⑳「侵入者③」
今週は2話投稿です。戦闘パート頑張るぞ!!
楽しんで行ってくださいね。
「分かったわ!お兄さん。けど、あまり時間は無いからね。」
金属音が鳴り響く。
リリアは直ぐ様戦いに加わって、槍を前に突き出した。
「お兄さん、伏せて!!」
リリアの声がした瞬間にサンソンは頭を下げる。
すると、リリアの放った突きが男を襲う。
捕らえた!!
男は間一髪でそれを避けるが、頬に切り傷ができて血がにじみ出ていた。
「クッ!?」
男は侵入者二人から一旦距離を置いて、頬に垂れている血を指でなぞる。
「……よくも私の肌を傷つけてくれましたね。」
男は明らかにイライラしていた。なんとか怒りを爆発させまいと必死だ。
「細っぽい感じが急に男らしくなったじゃないか。僕は良いと思うよ。」
「拔かせ!」
男は怒りを爆発させた。
再び、剣同士がぶつかり合って金属音がこだまする。
「貴方達を、死よりも恐ろしい末路にさせてあげましょう。」
「出来るかしら?」
薄暗い闇の中、激しい剣幕が繰り広げられていた。
フードを被った三人組は魔力で出来た霧が闊歩する中静かに歩いている。
真ん中で歩いていた夜の女帝が急に立ち止まって手を上げると左右にいた二人も歩みを止めた。
「ここで待機してなさい。」
二人は静かに頷いた。
夜の女帝は一人静かに止めていた足を前に動かし始めた。
霧で覆われた普段の森は不気味なほど静かだ。
しかし、おかしなことに今は風が吹いている。
常人ならば、この先に不吉な予感が待っているかのように感じてしまうだろうが、彼女達だけは違った。
そう、経験した修羅場の数が圧倒的に多いからだ。
少し歩くと、二人の部下の姿がこの森の霧で全く見えなくなったところで夜の女帝は何か口に出さずに何かを唱える。
彼女は探知魔法を発動させた。
私の部下二人の他に、少し遠くに二人の気配。
片方は強烈な気配、もう片方は小さな気配。
当たりね。
夜の魔女はそう確信すると、今度は違う魔法を発動させた。
すると、僅かに彼女の周りが光って姿を消した。
転移魔法。この世に存在していない筈の魔法。
それは魔法を極めた魔法使いですらもこの境地に辿りくことは不可能に近い魔法。
そもそも伝説に記されているだけで存在すらも怪しい魔法なのだ。
だか、夜の女帝は使った。彼女は魔法の真髄までにたどり着いた超越者に近い存在だった。
夜の女帝が転移した先は、焚き火で照らされた小屋の目の前だった。
夜の女帝がフードの奥から周りを見渡すと眠っている少女と真っ黒な装束を着た男が焚き火を挟むように座っていた。
男からは僅かに強者の雰囲気を感じる。
「あなたがグレーギルドのギルドマスターかしら?」
静かな夜を突き刺すような溌剌な声で問う。
「以下にも、私がギルドマスターだ。ようこそ夜の魔女よ。どうぞこちらにおかけく願いたい。」
「あら?意外と紳士なのね。それじゃあ遠慮なく。」
そう言ってアンの隣に夜の魔女は音もなく静かにのんびりと座った。
一見穏やかな雰囲気に包まれているように見えるが、
僅かに焚き火の周りの大気が揺れていた。
「随分私の縄張りで遊んでくれちゃって、どういうつもりなのかしら?私の縄張りでは争いなしの平和解決っていうルールだってこと知らないとは言わせないわよ。お宅の組織は国相手に喧嘩売ってるような組織だもの。」
穏やかそうに喋る魔女笑顔の奥底から怒りが見え隠れしていた。
さっきまで鳴いていた虫が急に泣き止み、焚き火の火が大きく揺れて音が激しくなる。
パチ、パチ…。
フードの影で男の表情は全くみえない。
しばらくして、男は淡々と喋りだした。
「こちらも少々暴れすぎたようだな。貴方とやり合うとこちらもただでは済まされない。しかし、こちらも譲れない物もある。この少女を奪えるものならば奪ってみると良い。」
一気に二人の間にある空気が重くなった。
しかし、垢抜けた声で夜の魔女は言う。
「フフッ。今回はその必要は無いらしいわね。」
夜の魔女の含み笑いでフードの男は何かを察したようだ。憎々しげに口を開く。
「邪魔が入ったか!!」
急に身を翻した男に向かって閃光が走る。
何かが爆発したかのような爆音と共に男がいた場所が土煙が舞った。
土煙が風に吹かれて消えた場所には赤いフレームの鎧を着た女の騎士が剣を抜いて立っていた。
「逃げられたか…。」
エールは剣を鞘に収めるとこちらに歩み寄って静かに待っていた夜の魔女に話しかけた。
「貴校がグレーギルドの拠点を密告したのか。夜の魔女。」
真っ直ぐした目でハキハキとした声で喋るエールとゆったりとしている夜の魔女は相反しているかのように見える。
凄まじい爆発がすぐ近くにあった筈なのに夜の魔女は全く汚れていない。まるでそんなことなかったとでも言うような態度で眠っているアンの眉をなぞりながらさらっと答えた。
「ええ、そうね。」
「貴校がエディソンの裏を支配しているものだということは分かっている。お嬢様をこちらに渡して自首するがよい。」
「残念だけど。返すのは明日にしてもらってもいいかしら?」
彼女の言葉とともにエールは猛スピードで剣を抜いて、夜の魔女の首の目の前で止める。
「何が目的だ?」
剣を突きつけられているのに夜の魔女は様子を変えないまま、エールの目を暗いフード越しに覗き込む。
「私は平和主義者よ。貴方達騎士団と理由もなしに争おうとはしないわ。これが答えって事でいいかしら?」
当たり障りのない答えだった。
静寂が辺りに走る。
少し考えるようにしてからエールは剣を鞘に戻した。
「貴様がこちら側である限り、こちらは関与しない。しかし、少しでも妙な事をしたらすぐにお前の元に駆けつけてその首を切り落とす。」
「肝に銘じておくわ。」
太陽のような笑顔で応じた夜の魔女の返事に対して氷のような冷たい顔を変えずに女の騎士は立ち去っていった。
その頃、リリアとサンソンは男との勝負を続けていたのだった。
シリアス展開って意外と難しいんですね。
でもやりがいはあります。
これからも続けて行くので是非楽しんで行ってくださいね。




