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英雄の送人  作者: SOGEKIKUN
第二章「英雄の旅立ち」
49/77

㉜「墓守の残魂騎士②+③」

2本立てです。楽しんで行ってくださいね〜


 アンデッドの割には余り邪悪な雰囲気を感じない。

むしろ聖剣?のせいなのか聖騎士の雰囲気を漂わせていた。


再びバードの刀身が揺れだした。


「墓石に原因の正体がある!」


「墓?」


「うん…あそこ!!」


墓石をよく見ると、月の光に反射して微かに輝いている赤の宝珠が墓石の真ん中に埋まっていた。


アレか。


俺が墓石の方に意識を向けると、下段の構えを解いて、剣を卸した。


動く様子の無かった黒騎士が鎧を響かせながらゆっくりと、こちらに迫ってきた。


月明りに負けない程の赤く光る目が俺を真っ直ぐと捉えて離さない。


急に変わった空気の重い威圧感に冷や汗が額をこぼれ落ちる。


「ヤバいな…。こりゃあ。」




一方その頃、その頃ウィルソン兄とNo.4は、一進一退の攻防を繰り広げていた。


No.4が黒剣を持っていない左手の手のひらをウィルソン兄に向けた。


そして、いくつもの真っ黒の骨を大量に生み出した。


その骨は空中で留まり、人の半分はあるだろういくつもの鋭利な物体へと変形していく。


(こりゃあ、当たったらただじゃあ済まねえ匂いだな。)


「我が身体よ高めよ 【身体強化(フィジカルブースト)】 我を護り給え 【魔法防御(プロテクト)】」


ウィルソン兄がバフをかけ終わると同時にNo.4の放った鋭利な骨の塊が迫ってくる。


ウィルソン兄は素早い身のこなしで軽快に避けながらタガーをNo.4の眉間目掛けて投げつける。


No.4は真っ直ぐ飛んできたダガーを右手の黒剣で薙ぎ払う。


そして直ぐにウィルソン兄の方向に身を向けたが、ウィルソン兄の姿をが見当たらない。


消えた…いったいどこに?


後ろか!?


いきなり後ろから気配を察知したNo.4は振り向きざまに黒剣を振ろうとするがどうやら手遅れのようだ。


「遅い!!」


ウィルソン兄は横からきた黒剣をタガーで受け流し、回し蹴りをみぞに食らわせて吹っ飛ばした。


No.4はふっ飛ばされて近くの森林に激突する。


No.4がぶつかった数本の木がミシミシと音を立てて倒れる。


「こんな弱さじゃあ、大した本気も出せねえな。」


頭の包帯をさすりながらだるそうに言う。


その声から本当に拍子抜けしているかような声だ。


「それはどうですかね?」


「ほう?お前生きてたのか?」


結構本気でやったんだが…。

見た目の割には頑丈らしいな。


ぬるりと立ち上がったNo.4は黒剣を鞘にしまいながら話し始める。


「貴方達は足止め役なのは知っています。貴方達の本当の狙いはあの結界の中にある「あるもの」の回収ですよね?」


「………。」


「どうやら図星らしいですね。」


「お前…何故それを知っている…。」


「そんなに噛みつかなくても大丈夫でしたよ。たまたまですよ。

 私の眷属が見つけてくれただけです。

 そう、それの名は、紅のクリスタル。遥か昔、この大陸を支配していた初代の魔王「ディアブロス」の心臓。

 かつての初代勇者に討ち滅ぼされるまで大陸を血に染めた張本人。

 その心臓が呪いの宝石となり、各地に厄災を振り撒いた。それは今も各地で勇者によって封印されている。

 

まるでおとぎ話ですよね。しかし、それは本当にあるようですよ?」





「グッ!」


(なんて馬鹿力だ。俺が押し負けている。)


 いきなり超スピードで切りかかってきた黒騎士だったが、俺はなんとか反応し、振りかざされた聖剣と打ち合いをしている。


お互いの武器がぶつかり合い、火花を散らしている。


「あんた。私を差し置いて誰かに斬りかかるなんて言い度胸じゃない。」


「ダメだ、行っちゃダメだ。リリア!?」


リリアは素早い身のこなしでサンソンの静止も止まらずに狂気的な笑顔で槍を突き出す。


「一番槍は私の家ではお家芸なのよ?止まれるわけがないじゃない!!」


そう言って槍を突き出してくる。


 しかし、黒騎士は俺に剣を振り落し力勝負に持ち越しているはずなのに不意をついたリリアの一突きを見もせずに左手で受け止める。


「なっ!?」


そして黒騎士は鋭い蹴りをリリアの腹にうずめた。


「ガハッ」


リリアは血反吐を吐いて膝から倒れ込んだ。


「リリア!?」


ウソだろ!?リリアが一発で?


