⑲「侵入者②」
今回は途中で切らせていただきます。
楽しんでくださいね!!
「グ、ゲホッ、ゲホッ。」
女暗殺者は血反吐を吐いて、膝をついていた。
すでに限界が近づいているが、目の前の男に対して隙を見せる暇もない。
「ハァハァ、ハァハァ。」
間髪入れずに飛んできた剣撃を避けて一旦距離を取り、回復ポーションを口に含む。
彼女の周りを弱い光が包み、男から受けていた傷がみるみる治っていった。
「ハァハァ…。」
「もう終わりですか?まだまだ遊び足りませんが。」
土煙の中の人影から声が聞こえたのと同時に、いくつもの黒い斬撃が飛んでくる。
女暗殺者はなんとか避けようと重い身体を動かして回避行動をとった。
もう残りの回復ポーションは少量…、足止めはコレ以上はキツい。今ここで撤退すれば、あの夜の魔女のアンを救出する作戦が途切れてしまう…
彼女が一直線にフォール砦に向かって暗い路地裏を進んでいた時、あの噂の夜の女帝と名乗る女に背後から声をかけられた。
「貴方、あのアンって子について知ってるわよね。」
かなり警戒しながら移動していたが、まるで気配が感じられなかった。
それに今、気がついたが、他に左右それぞれに強い気配が二つ。恐らくあのウィルソン兄妹だろう。
「あの夜の魔女が私に何のようだ?」
背後を簡単に取られた私は顔だけを振り向かせて半身の姿勢のままギロリと睨みつける。
「もう、そんなに睨まないで。貴方のことはあのマスターから秘密裏に聞いてるから事情は知っているの。」
私の背後に立っている女帝は、笑顔を振りまいた。
深くフードを被っていて口元しか分からないが、きっとその笑顔は魅力的で危ない笑顔なのだろう。
マスターが私の事を話したのか?
ならば信頼は出来るようだ。
だが、警戒は解かない。
「何故私の邪魔をするのだ!」
私はナイフを素早く抜いて彼女の喉に向かってナイフを向けようと振り向いた瞬間、凄まじい2つの殺気と共に暗闇に潜んでいた気配の正体が私の左右から私の喉元に刃物を当てていた。
「ほら、すぐ暴れないの。3人とも武器を降ろして。」
二つの気配はすぐに元の位置に戻った。
「貴方も降ろしなさい。また騎士団に捕まりたくないでしょ?」
「何のようだ?」
さっきまで格のある雰囲気とは打って変わって、頬を赤く染めてもじもじと両手の人差し指の先端をつつき合いながら言った。
「ええっと、ちょっと手伝って欲しくて…。」
「…………。」
夜の魔女が作戦を成功させれば、アンは取り戻すことが出来る。
それまではこの化け物のような奴を足止めしなければいけない。
「う〜ん。中々崩せません。流石元グランオール帝国の間者ですね。このギルドのNo.4の私と長く渡り合うことが出来るとは…。少々見くびっていました。あの三人組随分面倒くさい足止めを用意していたとは。今度は本気で行きますよ?」
そう言って、緑色の髪をした男はどす黒い色をした魔力を片手剣に集中させる。
「この剣は素晴らしいでしょう?ギルドマスターから授かった代物なんですよ。これで斬られた者は苦しみながら死ぬんです。きっと、血に汚れた鼠の対峙にはうってつけでしょう。」
アン。どうかご無事で……。
その頃、リリアとサンソンは最後の数人を始末しようとしていたところだった。
「はあっ!」
リリアが突き刺した槍が敵の心臓を貫き、敵は血反吐を吐いて倒れた。
「ふぅ〜〜〜。これが最後ね。」
「まだ油断は禁物だよ。」
サンソンが双剣から弓に装備を持ち替えて、逃げようとした敵を矢で射抜く。
「どうやらアンは屋敷内にはいないらしいね。一体、
何処に匿われたんだろう?」
ドドーン
上の方向から爆音が響いた。
「急ごう!!」
「そうね。」
幸い砦内はそこまで広くなく数分で屋上に出ることが出来た。
屋上のドアを蹴破って周りを見渡すと、辺りは土煙に包まれていた。
土煙が収まってくると、一人の人影が見えた。
「おや?新しいお客さんだね。君もこの魔剣の錆になるかい?」
霧が晴れて来ると、禍々しい片手剣を持った男とその向かい側には昨日サンソンと一緒に脱獄したあの女暗殺者が倒れていた。
「リリア。あの女の子のヒールを頼む。」
「もう魔力が少ないけどいいの?回復魔法を使ったら後一発しか魔法を出せないわよ?」
「良いんだ。」
じっと見るリリアに向き合うサンソンに根負けしたリリアはため息をつきながら倒れている女暗殺者へと駆け寄っていった。
「は〜、わかったわよ。」
「ありがとう。」
「させませんよ。」
そう言って、男は倒れている女暗殺者に向かって禍々しい片手剣を振り、黒い斬撃を放った。
サンソンはいち早く反応して、彼女と男の間に双剣の片方を投げつけて、上手く弾く。
弾かれた黒い斬撃はもの凄いスピードで城塞の壁に当たった。轟音が起きて、斬撃が当たった場所はドロドロに溶けていった。
サンソンは投げた片方の剣を素早く拾って男に向かって走り回転斬りを食らわせる。
男はサンソンの回転斬りを止めて面倒くさそうに語る。
「中々面倒くさい物をお持ちになっていますね。」
面倒くさいものがきたと言っている割には、男は狂気的な目で嬉しそうにしている。
「まあね。持ち主に似たんだろう。僕も面倒くささには自信があるからね。」
後ろではリリアが回復魔法をしているときの光を感じた。
「かの癒し手よ。この傷ついた者の傷を癒し給え【ヒーリング】」
「ゲホッゲホッ。」
「兄さん応急処置はしたわよ。けど何かの呪いで身体が弱ってて全快出来ないわ。」
「ごめん。今そんな暇がないんだ。後にしてれ!!」
「ア……ンは、この…と…りでの、近く…の森……にいる。ゲホッゲホッ。」
「だってお兄さん!!」
「分かった!分かったから。回復が済んだらなら今すぐ手伝ってくれ!!こいつの剣魔力で間合いを長くしてて手が出しづらいんだ。」
次回は土曜日の0:00です。
お楽しみに!!




