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英雄の送人  作者: SOGEKIKUN
第二章「英雄の旅立ち」
22/77

⑤「鋼の炎」

バードに合う鞘を探していたアンセムは鋼の炎と言う鍛冶屋を勧められたのだった。


楽しんでいってください!!


「おいおい、何だいこりゃあっ!?、うちはそんな古い大剣取り扱ってないぜ?それにしても旦那の剣、魔剣じゃないか!?、スゲーなぁ!!、こんな古いタイプの魔剣見るのは十数年ぶりだ。」


中年の武器屋店主がヒゲをさすりながら言う。


実際は神剣らしいがまあ神剣と言っても信じてもらえないので魔剣ということにしておこう。


「そんなに古かったか?」


「何言ってんだ?もうひと昔前の代物だぜ?もう骨董品の部類さ。」


ヒゲ店主からバードを受け取ろうとするとバードがいきなり振動し出した。


「何を言っているんだい!僕はまだピチピチの五十七年物だぞ!!」


うるさい。大声で喚くな!、聞こえるかもだろっ!!


勿論この剣の声もヒゲ店主に聞こえる理由もないのでこの俺の心配は無駄な労力なわけだが。


確かにバスターソードを扱えるやつは余程の腕利きだけだったので少ないが、

だからこそ、それを使いこなせる奴は有名になりやすいのだ。


こんなに目立つ大剣を見たことない?

うーむ…。そんなこともあるのか…?


それよりもどういう事だ?ひと昔前?


確かにこの街のあの戦いの前に立ち寄ったときとは雰囲気は大きく変わっている。


戦乱の世の中の筈なのにこのに行き交う人々は平和ボケしているように見えた。


俺がここを拠点にしていたときは、くたびれた雰囲気だった筈…。


雰囲気だけでなく、街の建物や店には娯楽が多くなっていた。


ただ、俺が今まで見たいと思っていた光景が広がっているのに嬉しい反面、何故か複雑な感情が心の奥を透き通ってきて少し寂しさが胸の中をこだましていた。


(あいつらとコレを見れたらな…。)


ズキッ


クソッ、まただ。

何か思い出しそうになると急に頭が痛くなる。


心の中にあるはずの感情や思いがせき止められていて、まるで胸の真ん中に大きな穴が空いているかのような気分になってしまう。


くそぅ…なんなんだ。この痛みは。


アンセムはこの心の空白感の正体が全くわからないままであった。


そんな俺を差し置いて、いきなり振動し出した大剣に驚いてバードを直視していた店主は、(まあ、魔剣ならあり得るか)と無理矢理納得することにして話を続けた。


「まあ、この規模の大剣の鞘を作るなら鍛冶師だな。それに魔剣となると余程の腕がないと作れないだろうしな。う〜ん…。」


ヒゲ店主は再びヒゲを弄りながら考え込む。


「この神剣である僕を収めることが出来る鞘なんかそこらにあるわけないじゃないか!?」


この偉そうに語っているふざけた存在を一旦無視することにして、ヒゲ店主に質問をした。


「その鍛冶師はこの街にいるのか?」


「ああ、いるよ。確か鋼の炎って言う鍛冶屋だったな。偏屈なドワーフの爺さんが営んでるって言う店だ。なんだって自分が気に入った相手としか取引しないんだそうだ。あまりおすすめできないんだよ。」


数本の投げナイフとタガーを買った俺は武器屋のヒゲの店主と挨拶を済ませてから店を出る。


その後は食料やポーションを手に入れて一息入れた俺は武器屋の店主が言っていた例の鍛冶屋に向かうことにした。


ギルドにあった地図通りに進んでいると人混みが絶えず、途切れなかったはずの大通りにいたはずがいつの間にか人っ子一人いない裏路地に迷い込んでしまっていた。


地図通りに進んでいるはずだが予想以上に道が曲がりくねっていて迷ってしまったらしい。


(う〜ん、こりゃー困ったな。)


(何処にあんだよ、その「鋼の炎」っていう鍛冶屋は。)


頭をかきむしりながら武器屋の店主からもらった地図片手に迷っていると気配が無かった筈の背後からいきなり少女の声に話かけられた。


「お久しぶりです。アンセムさん。」


振り向くと表情の読めない顔で、13〜15ぐらいの見た目の少女が道の真ん中で一人立っていた。


こんな人の少ない道に少女が突っ立っている。


そんな不思議な光景はなぜだか見覚えがあるが、思い出そうとすると再び頭が痛くなってしまう。


「俺を知っているのか?済まないが、俺は少し記憶が無くなっていてな…。ところで、「鋼の炎」と言う場所を探しているんだが、何か知ってるか?」


すると少女は不思議そうな顔をしてしばらくし考えていそうな顔をしていたが、いくらか納得したような顔をして、


「お師匠の所にお連れします。」


とだけ言い少って、少女は右に振り向いて何の変哲もない壁の一部に手を添える。


そして俺には聞こえない微かな声で呪文をとなえて…そしてゆっくりと押した。


ガガガガガ。


すると突然静かな音と同時に壁がゆっくりと変形していって、扉が出てきた。


マジック・ドア(魔法の扉)か、たいそうな仕掛けだ。


なるほど。


少し武器屋の店主が言っていたことがわかってきたぞ。


「どうぞ。」


そう言って少女は手招きをして扉の暗闇の奥に入っていった。


俺が入ると扉がひとりでに閉まった。


どんな仕組みになってるんだこの扉は?


