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英雄の送人  作者: SOGEKIKUN
第二章「英雄の旅立ち」
20/77

③「迷子の少女」

アンセムに負けて落ち込むリリア。

その一方でサンソンは迷子の少女を拾う。

それが後に大事に繋がることになるのであった…。


「もう。何なのよあいつ!!」

リリアは男との決闘に負けた後、顔を赤らめながら逃げるように退場した。


幸い、他に出場者がいて観客の注意がすぐにそこに向いたので、そこまで目立つことは無かったが、

どっちにしろ大衆の前で赤っ恥をかいたのは変わらないのだ。


今は自分の行きつけの宿屋「眠りの風」のカウンターで両手を机にバンバンとぶつけている。


その姿は成人したものの姿とは言えず、癇癪を起こした子どものように見える。


「成人してない子どもじゃあるまいし、いい加減やめなさい。店が壊れるじゃない?」


この宿の店主をしているジルが母親のように優しくなだめる。


彼女は私と兄さんがこの街に訪れた時色々世話をしてくれた優しい人である。


この包容力のあるジルは年は意外と高くなくなんと20代後半である。


詳しい年齢は知らないが少なくとも私より一回り大きいと思うが、どう考えてもこの包容力はおかしい。


絶対裏では魔法を使って見た目を誤魔化してるに決まってる!


そう疑ってしまうくらい実年齢と彼女の出す雰囲気は違うのだ。


しかし、この人は本当に優しくて気配りが上手で私が落ち込んでるときは必ず慰めてくれる。


この人を見ると今は亡き母を思い出す。

あの青が混じったの黒髪が小さい頃に、見た母の笑顔を匂わせて気持ちが落ち着くのだ。


「あなたの大好きなりんごパイを作ったわよ。また強くなって、その人を後で見返せばいいじゃない?

ほ〜ら。元気だして、ね?」


そう言って凄く美味しそうな、匂いがするリンゴパイをリリアの前のカウンターに置く。


「うぅ〜〜ありがとう〜〜(メソメソ)。」


「な〜に言ってるのよ〜?あなたの笑顔の姿を見るのが私の毎日の楽しみなんだから、頑張って頂戴!!」


「ねっ?」


その笑顔を男が見たら絶対に真っ赤になるであろう魅力的な笑顔をしながらジルは励ましてくれる。


私が女だから大丈夫だけど、男だった速攻ジルを押し倒しているだろう。


けど、そんなこと関係なしに私はこの人が大好きなのだ。


「うん!」



リリアは普段男勝りの勝ち気な性格だが、この人の前では子どもの様になってしまう。


本当にあなたったら…。


「もう成人になったんだからしっかりしなさい。」

ジルは笑いながらリリアの頬についているパイのかけらを取ってあげる。


この子から聞いたところ、その男の人ってなんだか今日チェクインしたお客さんと特徴が似てたわね〜?

まあ人違いでしょう。


この街には冒険者を受け入れるためのたくさんの宿がある。


この子と因縁のある相手がたまたま一緒の宿にいるとはいるとは夢にも思わなかっただろう。


今その男はこの宿の寝具で旅の疲れを癒すために爆睡しているのであった。


「ゴ〜、ゴ〜〜。」


そろそろ日が傾く頃になったので、ジルは夕飯の準備をし始めた。


その後は色々会話を弾ませながら時間が過ぎていった。


夕飯の下準備が終わった頃、ジルはふと疑問に思ったことをリリアに聞きた。


「そういえばサンソンくんは?」


「今訓練所で迷子の面倒を見てる。」


リリアは美味しそうに大好物のリンゴパイをゆっくりと頬張りながら答えた。


「あの子、優しすぎて危険なことに足を突っ込んでないかしら?たまに心配になるのよ。」


ジルの心配は多分杞憂に終わると思う。


なぜならうちの兄ならいざというときでも大丈夫だからだ。


それだけうちの兄は強いのである。


しかし、これまでの経験からここまで遅くなるのは何かとトラブルに巻き込まれていることが多かったので、急に兄が心配になってしまうリリアなのであったのだった。



僕はネフェタリア家という貴族の屋敷の地下牢に閉じ込められていた。


どうしてだろう?僕は泣いている女の子を助けようとしただけなのに…。


僕が考え事をしているのか斜め右の牢屋から男が僕に話しかけてきた。


「おいおい坊主。若いのにヤンチャしすぎじゃねえの?どんな事やったんだ?」


「聞いて驚け。なんと、僕は3回目の冤罪で捕まったのさっ!!」


「ギャハハハ。そりゃあ災難だな〜!!」


「おい、野郎ども。ここに3回冤罪で捕まった坊主がいるぞ〜。」


「ガハハハ!」


「冗談はシャバでいいな!!ウソつくと看守に下抜かれちまうぞ!!」


ウソだと思うけどホントだからな。


さて、暫くは暇になりそうだから僕が何故三回目の冤罪になったかを皆に説明してあげよう。



稽古所からそそくさと退場したリリアを追いかけていると、稽古所の近くの道端で泣いている女の子を見つけた。


居ても立ってもいられない僕はリリアに一言って、その女の子に声をかけた。


「どうしたんだい?」


いきなり声をかけたのがいけなかったのか少女はビクッと驚き、更に鳴き声を上げる。


「ウエ〜〜ン。」


「えっ!?えっと…こうかな?」

焦った僕は泣いているその子を泣き止ませようと四十八苦した。


僕がなんとか、慣れない変顔をしたら泣き止んで笑ってくれた。


「キャッキャッ!!」


僕の変顔に対し笑顔になった顔はとても可愛らしい。


一息して少女の格好や、容姿を確認する。


年は7〜9歳。


服装からしてきっと貴族か何かのご令嬢だろうか…。


僕が少女を観察していると、いきなり少女のお腹が鳴りだした。


「お腹空いたの?」


「うん。」


お腹が鳴った少女は顔を赤らめながら、コクッと頷いく。


どうやら安心して、お腹が空いたらしい。


丁度近くに屋台があったのでそこから串肉を買ってきて少女と一緒に食べる。


訳を聞くと少女はたどたどしくだが喋ってくれた。


今まであまりこの街を出歩いたことはなく、ちょっとした冒険のつもりで親元から離れたら帰り道がわからなくなってしまったらしい。


街を歩いて親を見つけようとするより、ここにじっとしていたほうが良いだろうか?


