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英雄の送人  作者: SOGEKIKUN
エピローグ〜英雄の送人〜
2/73

エピローグ②「撤退」

かなり力を入れてみたので見てくれれば幸いです。

今回は前回と違い、長めに書きました。お楽しみください。



 俺達英雄の送人にとって、この戦はありふれた()()()戦だった。


帝国軍に数万の援軍が訪れるまでは…。


 敵側であるグランオール帝国軍の数は合わせて五万はいた。


 その中にはワイバーン主体の竜騎兵やゴーレム魔導部隊などの兵器が大量に導入されている。


そして、一人ひとりの装備も良い。


 対して、味方したマクロス王国軍の数は四万で兵器の数も少なく兵の質も悪い。


 この差を埋めるために、こちら側は有名な傭兵団を多く雇っていた。


勿論、俺達『英雄の送人』もその傭兵団の一つだ。


 さらに、地の利もあることもあって、でマクロス王国は戦力差を崩さずになんとか保っていた。


 そして、劣勢な立場にありながらも少しずつ優勢になろうとしていたんだ。


 あと少しで王国軍の兵が帝国軍の本隊にたどり着こうとていたのに…。


その時、帝国軍に三万の援軍が来た。


―ウオオオオオオ―


 援軍にきたグランオール兵たちの怒声が響き渡り、 本陣前に迫っていたマクロス王国軍の部隊を一瞬で蹴散らした。


その後、彼らは呆然としていたマクロス王国兵たちを馬の蹄を響かせながら王国軍を蹂躙し始める。


 急に現れた敵の援軍に王国軍は混乱し、次々と敵の刃に敗れていってしまう。


 数的劣勢になりながらもなんとか耐えていた前線ももう少しで崩壊しそうになっていた。


 俺たちがそのことに気付いたときにはすでにとき遅く、俺たちはグランオール帝国軍の兵たちに囲まれてしまっていたのだった。


1000人は優に超えているだろうだろう。


 たった9人では覆しようもない事態に皆が唖然とする。


「総員、撤退だ。」


 すぐさま出した俺の指示にソフィアは風魔法を放ち爆音が鳴るのと同時に敵軍に風穴を作った。


吹き飛ばされた兵士たちは羽虫のように散っていく。

 

