㉕「アンデッドの大群」
「副団長、アンデッドの大群が突然現れました!」
入口から団員が焦った顔で駆け込んてきた。
その報告がきっかけで、構えていた三者は、持っていたそれぞれの武器を降ろしてその団員の方向を振り向いた。
「えっと…、すみません?お取り込み中でしたか。」
二人の上官とガタイのいい冒険者と何故かその中にいる町娘による、
しばしの沈黙に若干気まずそうにしながら、気を付けをしている茶髪の一つ縛りの若い女性騎士団員に対して気を使ったのか、副団長が口を開いた。
「気にするな。状況報告を続けよ。」
状況報告の許しを受けた団員はホッとしたような顔をこぼして敬礼をしながら話しだした。
「ハッ、グレーギルドの拠点を襲撃していた騎士団員60名弱は、グレーギルドのメンバーを制圧、
確保を着々と進めていましたが、近隣の霧の森から急遽観測されてきた数を大きく上回るアンデッドの大群が現れ、騎士団のリーナ隊長率いる後方部隊の背中を襲いました。
更に部隊の混乱に応じて、確保されていたグレーギルドのメンバーが縄を解いて非戦闘員を襲い始めました。
現在はサリー隊長を中心に第3大隊が駆けつけ、反乱中のメンバーを制圧し、非戦闘員を保護中です。
しかし状況は依然と悪く、グレーギルドと消息不明の大量のアンデッドに挟撃されている状態が続き、
このままでは壊滅の恐れが有ります。
怪我人を治療中のリーナ隊長が副団長に至急支援要請をしてきました。」
副団長は剣を鞘に納めて、両方に立っている俺たちを交互に一度見てから口を開いた。
「どうやら仲間内で争っている暇は無いようだ。さっさと助けだすぞ。ブルーメルが対グレーギルド討伐の臨時指揮官とする。この部屋にいるものは騎士団以外のものも含め、私の直接指揮化に入ってもらう…何をボサッとしている?行動開始!!」
「「「ハッ。」」」
フォール砦の周辺では、いくら切っても一向に減りそえもないアンデッドの大群に騎士団員達は苦戦を強いられていた。
「ハァハァ。何なんだ、コイツらは!?道中調査してもそんなに数はいなかった筈だぞ?どういうわけだ?」
第三部隊の副隊長が汗を垂らしながら伸し掛かってきた死人を盾で防ぎながら、悪態をつく。
力自慢が多い第三部隊の中で一際筋肉が盛り上がっている男の悪態には、どこか恐ろしい雰囲気があった。
「グエン副隊長!また、一人新たな戦闘不能者が!」
「こっちは二人です!」
「衛生兵、回収こっちだ!」
「クソッ、これで何人目だ?もう半数しか残っていないぞ?このままでは前線が崩壊してしまう。第三部隊隊長の方面は何とか持っているらしいが、こっちは限界だ。援軍を待たずに全滅するぞ。」
「グエン副隊長!数十体のアンデッドが前線を抜けて、後方支援組の方向に進んで行きます!!間に合いません!!」
い、いかん。このままでは後方支援組が…。
「私が始末しに行く!それまで気合いで耐えろ、お前たち。上官命令だ!!」
「「はい!」」
グエン副隊長は、重いプライムプレートをものともしない様子で勢いよく前線を抜けたアンデッドの集団を追いかけた。
フォール砦の門の前に拠点を気づいた紅い鳥の騎士団は現在、正面を後方支援組を護衛する15名をサリー隊長が率いて当たっていた。
サリー隊長の直轄第三部隊20名は左右10名ずつ二人の副隊長に任せて側面をつかれないように配置されていた。
短期間であるならば効果的な防衛の位置取りだが、一つだけ欠点があった。
そうそれは戦線が3つに分かれて、数人の補給部隊だけではどうしても補給が間に合わないのだ。
特にこういう止めどなく大量の敵が相手のときが相手なら尚更である。
クソッ。このままではヤバい!!拠点まですぐそこだ。今拠点にいるのは非戦闘員と怪我人だけだ。
追いつけない…。
いや、ここで気合を出さなくてどうする!?
いつも無駄飯喰らい扱いされてきた我々第三部隊の本領だろう?
ここで活躍出来なかったら部下に顔向けできん。
「うぉぉぉぉ!!!!!!」
私は我が隊自慢の根性で追いつこうとしていたが、次の瞬間、信じられない光景が目に入ってきた。
非戦闘員達を襲おうとしたアンデッドの集団は一人のバスターソードを背負った男の一振りに一瞬で真っ二つにされてしまっていた。
腐敗していた腐肉や骨が転げ落ちて音を立てる。
「は?」
どんな怪力を持っていたらそんな芸当が出来るというのだ!?
少なくとも2・30体は居たはずだが?
余りの男の怪力に驚いて頭が追いつかん。
「おい、あんた。大丈夫か?」
男は持っていたバスターソード背中に背負って、声をかけていた。
「ああ…、大丈夫…だ。ハァハァ。くそ、これは夢か?」
私の変な応答に男は訝しむような顔をして、近づいて目を覗きながら質問をしてきた。
「あんた…本当に大丈夫なのか……。」
「あ、ああ。大丈夫だ。少々動揺していてな…。ところで、貴校が援軍なのか?」
「あぁ。俺が援軍のうちの一人だ。」
「一人?もっといるのか?」
その後ろの打ち破られた門の中から遅れて複数の人影が姿を現した。
「なっ、副団長!?…と、娘?」
「この子は、攫われた少女です。彼が保護しました。」
一つ縛りの女性の騎士団員が答える。
「なっなるほど…。」
「今談笑をしている暇は無い。戦線が広がりすぎだ。前部隊をすぐに下げさせろ。リーナ隊長。お前の例のポーションの使用を許可する。」
「ア、はい!!」
向こうで怪我人の治療をしているリーナが返事をしたあと、リーナが今回引き連れている十人程の部下に次々と指示を出していく。
やはり、この人の指揮官としての才能はあの絶対的カリスマの騎士団長に並ぶと言われるほどの天才だ。
彼女が戦線に復帰してから、間もないのに一瞬で戦場の状況を把握して、私たちに指示を回している。
このお方がいれば負けないという自信が自然と湧き出てくると、副隊長は確信した。
「そこの…確かアンセムといったな?お前とグエン副隊長は第三部隊と合流した後。遊撃隊となってあの動く死体共を粉切れにしろ!!」
「了解。」「ハッ!」
去っていく二人を尻目に副団長は報告をしに来た女性の騎士団員の方を向く。
「貴官は確か、訓練では俊敏だったようだな?」
「下っ端の私等の特徴を知っているのですか!?」
「副騎士団長として当たり前の事だ。貴官を伝言役とする。まずは、全部隊に前線を下げさせるようにサリー隊長に伝えろ。」
「わ、私は?」
エールが声のする方を見ると、最後に残っていた町娘が居づらそうに不安そうな顔をしていた。
「怪我人の手当てをお願いする。どうやら今の騎士団にはそなたを"タダ"で保護するほどの余力はないのでな。」
「わ、分かり…」
グ〜〜〜。
ヒューズのお腹が再び音を上げた。
二人の間に一瞬沈黙が、流れる。
「ハッハッハッ。小娘。君の将来が楽しみだ!!済まなかった。まず飯を食べろ。」
思わず赤面してしまった。
もう、私の馬鹿!!
次回は日曜日の0:00です。
お楽しみに!!




