浄化]」
アンが間髪入れずにその切り刻まれた肉塊もどきを聖魔法で浄化すると、
またたく間に肉塊もどきの肉片は灰のようにバラバラになって消えた。
アンの耳では、さっきの聖魔法に反応したのか、どこかで見たことあるピアスが残光していた。
「サムっ!!確定よ。邪悪な存在よ。」
アンが最初に見せた、か細い声とは裏腹に大声でサムに語りかける。
「見れば分かるさ。オイ、あんた。早く子供を背負って教会に行くんだ!!」
命が消えかけていたことからの動揺からなのか、無我夢中で感謝し続けている母親に怒鳴りかける。
母親はサムの怒鳴り声に我に返り、泣き喚いている子供を抱き上げて一直線に教会に駆け込んだ。
サムとアンもすぐさま親子の後を追って、教会に駆け込んだ。
ドンと、大きな音を立ててサムがドアを開けると、 そこには、避難してきた市民たちとけが人の治療をしている修道女、また、聖騎士団員達が入り乱れている様子だった。
「妻が崩壊した家の中に取り残されているんだ。早く助けに来てくれ!!」
「私の子が息をしてないの!誰か!!」
「早く包帯を!!」
「目が見えないよ?どこに言ったの?ママ?」
「大丈夫。大丈夫だから。アナタ…!!」
「治療急げ!」
酷い光景が広がっている広い教会中に、人混みからサムの声をかけてきたものがいた。
「サリム隊長、ガラム団長が会議室でお呼びです!!」
サムの部下らしき聖騎士が手で招いていた。
「しかし…、会議室には聖騎士以外は立ち入りが禁じられている。こんな状況で、別行動は…」
また嫌な予感がするらしく、何かを言おうとしていたサムだったのを気づいていたアンだったが、あえてアンはサムの言葉を遮った。
「サム…、私は大丈夫よ。」
と、心配そうに見ているパートナーを励ますように穏やかな笑みを浮かべている。
そんな表情をしているが、手は震えていた。
「私は怪我人の治療をする。貴方は貴方の勤めを果たして来て。」
と言って、後は黙ってサムの背中を押した。
背中を押されたサムは後ろから来る人混みに飲まれて
いった。
新たに教会へ避難してきた人びとの大きな流れに捕まってしまい、逆えず部下の目の前まで流されてしまった。
「早く行きましょう。隊長。」
「……分かった。」
部下に連れられ会議室に入ろうとする前に、サムは一瞬振り返った。
アンが真剣な表情で、全身やけどを負っている男を治療している光景を目に焼き付けていているようだった…。
また場面が変わった。
周りを見渡すと、肉塊で、出来たヒトモドキの大群にサムとアンが囲まれてしまっている場面に変わる。
周りを見ると、立派だった教会は燃え広がり、所々が崩れている。
周りを見ると、シスターたちが燃える木製の柱の下敷きになって死んでいたり、サムと仲の良さそうだった神父の死体を群がっているヒトモドキ達が食い散らかしているのが見えた。
あんなにいた屈強そうな聖騎士達は、ヒトモドキの後ろに無残な死体となって倒れていた。
原形が残っている死体は立ち上がってヒトモドキに変わってしまうらしい。
よく見ると、さっきサム達に助けられていた親子が、ヒトモドキの群れの中で酷い唸り声を上げながらサムとアンを獲物を見るかのように不気味な目で、ジイっと見ていた。
そんな絶望的な光景だったが、二人の目はまだ光が残っていた。
僅かにだが…。
特にサムの表情は暗くかすみきっていた。
よく見ると、真っ白だった聖剣が赤色の液体にびっしりと塗りたくられている。
想像もしたくないが、その手に持っている聖剣で、仲間だった者達を切らなければいけない場面が多くあった筈だ。
それには友だった者や、ひとしかった者を切らなければいけないという残酷さに大きな苦痛、悲しみ、誰にも向けられないだろう暗い怒りが、こみ上げては喉の手前で押し戻しているのだろう。
目以外の顔が固まっていた。
「もう、ここは諦めましょう!?もう私たち以外誰も残ってないわ!!それに教会が今にも崩壊しそう。早くここを出ましょう!?」
対して、アンはまだ余裕があっる様子だ。
剣で直接斬りつけていたサムとは違い魔法を駆使していているため、直接仲間だった何かが手にかけたというイメージよりも、浄化によって救えたというイメージが強かったのだろう。
だからアンはサムよりは精神が安定しているようだ。
しかし、アンもかなり辛そうな顔をしている。
「サム?」
おかしい、サムから返しが返ってこない。
突撃してきた数体のヒトモドキの浄化魔法で灰にしながらサムの顔を確認してみると正気を失いそうになっているのに気が付いた。
アンと目が合い、彼女のひとみを見たサムの青白くなっていた顔色が少しだけいつもどおりの健康そうな顔色に戻った。
「分かった。しかし、ここからどこに行けば良いんだ?」
そう言いながら、サムは襲ってきた数十体のヒトモドキを見えない剣撃で木っ端微塵にした。
「私達の家の近くよ!!あそこならこの街から少し離れてる。それに何かあったときは子供達にあそこに避難するようにと言ってたの。幸い孤児院は街の隅にあった筈だし…きっとあの賢い子達ならいる筈よ。」
「分かった!」
「聖なる雨よ降り注げ」
白く輝く光の雨がヒトモドキの大群を溶かしていく。
僅かにあいた隙に二人は身体強化魔法を自身にかけて、教会を脱出した。
二人が教会を脱出したのと同時に、燃えていた教会が崩れ落ちた。
教会を出た二人は一目散に走り出す。
町は火にに包まれていて、あんなに幸せそうに大通りを歩いていた人々が死体かヒトモドキに変わっていた。
二人は必死に剣や魔法で大群をくぐり抜けた。
大群をやっとのことで振り切ることが出来た二人は、一目散に街の外れの丘にある小さな教会に息を切らせながら無我夢中で走った。
どうやら、小さな教会には何も異変はなかったようだ。
子供たちの名前を呼びながら大きな音を立てて教会のドアを開けた。
「ロン、カイル、レアっ!!?いないのか?」
教会の中は真っ暗で誰かがいる様子がない。
「あの子たちは…いないの!?」
まさか…!?
死んだのか?
「そんな………。」
「…サリム兄ちゃんと…とアン姉ちゃん?」
その時、一人の女の子の声がした。何処か懐かしいが記憶の中はの声とは少しだけ声が低い。
「レアなのか?」
「レアなかし…ら?」
「皆!!二人が帰ってきたよ!?」
最初に声を聞かせていた女の子の声が呼びかけたのと同時に、ろうそくに火が灯された。
どうやら全員が格好はお粗末だったが、頭や胸に鍋などの調理具を鎧代わりに着ていることが分かった。
「嘘、あんなに街が焼けていたのに?」
一番背が高いロンが、数年前の記憶とは違い、声代わりしたであろう低い声で驚き声を発する。
「無事だったんだ!?」
一番年下のカイルが嬉しそうな声を上げる。
あんなに小さかった子供たちの成長にさっきまでの悲劇を忘れて、二人の大人と三人の子供は抱きしめあった。
次回は来週の日曜日の0:00です。
次回もお楽しみに!!