 サンソンは目を疑った。リリアは王都でもかなり強い部類の筈だ。

そんな簡単にやられるはずがない。


しかし、現実はそうではないらしい。


 倒れたリリアを黒騎士は踏み潰そうと足を振り上げる。


「クソッ!?こいつの一太刀に精一杯でそっちのフォロー出来ない。」


女暗殺者がタガーを2本投げる。

そんな攻撃では、この鎧をぶち抜けない。

無意味だ。



俺の予想とは違い、女暗殺者の投げたタガーに黒騎士は反応した。


黒騎士は俺を蹴っ飛ばし、素早い動きで2本のタガーを剣で弾いた。


ふっとばされた俺は近くの岩に打ち付けられてしまう。


岩が崩れ落ちて、土煙が舞い上がる。


俺は気を失った。



再び投げられた弾返されたタガーは地面に突き刺さり、僅かな緑を増やしていった。


黒騎士はその地面に突き刺ささり草を生やしている2本のタガーを注視している。


黒騎士が反応した事で生まれた隙にサンソンが崩れ落ちたリリアをさらっと拾い、アンとリリアを荷物みたいに持っている。


「貴様ぁ〜、アンをそんなに風に持つな!!もっと丁寧に扱え!!」


「キミィ〜!?さてはポンコツだな?前を見て、前をっ!!」


 女暗殺者が黒騎士の方向を見ると、憤怒した様子の黒騎士が超スピードで迫りくるところだった。


 女暗殺者は怒った顔からいつも通りのクールな無表情に戻り、胸に隠していたタガーを両手に取り出す。


「遅い。」


女暗殺者は黒騎士が一振り一振りを避けながら、一撃を入れている。これなら持ちこたえられそうだね。


「これから二人を安全な場所に置いてくるから、それまで持ちこたえてくれ!!頼んだよ?」


「ああ、お安い御用だ。」


遠くで青年の足音が遠ざかっていくのが分かる。


フン、頼まれたのなら仕方あるまい。


全力でやるまでだ。


「ハッ!!!」


黒騎士の剣幕の僅かな隙を突いて、身体を回転させるようにして、同じ箇所にタガーを切りつける。


すると、黒騎士の鎧が、僅かに傷付いた。


あんな小さなタガーが何故こいつの鎧を傷付けるのかは分からない。


だが、すぐに理解が出来た。


 黒騎士の少しの隙を突いてよく周りを観察すると、地面に刺さったタガーの様子から、私の投げるタガーには聖気が宿っているようだ。


だから、危険を察知した黒騎士はあんな動作をしたのか。


フンッ、誰よりも神を呪った私が、聖魔力を纏えるなんてな。皮肉な話しだ。


だが、今は神に感謝しよう。


私に攻撃が当たらないことを理解したのか、黒騎士は黒いモヤを手からだす。


「な、何だ?沼?」


足元を見ると私が着地をした場所が黒色の底なし沼によって、足止めされていた。


いかん、動けん!


このままでは直撃してしまうぞ!!


私はあのオーガのような男程重くない。


そしてその男を容易に吹っ飛ばしたこいつの力をこんな小さな武器で防ぐことなど出来るわけがない。


まさに"詰んでいる"状況だった…。





瓦礫の中、気を失っているアンセムの耳元には懐かしい声が聞こえていた。


お兄ちゃん、お兄ちゃん!!


誰だ?


「お兄ちゃん。」


目を開けると、幼い頃のソフィアが俺を膝枕していた。


俺は眠気顔でゆっくりと顔を上げる。


「やっと、起きた。相変わらず世話の焼ける寝坊助のアンセム坊やだね。」


そう言って、俺以外には見せないニコニコの笑顔でこっちを見てくる。


その懐かしさだからなのか、ついいつも通り手を出してしまった。


「うるせえぇ!」


ゴンッ。


「ッタ〜〜〜!?」


あれ?俺の手も、幼い頃の大きさだぞ?


それによく昔登っていた家の屋根の上にいる。

まあ、今はどうでもいいか。


ただただ、懐かしい景色が嬉しかった。


「お兄ちゃん、相変わらず変わらなすぎぃ〜。」

「イタタタ。」


「そう言うお前だって、その生意気なところは変わらないじゃないか。」


「それもそうだね。アハハハ。」

「アハハハ。」


「「…………。」」


「………起きるのが遅すぎるよ…、お兄ちゃん……。」


体育座りをしているソフィアの足の間に涙が出ていた。


俺はソフィアの顔を真っ直ぐ見えなかった。


「…すまない。」


ただ、謝ることしかできなかった。


「………。」


「ずっと隣にいるよって、言ってくれたのに。」


ク……すまねえ。


「私、責任取ってくれなくて、腹いせに違う男の人と、結婚したんだからね?」


「ぇ…マジか!?、いったいどういう男だ?」


「優しい男の人だよ。」


「ゲェ、マジか。あのソフィアが?」


目に僅かに涙が残っていながら、プクと頬を膨らまして怒った顔に変わった。


 そのソフィアの顔は俺を何だか懐かしい気持ちにさせてくれた。


よくこんな顔で怒ってくれてたな。

幼い頃でも成人してからでも…。


「何か言いたそうだね〜?」


「………いや、何でももないさ。」ホントダゼ。


いや、あの気が強いあのソフィアが男を引っ掛けただと!?