少女についていく。

暗くほとんど見えない廊下を進んでいく。


すると、だんだんと明るい光へと近づいていった。


よく見ると随分古そうな骨董品や絵が飾られている。


今、進んでいる薄暗い廊下の奥を見ると扉の向こう側が光っているのに気が付いた。


耳をすましてみるとカン、カンと金属がぶつかり合う音が聞こえてくる。


しばらく歩みを止めなかった少女はその明るい扉の前で静かに止まり、ドアノブを握って扉を開ける。


そのまま無言で金属音のする部屋に入っていった。


俺も少女に続けて入ると老人の白髪のドワーフが鋼をハンマーで打っている姿が目に入った。


その真剣な顔つきはあの怖いもの知らずな獣人族でさえ圧倒されるという自信が込み上げてくる。


一見恐ろしい姿がなぜか懐しい親友に再会したようなしみじみとした気持ちにさせてくれる。


少女はその小さな身体に似合わない大人しげな雰囲気をまといながらドワーフに近づき、耳打ちをする。


「お師匠様、………。」


すると、老人のドワーフは動かしていたハンマーを止めて、黙って待っていた俺の方に身体を向ける。


俺の姿を確認したそのドワーフは眉間のしわを解いて優しい目で俺を見つめた。


その表情は何処か懐かしげであり儚しげでもあった。


「ほう、コール平原の戦いの撤退戦から行方不明だとは聞いたが五十七年も過ぎておるのに一切見た目がまったく変わっていないとは驚いた。久しいな我が友よ。」


「え?」


俺はその衝撃の言葉に耳を疑うしかなかった。





「お主にそんなことがあったのか…。それで記憶がところどころないとな?」


俺は記憶の残っている部分を話した。


気づいたら洞窟系のダンジョンの中にいたことやスライムやオーガと出会い、協力してどうにか脱出したこと。

ヒドラとの激しい戦闘で記憶が無くなってしまって、

目覚めたときには過去の父との誓いや、この街の名前や場所ぐらいしか覚えていなかったこと。


今度は自分の愛剣が神剣となって会話出来るようになったことなど。


このことにそのドワーフは驚いていた。


「今は聖歴207年。お主が行方不明になったのは聖歴150年頃、うーむどうなっているのかわしには分からん。

それに神剣様が何も情報を持っていないことから文献のような女神の使徒と言うわけではない。こんなの歴史上初めだ。」


「と言うと今までの神剣ってのは神の使いってことか?」


「そうじゃ。しかしこの神剣様はそんなことは一切ないと言っておる。」


「ところで爺さんはバードと話せるのか?」

「まあの。」


「お主のことを神剣様は大変気に入っていらっしゃるようだな。」


「こ、コラァ〜!?ぼ、僕がいつそんなことをいった〜?そんな言いがかりは辞めて貰おうか〜!!おじいさん?」


「おっと、これは失礼。言わないことになっておったな。すまんすまん。今のことは忘れてくれ。アンセム…」



ある程度話が済んでから俺は今まで頭の中にあった記憶に無いあいつらの名前を聞いてみた。


するとそのドワーフの老人は悲しそうな顔を微かに滲ませながら、


「そいつ等はお主と共に戦場を駆け巡った大事な戦友じゃ。そのほとんどは今は誰もが知る英雄となっておる。そなたの残した平和を望む夢を叶えてな。しかし、そなたが目覚める頃にはほとんどが息絶えてしまっておる。」


「…………………。」


「しかし、まだ生きているものや子孫はいるだろう。記憶を取り戻すなら、まずはそこを訪ねることにするとよい。そうすれば何かわかるやも知れぬしな。」


「ところでお主、その不思議なスライムくんについてもっと話してくれんかの?」


「アイツはな、アオっていうんだ。」


「名付けたのはお主か?」

「そうだ。」


「長く生きてきたが知能を持つ魔物か…。ワシも一度見てみたかったの〜。良かったら、お主が欠けているその魔石。わしが武器として鍛えさせてもいいぞ。アオと言うスライムも武具として使って貰ったほうが、さぞ嬉しかろう。」


