㉒「町娘」
「お、オーガ!?ヒ、ヒィ〜。殺さないでぇ〜!!」
「女!?、何で女がここにいるんだ?」
震えていた女がやけになったのか急に泣き叫び始めた。
「もう、何なのよ〜!?ヒグッ。いつも通り真面目にお父さんの店の手伝いしていたら急に襲われて攫われるし、ウグッ。攫った人達は私に意地悪して無理矢理働かせるし…。今度はオーガに襲われるの?私が何をしたってのよ〜!?」
ジルが言っていた誘拐事件の被害者か!?
歳はだいたい14、15に見える。
リリアと同じ年頃の成人前の娘だろうか?
可愛らしい顔が涙でめちゃくちゃになっている。
淑女を泣かせるのは男の恥とかなんだったけな?
と、とにかく落ち着かせないとな…。
「お、落ち着けって!!」
「これで落ち着けるもんですか!?今度は何?オーガに同情した目で見られてる?ヒィッ!近づいかないで!!すみません、本当はお父さんの仕事の手伝い何度かサボってました〜!もう二度としませんから食べないで〜!」
今度は頭を抑えて縮こまってしまった。
「………………。」
バードが同情の目を寄せているような気がする。
「アンセム…。君には同情するよ……。」
「……………………。」
「ウエェ゙ェ゙ェ゙ン。怖かったよ〜!助けてくれて、アリガトヴ。傭兵さ〜ん。」
バードが魔法を出した水で血でベチャベチャになった身体を洗って怯える町娘を俺は人間だと全身全霊をかけて説得して、なんとか信じて貰って今に至る。
と言うか、せっかくバードに乾かして貰った服が涙と鼻水で濡れちまったじゃねぇか!?
「グスッ、ビュ〜。」
おいそこは俺の胸だ。ハンカチじゃないぞ?
少しして、少女の震えは止まったようだ。
「……落ち着いたか?」
「…うん。」
「もう、ここは戦場だ。さっきの騎士団の表明通り、多くの騎士団が賊討伐に駆り出されてる。次期にここも戦場になるだろう。そんな場にか弱い町娘が巻き込まれたらひとたまりもないだろう?」
「コク……。」
「俺が安全な場所まで連れてってやるからこれから俺の言う事をちゃんと聞くんだぞ?」
「分かったわ。」
「そういえば、名前は?」
「……。ヒューズって言うの。ヒューで良いわ。」
「そうか、ヒュー。俺はアンセムって言うんだ。よろしくな…取り敢えずここを出ようか。」
「うん、その前に……。グウ~~~~。」
「ごめんなさい。怖くて喉に食べ物が通らなかったの。(カア〜〜〜////////)」
ヒューズは顔を真っ赤にしながら自分のお腹を擦っている。
ヒューは将来大物になるだろうな…。
その時、暗闇の中何者かが急に迫ってきた。
俺はバードで少女に向けられた剣を防ぐ。
「ヒッ…!?」
目の前で鋭利な刃が炸裂したヒューズは顔が恐怖で白くなっていた。
俺はそいつの剣を弾いて、ヒューズと謎の人物の間に入る。
すると、聞いたことがある声がした。
「薄汚い冒険者の割には、思いの外中々手強いようだな。」
その声は、ブルーメルの声だった。
リリア達は三人は女暗殺者の案内の元、僅かに太陽の光りで僅かに見えるようになった森の中を走っていた。
霧も少しばかり薄くなってきている。
「ゴホッゴホッ…。た…しか…、そっ…ち…だ。」
「分かった…。本当に大丈夫なのか?」
「わた…し…の……こと…は、ゴホッゴホッ。気…にす…るな……。ゴホッ。それ…よりも、ア…ンを。」
「もう喋らない方が良い。辛いだろ?」
「ゴホッゴホッ。」
明らかに容態が悪化している…。
さっきまでは顔色が優れないだけだが今は顔が真っ青になっており、血反吐を吐くようになった。
これは悪い傾向に進んでいる。
リリアが敵やアンデッドがいないか、辺りを警戒しながらチラチラと僕の背中に乗せられている女暗殺者を心配そうに見ている。
一瞬、女殺者が気を失っているのにリリアが気付いて、いきなりリリアが声を出す。
「ちょっと、意識を失っちゃだめよ。貴方そんなにヘタレなの?そんなんだからあんたの大切な者だけじゃなくて、自分自身の命も無くしそうになっているのよ。分かってる?」
リリアは揺さぶりながら一括する。
一見厳しすぎる言葉の用に聞こえるが彼女の言葉の所々に優しさが散りばめられてる。
元々彼女の性格は勝ち気な性格ではなかった。
むしろ気が弱すぎるくらいだ。
彼女は近くに知らないものが近寄っただけで、怖がって泣いてしまい、よく僕や兄上の後ろに隠れていた。
そんなリリアに僕達はこの妹を守りたいと思っていた。
しかし、母上が死んでから彼女の性格は一変した。
あんなに気弱だった妹が、急に元気な子どもに様変わりしたのだ。
そして、死んだ母上を悲しんでいた僕や兄上を元気な姿で鼓舞し始めた。
周りの者はは母上の死をきっかけに心を入れ替えたと納得している様子だったが、僕と兄上だけは後になって気付いた。
妹はただの強がりをしているんだってことを。
母が生前のとき、よくに気弱な性格を心配されていた。
きっと、死んだ母上に天で心配されたくなかったのだろう。
母が死んで、翌日には妹は変わったいた。
しかし、人はすぐに変わることはできない。
たまに夜中に妹の部屋からすすり泣きする音が聞こえてくる。
と、メイドから報告をうけたことがある。
それも僅かに聞こえる程度だ。
彼女は無理矢理自分を押し殺していたのだ。
それを僕と兄上は話し合って妹の覚悟を受け入れるために、すぐにグズグズするのを辞めた。
そして、妹の覚悟に触れないようにした。
あんなに気弱で僕達に守られていた妹が、本当は一番心が強かったなんてな。
小さく弱い頃の自分と彼女を重ねて、病床で辛そうに苦しむ母上に対して何もできなかった自分の無力差に、対して鼓舞したかったんだろう。
「もう君は無力じゃない」と……。
「絶対に生き残りなさい。死んだら私の命を狙ったこと絶対に許さないんだから。」
「は…は、それ…は困…るな。ゴホッゴホッ。」
「ほらあと少しよ!頑張って。」
もう少しで朝日が地平線から顔を出す頃だった…。
テスト期間なので今週は2話投稿になります。
次回は日曜日0:00です。
次回もお楽しみに!!




