⑦「捜索」
サンソンを救うために、騎士団の捜索に手を貸すことになったリリア。捜索に苦戦している中、ある人物と思わぬ再会を果たす!?
楽しんでいってくださいね。
「非常に不本意だが、よろしく頼む。」
アンという少女の誘拐犯の捜索の会議を開始する前にチョロっとエールから言われた言葉だった。
エールの部下達も不服そうだ。
現在各隊長が集まってミーティングを含めた会議が行われている。
リリアは隊長達からの視線に気付いて周りを見渡した。
横を見ると、隊長達はチラチラとこちらを見ていた。
何故どこの誰かも分からない冒険者をアンお嬢様の捜索に参加させているのか?
とでも言いたそうな顔をしている。
私はそう思ってしまうのはしょうがないと思うのでその不信感むき出しの数十人の視線に気付かないふりをする。
何故ならば私はルイジェルド家のご令嬢という身分を偽って、冒険者としてこの捜索に特別に参加しているという体でここにいるからだ。
私と兄さん以外で本当の私たちの身分を知っているのはこの街でエールとエルサレン、それとあのメイド姿の女の人だけだ。
当のエールは完全に知らんぷりを決めてしまっている。
お前なんか私は認めないと彼女の空気がかたっていた。
この融通の利かない傲慢な彼女だが主人公に対してだけは敬意を持っているようだ。
私たちの身分をここで言ったらここにいるエレンの部下の騎士達はどんな表情を見せるだろうか気になったが、
身分を隠して冒険者生活を送っているためやめておくことにする。
「お前たちはすでに知っていると思うが、アンお嬢様を攫った不届き者がいた。
アンお嬢様が行方不明になってから夕刻どきに怪しい集団が倒れて意識不明になっているところを我々騎士団が発見し、確保。
尋問の後にその集団のうち一人がアンお嬢様を攫おうとしたことを白状。
しかし、肝心のアンお嬢様を攫ったわけではなく、邪魔が入ったことで未遂で終わったことが見てとれる。
我々はこのアンお嬢様を攫おうとした者たちとは所属が別の組織が関与していると騎士団は見ている。
現在は騎士団長がアンお嬢様と犯人の捜索を領地内で箝口令を敷きながら続行中だ。
我々は別動隊としてこの街を動くことになる。質問があるものは?」
するといかにも真面目そうなメガネをかけた男が手を上げる。
確か名はブルーメル大隊長だったけ?
「一つ質問よろしいでしょうか副団長。」
「質問を許可する。ブルーメル。」
「はっ、ご領主様の治める領地が広いために人手が一人でも多いことは越したことはないのですが、どこの骨とも分からない、それによりによって信用のならない冒険者をこの一大事に雇い入れるとはどういう見解なのでしょうか?」
そう言ったブルーメル隊長はこちらを見て明らかに敵意と言えるように睨めつけてきた。
何よ?やる気!?
冒険者としてなめられては困るので槍をちらつかせながらこの男を睨め返した。
「私達が国から頂いた任務はこの領地を魔物や外敵から人々を守ることだ。人探しは我々の本分ではない。ご領主様がこの手のプロフェッショナルである信用のある冒険者を伝手で派遣してくださったのだ。故に彼女を否定することはご領主様を否定することと同様。口を弁えろ。無礼者!!」
副団長であるエールに一喝されたブルーメルはこちらを一望しながら悔しそうに座った。
「はっ、申し訳ございません…。」
(へへんっ、いい気味よ!)