「あ〜!またロクでもないこと考えてるのね?」


「グッ、何故バレた?」


「お兄ちゃん。私の前では筒抜けだからね。」


「ああ、知ってるさ。」


「なら、謝りなさいよ〜!!図々しいところが余計にムカつく〜〜!!」


そう言って、ソフィアは脇を俺の首に回して、ググっと首をしめてきた。


「ちょ、ソフィア。タンマ!」


「ほら、 謝 り な さ い。」


「スンマセン。」


「フフン、許してあげましょう。」


そう言ってソフィアは腕を離す。


何だか、こんなやりとりも何回か合ったな。


「ゴホッゴホッ。そんなに本気でやんなくてもいいだろうが!?」


「フンッ、皆を寂しがらせた罰。」


そう言って、ソフィアはわざとらしくそっぽを向く。


「グッ!それを言われたら何も言い返せないだろう!?辞めてくれ!!お兄ちゃんのライフはもう0だよ?」


「プッ」


「「アハハハ。」」


「アハハハ。お兄ちゃんズルいよ。人が怒ってる時にそんなこと言うの。本当に反省してる?」


「本当だ。女神セルビアに誓って。」


「ム〜……。まあ、もう昔のことたから許して上げる。けど、条件があるの。」


「な、何だ?」


「さっさと眠りから覚めて、今の仲間を助けてきなさい。」


そう言って、幼い姿のソフィアから急に大人の姿に変わったソフィアは俺の背中を押しだした。


 ま、待ってくれ。まだ言いたいことがいっぱいあるんだ。ソフィア!!行かないでくれ!


待ってくれ。


暗闇に包まれながら俺は叫んだ。


「待ってくれ!」


俺は叫びながら目を覚ます。

痛ぇ…、俺は気を失っていたようだ。頭から血が出でいる。



(あれ、何故俺は涙を流しているんだっけ?)

その理由は考えても思い出せなかった。


そうだ!俺はあの黒騎士にふっ飛ばされたんだった。

あいつらは?


急いで周りを見ると女暗殺者が黒騎士に切られそうになっているのが見えて、急に全身が熱くなった。


気づいたら前に飛び出していた。




ここで死ぬのか?


まあ、それでも良いか。クソッタレばかりの人生だったが…。


そう諦めていた女暗殺者は目を閉じた。


―ガキン―


「させるかぁぁぁ!!!」


おかしい。


何故死なない?


それとも、もう死んでいるのか?


取り敢えず目を見開いてみることにした。


目を開けると、アンセムと言ったかその男が頭の血を流しながら、

 黒騎士の剣を受け止めている光景がこの目に映っていた。


「グギギギギ…。」


「貴様。何故私を捨て駒にしてこいつの背を狙わない?お前なら出来ただろう!?」


「そんなこと、俺が出来ると思うかぁ!!」


俺は、二度と同じことをさせないと誓ったんだ!!


「アオのようなことは絶対にさせなねぇ!」


アオとは誰のことを指しているのか分からなかったが、大切なものだったのだろう。


「このバカモノ…。」


呆れようとしたが、何故か笑顔が出てきた。


「うぉぉぉぉぉぉ!!」




 さっきまで押されてばっかりだった男が、今押し返している。


「この男。こんな状況で成長しているのか?」


女暗殺者の驚愕の声が聞こえる。


男は赤く熱を帯びて、まるで燃えているかのようだった。


しかし、まだまだ黒騎士の方が力は大きいようだ。


黒騎士は更に力を入れている。


このままでは押し返されてしまう。


「アンセム!!」


 その時、アンとリリアを安全な場所に置いてきたサンソンが戻ってきたらしく、黒騎士の背中に矢を当てた。


矢は弾かれたが、一瞬黒騎士の意識が真後ろに向いた。


それが僅かに隙をつくらせた。



アオのことだけじゃねぇ!彼奴等との別れだって、同じだ!!


もっと、俺に力があれば…。


「させねぇ!!」


カキーン。


アンセムの怒号と共にバスターソードが黒騎士の神聖な剣を弾く。


黒騎士は少しよろめいて後退りをした。


アンセムはその瞬間を見逃さずに詰め寄って、バスターソードを振りかざす。


「ウォォォォ!!!」

「行けっ!!相棒!!」

バードの声が聞こえる。


アンセムは黒騎士の鎧を切り抜いた。






次回は来週の土曜日の0:00です。

お楽しみに〜〜!!

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