幸いここらは見通しがいい大市場だ。

ここなら逸れた親が見つけやすいだろう。


仕方なく、親が現れるまで一緒にここらへんの屋台を紹介しながらここらへんを一緒にうろつくことにした。


アンと出歩いてからから数刻はたっただろうか?

もう辺りは完全に暗くなってきた。


晩ごはんまでに帰らなかったら、ジルとリリアに叱られるな〜。


そろそろ親御さん、来ないかな…。


「ねぇアン。暗くなってきたし、一旦僕たちの家でとまら…アン!下がって!!」


急に周りでたくさんの足跡が聞こえてきた。


(親にしてはやけに気配が怪しすぎる。)


怪しく思った僕は咄嗟にアンを後ろに下がらせ、両手剣を抜いた。


僕が剣を抜いたと同時に7〜9人ぐらいのどう見てもカタギには見えそうにない男たちが剣を抜く音をたてながら現れて僕とアンを取り囲んだ。


「ヘヘへ」


「おい坊主、その嬢ちゃんをこっちによこしな。」


「どこの誰かも知れない奴らに、か弱い少女を渡す奴がどこにいるんだ?」


「痛い目をみたくなきゃさっさと渡しな!」

「お前もこの人数じゃ不利だろう?」


「お前らの裏にいるのは誰だ?それを言わないと渡すこともできない。」


「お前に言うことなんて一つしかない。さっさとその嬢ちゃんをこちらに渡せ。」


流石にこの人数を一度に相手したことはないので少々ビビっていたが、後ろで僕の袖を握っているアンの手が震えているのを感じて勇気を出して言う。


「お前らみたいな雑魚がいくら集まっても変わらないさ。かかってくるならさっさと来いよ!!」


「このガキィ!!」


「やっちまえ!!」


怒った男たちが一斉に迫り、剣を振り降ろしてくる。


僕は冷静に立ち回り、まず最初にショートソードを降ろしてくる男の攻撃をいなすように受け止めてもう片方の剣の歯がないほうで首の裏に思いっきり打ち付けて気絶させる。


今度は二人同時に来たので素早く相手の間に入り、脇腹やみぞうちに勿論歯のないほうで打ち付ける。


よし、残り五人だ。


一瞬で三人を倒した僕に男達は怯みながらもこちらに向かってくる。


もう、怯えながら向かってくる男たちは僕の敵にすらならかった。


「アン、怪我はない?」


「…うん。お兄ちゃんって強いんだね!」


さっきまで怯えていた目は一切見られず、キラキラした目でアンは僕を見る。


「どうしてお兄ちゃんは強いの?」


「この強さは誰かを守る時に出せる力なんだ。」

「なんで〜?」


「それは君がもう少し大人になったらわかるようになるよ。」


「フ〜ン?変なの〜!」


「まあ、要は力の使い方を間違えるなってことを分かればいいよ。」


「うん。わかった!」


あたりが暗くなってもわかるくらいのニコニコの笑顔でアンは返事をした。


なんだか小さい頃のリリアを見ているようで、ほっこりする。


「それじゃあ、今日は僕達の宿に泊まろっか?」


「うん!!」


その時、急に背後から不気味な気配が現れた。


「夜中に淑女を歩かせるとは…、少々紳士として未熟ですね。」


さっきまで気配がなかった背後からいきなり声をかけられる。


僕は緊張して咄嗟に距離をとって武器を構える。


「初対面でこんなに距離を取られるなんて傷つきますよ?」


緊張した空気に関わらず、黒剣を持った盗賊風の男はお調子者のように言った。


「誰だ?さっきのごろつきの仲間か?」


全然気配がなかった。

この男、一体何者だ?


「ハハハ。やはりバレてしまいましたか。まあ仕向けたのは確かに私ですが、君には関係ないことですね。」


そう言っていきなり男は表裏の無い笑顔を歪んだ笑顔に変えるとまったく見えないスピードで黒の長剣を取り出して僕に襲いかかる。


不意を疲れた僕は目を見開いてなんとか彼の短剣を捕らえて防いたがそれはブラフだったらしくすぐさま僕の溝に蹴りを食らわせた。


もの凄く重い一撃を食らった僕の意識は吹っ飛びそうになったが、なんとか堪える。


「グハッ!」


しかし意識は保とうとしても身体は別なようで膝から崩れ落ちて倒れる。


「お兄ちゃん!!」


「なんだ。あの雑魚をあっという間に倒したからてっきり強いかと思いましたが、大したことなかったですね……、さ〜て。」


そう言って男はアンを一瞬で気絶させた。


崩れ落ちるアンを抱えこんだ男はしゃがんでいる身体をゆっくりと持ち上げて、

ゆらゆらと暗闇へと立ち去っていってしまった。


「ま…て……。」


すぐ後、複数人の鎧を着た者たちが近づいけるのを僕は意識が暗闇に落ちていくなかで、ただ見ることしか出来なかった…。


次回は土曜日の0:00です。

楽しみにして待っててください!!

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