融通の利かないムカつく女だが、庇ってもらったことは事実なので少し見直すことにした。
(フンッ、仕事はできるようね。)
「他に質問は?」
「「……………………。」」
「では、街で聞き込みをする。各員、今は情報と時間が命。ただの聞き込みだとは思うなっ!!異変があった場合はすぐさま笛を鳴らして報告しろ。
以上だ。各員、行動開始。」
「(ザッ)はっ!!」
副団長であるエールの号令に反応するように、騎士団員達は座っていた椅子を一斉に立ち上がって右手の拳を左胸に当てて、それぞれがすぐさま行動を開始した。
騎士団の団員達とは別行動で一人でしばらく聞き込みをして見たが有力な情報は見つからなかった。
残りはサンソンの言っていた、あの黒剣を持った盗賊の服装をしていた人物を探すしかなさそうだ。
サンソンが言うにはその男はかなりの手練れだ。
あの天才的な剣術を持つサンソンが圧倒されたのだ。
私だけ一人で挑んだとしても返り討ちに遭うだろう。
その男の実力に通用しそうな腕前の人物を想像してみたが、私を(認めるのは悔しいが)軽くあしらって勝利したあのオーガのような男しか思いつかなった。
悔しいけどあの男に依頼を受けさせるしかないわね。
そんなことを考えながらリリアが市場を歩いていると自分に向けられた視線を感じたのでそちらを見るとあの男がこちらを見ていた。
男と目があった瞬間男はもの凄い速さで私から逃げ出した。
私を圧倒した男の思いもしない行動に、一瞬唖然としてしまったが肩に掛けていた槍を持ち直す。
すぐに我に帰って、リリアは急いでその男を追いかけ始めた。
しかし男の見た目に合わない速さになかなか男との距離が縮まらない。
(なんなのあの男!?)
(馬ぐらいの速さなんですけど!!?)
けど、ここで見逃してたまるものか。
「待ちなさ~いっ!!」
(人を掻き分けながらじゃないと、進めないのにあの男はなんであんなに速く移動出来るのよ〜!?)
(あっ!!裏路地の方に曲がった!!)
「くっ!」
急いで角を曲がり、後を負う。
人が少なった分速く走れる様になったがそれは相手も同じだ。
なんなら距離は長くなっている。
このままでは見失ってしまうだろう。
(最終手段よ!!)
「大地を作りし精霊よ。我が追う者の道を塞げ。【アースウォール】」
男の目の前で岩の壁が伸びて狭い路地裏を防いだ。
(フフンッ、これで追い詰めたも同然ね。)
けど、私はこの男を甘く見ていた。
なんとこの男はいきなり背負っていた剣を抜いたのだ。
(私を迎撃するつもり!?今度は負けないわよ!!)
しかし男は走っている足を止めようとしない。
(どうしてかしら?)
男はそのまま壁に近づいていく。
いきなり男の持っている大剣が赤く光りだした。
男はその光った剣で壁を切り上げると数トンもある壁を爆音とともに破壊した。
何の魔法?それとも…魔剣!?
男はそのままこちらを一瞥もせず走り出した。
リリアはますますこの男に興味を示した。
何故なら、魔剣を所有している冒険者は伝記でしか聞くことがないほど珍しい。
彼らは本物の冒険者と言われている。
リリアが小さい頃から憧れたその本物の冒険者がここにいるからだ。
(絶対に捕まえて見せる。)
何度も魔法で妨害を試みたが、全て避けられるか防がれてしまう。
そんな中、少し前方に数人の人影が見えた。
(うん?前方に何人かいるわね。)
だんだん近づいていくとその人影が昨日この男に喧嘩をふっかけられた。
あっ、アレはダン!?
前方に居たのはダンとその冒険者パーティー「黒き刃」だった。
ダンも私と言うよりこの男を見て、黒髪をなびかせて大槍を構える。
「この野郎、この前はよくも俺に恥を書かせてくれたな!!」
ダンに話を聞いていたのだろう。他の冒険者パーティーもそれぞれの武器を構える。
面倒なことになったがある意味都合が良いと言える。
このまま追い詰めてやる。
前方の通路を塞がれた男は急に右に通路を曲がり姿が見えなくなった。
急いで角を曲がって追いかけようとしたがそこで足が止まってしまっていた。
「なにっ!?」
足元を見ると地面が泥濘んでいていて身動きが取れないことがわかった。
黒の刃も後からやって来て私と同じ罠にかかってしまう。
「うおっ!?」「キャッ」「わっ!」
集団で動いていたためか黒の刃の5人の冒険者達は声を上げて倒れて行く。
私はもつれ合ったまま、あの男の背中を見ることしか出来なかった。
男の罠にハマり、リリア男を見失ってしまったのだった…。
次回は月曜日の0:00です。次回をお楽しみに!、