確かにこのまま首にかけておくより、そうした方が良いと思っていた。そっちの方が、アオと共に今後とも戦える。


一度失った命は戻らない。だから、俺達は思い出を大切にする。


丁度いい。爺さんに頼んでみるか。

「…ありがとう。爺さん。」


そして、首に下げていたアオの魔石を爺さんに渡した。


爺さんは真剣な表情で受け取り、

「ああ、最高の出来栄えにすると誓おう。」

と、頷いた。


今まで影を潜めていた少女が出てきて、静かな声で

「お師匠様。」


と、一言だけ述べた。

少女は無表情であるがこの老人を咎めるかのよう言った。


「お師匠様。仕事を済ませてからゆっくりとして。暖炉の火が冷めちゃう。」


「おお、すまんかったのロア。」


多分ロアと言われた少女はこの老人を面倒を見れるしっかり者なのだろう。それか、こののんびりなご老人を世話するためのメイドだったか…


「ウォッホン。さて、わしもやることがあるでな。雑談はここまでにして、見当はついておるが何をしてほしいのだ?」


「まあ、どうせバードがすでに話しているだろうが…。」


「僕という神剣に似合う鞘を作って欲しいな!!」


「一旦黙らんかい。このお喋り剣が!!お前に似合う鞘が有るならば見てみたいぜ!」


「な〜にお〜う。もう見つけてるもんね。」


「う、ウソだろ。」


「キィ〜!!その信じられないようなものをみた顔、腹が立つ。腹が立つ!!僕のこと馬鹿にしてるの?してるよね?」


「え?やっと気付いたの?」


「キィ〜!!」


そのまま言い争いを始める二人が滑稽なのか穏やかな目で眺めている。


「仲良しじゃの。」


「「仲良しじゃない」」


息の合うつっこみを受けた老人は、楽しそうに眉を緩めて白い髭を擦っている。


「ホッホッホッ。まあ二人とも落ち着け。すでに良いアイデアは考えついおるわい。取り敢えず今日は剣の型だけ計らしておくれ。」



ドワーフの爺さんにバードの型を作ってもらった後、俺達は「鋼の炎」を出た。



今俺は大通りに出るまではロアと言われていた少女に案内してもらっている。


いったいどこに向かっているか見当もつかない程複雑な裏路だ。


ふと今日始めて会ってから、今まで気になったことを聞いてみることにした。


「何でずっと、パンの耳を髪の毛に乗せてるんだ?」


俺の疑問を聞いた少女は、ハッとするかのような反応をした。


少女は、スタスタと歩いていた足を止めて、黙って頭の上に乗っていたパンの耳をとり、振り向いて、


「パンの耳、どこでしゅか?」


キョトンとした顔で聞いてくるロア。

多分だが、今モクモグしている口の中にあるぞ?


「いや、今食べて…」

「(ゴックン)いったいどこにあるんですか?」


「「……………。」」


ロアは前方に振り返って、再び歩みを進めた。


隠すのは良いが、今度はケチャップが首についてるぞ?


ロア?


クールそうに見えて意外と、お茶目な奴だ。


裏路から出ると、急に明るさが増した。


なるほど、街の中央広場近くの大通りに向かっていたのか。


ロアに感謝と別れの挨拶をした。


「案内ありがとな。ロア。」


一瞬、きょとんとした顔をしたロアだったが、すぐに透明感のある声で彼女は返してくれた。


「ええ、また5日後に。それと「ガーノルフ・鋼の炎工房」の印。

これがあればここに近づいた時にあなたの魔力反応が分かります。

来たかったらこれを持って、ここらへんを回って見てください。」


その少女はそう言って、炎?を形どったアクセサリー渡してを忽然と人混みの中に紛れて姿を消してしまった。


あの子はなんだったんだろうか?


そんな疑問が頭に残っていたが、次のことに頭を切り替えて魔法の鞄(マジック・バッグ)の中にロアがくれたアクセサリーを入れた。


さて、この後はギルドで依頼でも受診して金でも稼ぐかぁ…。


「そうだね。僕の鞘をもっとゴージャスにしないとね。」


さっきまで拗ねて、黙っていたバードが口開いた。

「やかましいわ。」


もうツッコミに慣れ始めてきた。

このままこいつのペースに飲まれてしまうのは腹立たしいのでどうにかしなければ。


そんなことを考えながら市場を歩いていると、昨日決闘をした青色の槍を持った少女が歩いていることに気がついた。


少女自身もこちらの存在に気づいたようでバッチリと目が合ってしまう。


少女の目は俺をみつけられたことで歓喜の色を示しているようだ。


(うん。)

(これは新たなトラブルの予感だな。)


よし、逃げるようか。


俺は全速力で少女とはまるっきり逆方向へと逃げ出したのだった。




次回は8月16日(金曜日)0:00です!

次回もお楽しみに!!

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