 ソフィアは魔力を膨大に持っている。そして彼女の魔法の威力と範囲は通常よりも強く広い。


 彼女の放つ魔法を初めて見た者は驚かずにはいられないだろう。    


 敵兵たちは案の定驚き怯えた。


 オリビアは、その隙をついて槍で相手を串刺しにしながら皆の逃走経路を確保する。


 その後、ギークが敵陣に開けた穴を斧で振り払い広げていった。


 そのままの勢いで、敵陣を突破した後はグルセナが時々後ろを向いて弓を引いて追撃者を百発百中で射抜いていく。


流石エルフだ。彼の弓使いは一流だ。


間髪入れずに俺達はコール平原の近くにある深淵の森へと駆けだした。


 急いで撤退する俺達に対して、帝国軍は騎馬兵を使って追撃してきた。


 俺達は全員徒歩だ。このままでは、いくら足が速くとも時期に追いつかれちまう。


 例え、ここで留まり追撃してきた騎馬兵を迎撃してもその間に歩兵たちに囲まれてしまうだろう。


絶対絶命であった。


「俺達が足止めをする。」


突然ギークが口を開いた。


「私もやるわ。」「俺もやる。」


ドゥークとドーラが言う。


「私も手伝う。」


 いつも寡黙なグルセナが突然口を開いた。


 ギークが敵兵を薙ぎ払い。その隙をカバーするように残った敵兵をグルセナが弓で始末する。


側面は動きの素早い双子ががカバーする。


 たしかにこの布陣なら騎馬兵だけなら殲滅できるだろう。騎馬兵もそんなに数はいない。


だが、そしたら必ずこの4人は死ぬだろう。


全員この布陣が最適なのは知っているので誰も反論できない。


そんなとき、


「死にかけていた私たち双子を拾ってくれたのはグルセナでしょ?」


「せっかく拾われた命最後くらいグルセナのために使わせてよ。」


ぼたぼたと涙を流しながら双子が言った。


その言葉にグルセナは何も言い返せない。

誰も喋らない。


できるだけ目立たないように静かに素早く移動している。


ただ聞こえるのはこの勢いの強い大雨が森林の葉に当たる音と頻繁になる雷の鳴る音だけである。


 皮肉なのか、全員が英雄の送人に入ったときに比べて体力も技術も成長しているのが分かる。


 グルセナは普段喋らないがその心の中は強い優しさや思いやりがあるのを団員全員が知っている。


その優しさの多くは双子に向けられていることも。


 そして双子にとって親と言えるのはグルセナだけだ。


 ここでどちらかだけが残っても残った方はこのあと多分立ち直ることはできないだろう。


最悪自殺をするかもしれない。


それほどこの3人は本物の家族よりも絆が深のだ。


そして、ギークは英雄の送人の頭脳だ。


あいつの策に助けられなかったた団員はいない。


この4人は誰も欠かせてはいけないだろう。


「俺だけが囮になる。」


俺の言葉に全員が驚きの目で振り返った。


「何言ってやがる。てめぇはうちの傭兵団の団長だろうが!!」


俺の言葉に一番に反応したのがオリビアだった。


「そうですわ!あなたがいたからこそ今まで安心して皆がついて来てくれたのですよ?

 今貴方がいなくなったら本末転倒じゃありませんか!!

 あなたの叶えたい夢を叶えるためにここの団員はいるんですよ!!!」


「プルセナ様の仰っしゃる通りだ。それにあなたは私と約束したではないか。

 プルセナ様を、いつかプルセナ様があるべき地位に立つまでこの手で守ってやると。」


「アンセム…、あんたはここで絶対に無くしちゃいけない。

 あんたはいつか英雄になる力も素質もある。ただの酔っ払いに、夢や希望をを諦めていただめな人間に一緒に大きな夢を見せてくれた。

 ガキみたいなくだらない夢を。いつか王になってこの大陸を統一し平和な世の中にしたいって夢が!!

ここはこのただの酔っ払いな俺が足止めをするべきだ。」


グルセナは何も言わず、目で俺を訴えていた。


双子は泣きすぎて何も言葉にできていない。


最後にソフィアの泣き腫らした目が合う。


「お兄さん…。」


さすが俺の妹だ。俺が本気のときをわかっている。


けど、その瞳の奥には引き止めようとする意思がが見え隠れしていた。


俺はその目に強く訴える。


だめだ。


 俺は出来ればこの中の全員誰も死んで欲しくない。団長として将来の王を目指すのならこの判断は失格だろうがやはりこの判断しかだめだと。魂から感じている。


 ソフィアに向けていた目線を逸らし、俺は全員に命じた。


「団長として命令する。俺だけが足止めをする。

 そしてお前らはギークを中心に逃げてくれ。もう一度言う。これは団長命令だ。」


 傭兵にとってルールはないように見えるがそれは個人で活動するときだけだ。


 傭兵団のように組織となるものには必ずルールがあるが、それは統率を取るためである。


そして傭兵団においてルールは絶対である。


そのうちの一つは団長命令には逆らわないこと。


傭兵稼業をしているもののほとんどが我が強いのだ。


 これを厳守にしないいけないのは一つ命令でも守らずにいるとそれはミスに繋がり皆を危険にさらしてしまう。


だから誰も逆らえない。


逆らってはいけない。


 しかし、俺はどんなときであっても基本命令はしない。


したくないのだ。


 いつも家族のように仲がいい団員とは協力壁がない方がいい。


その方が背中を預けられるからだ。


 そんな俺がほとんど初めて命令をしたことに俺の本気度が伝わり、誰も言えなくなった。


済まない皆、俺絶対に生き残るから。


「死んだら絶対に殺すからな!!」


 普段絶対に泣くことを他人に見せようとしないオリビアが目に大きな水をためながら、零さないようにしながら言う。


「俺との決闘俺が勝つまで絶対に死ぬなよ。絶対にだ。」


「ああ、約束する。」


 皆俺の言葉が嘘であるのは知っているがオリビア含めて誰も指摘しない。


 だからあえて言おうと思った。


「俺は絶対に死なない。だからいつか俺が生き延びて帰ってきたときのために俺の夢を叶えて待っててくれ。」


俺も涙が出そうだが意地でも出さない。


「わかった…。お前の夢を預からせて貰うよ。」


ギークは声を震わせてながら言った。


 涙をあえて出そうとしない俺に気を使ってくれたのだろう。


ギークも涙目になるのを隠さずにまっすぐと俺を見た。


「またうまい酒を飲もうぜ。」


馬鹿だな俺。


結局我慢できてなくて結局涙でてるじゃねえか…。


「後は任せたぞギーク。今日からお前は団長代理だ。」


「ああ…。」







果たしてアンセムは生き残るのか……。

次回は明日以降投稿になります。読んでくださりありがとうございます。

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