②「決闘」
アンセムいきなり少女に決闘を申し込まれてしまうのだった…。
決着の行く末は!?
ぜひ楽しんでいってください!!
「私と決闘しなさい!!」
アンセムは困り果ててしまった。
まだ、洞窟型のダンジョンから脱出してからまだ数週間しか経っていない筈…。
孤立無縁に近い状態なので今目立つのは避けたいと考え、行動していたがその目論見はこの勝ち気そうな青髪の少女に防がれてしまっていた。
勿論当人にはそんな意図はない。
自分で言ってもなんだが、俺は傭兵の中でかなり名が知れわたっていた。
新米の傭兵から初老を迎えていそうな男まで俺の名を知らないものはいなかった。
有名になることは、一見良いことばかりに見えるが、実際は悪いことばかりだ。
貴族に付け狙われたり、自然に他の傭兵団とのいざこざが多くなったり、乱暴な権力者や賞金稼ぎだけじゃなく同業者からも狙われることが格段と多くなったのだ。
いわば、戦乱の世に名を挙げることはいつ命を狙われてもおかしくない状況を意味する。
それに今回は一時的だろう無かろうがが負け戦だった。
俺の首を取ろうって輩はごまんといるだろう。
ここで目立つことは完全に「タブー」なのだ。
しかし、この大勢の前で決闘を申し込まれた場合。
ここで断ったらときは、あいつは腰抜けだと言われてなめられてしまう。
そうすると、この先少しの間潜伏する予定なのでここらの荒くれ者になめられては今後の生活に壊滅的に影響が出てしまう。
最悪追手に見つかってしまう可能性がある。
今まであいつらがいて?背中を任せ合えたから堂々と入られたが、一人の場合はできない。
ん?仲間?あいつらって、仲間…なのか?
旅をしてから何度も口から出そうになるが、おもいだそうとすると、急に頭が重くなりして結局思い出せなかった。
時間が経てば何かの兆しに少しずつ思い出すかもしれないと、バードが言っていたので今は気にしないでおこう。
それよりも寝込みを襲われる可能性がある以上、夜もゆっくりと寝れないかも知れない。精神上あまり良ろしくないだろう。
普段なら決闘は喜んで受け入れるのだが、今回ばかりは事情が事情だ。
「すまないが、俺は急ぎの用があるん…」
「良いからさっさと承諾しなさい!!それとも決闘で怪我するのが怖いの?クスクス。あ〜!!だから喧嘩売られても買わなかったんだ。あなた弱虫なのね?」
「リリア!?」
後ろからこの生意気な少女のパーティーらしき青髪の好青年が心配そうにしている。
「アンセム。ここは一旦引こう。無駄なことはしなくて良いんじゃないかな?」
よしよし…バードの言うとおりだ。こういうのは言わせて置けばいいんだ。
そう、相手は成人したてのお嬢ちゃんだ。
相手の気を引きたい年頃なだけだ。
うんうん…。
「よし、外に出ようかお嬢さん。」
「いや…、アンセム?」
今にも怒りをぶつけそうになったがなんとか怒りを押さえる。気づいたら、腕がプルプル震えていた。
絶対にぶっ飛ばしてやる。
「アンセム君?お~い?こりゃだめだ。完全にモードに入っちゃたよ…。」
そうして冒険者たちの野次を受けながらギルドの外にある稽古場に赴くのだった。
冒険者が集まる時は訓練をする理由しかないのだがが、今日は違った。
二人の決闘を観戦するためである。
それに片方は冒険者になるための試験で元Cランク冒険者の審査官を打ち負かした少女ともう片方は雰囲気だけでわかる猛者で先程最近力をつけてきてCランク相当の実力に近いあの気性荒いダンを黙らせた男だ。
これは良いものが見えるぞ。
サンソンも争いは好まないが、武器と武器のぶつかり合いは基本大好きだ。
リリアが決闘で死んでしまったらどうしようという心配と、
この戦いの結末を知りたい好奇心がぶつかり合ってなんとも言えない心境になっていた。
冷静になって周りを見てみると、冒険者だけではなく、
街の住民や通りすがりの人々も集まって来たようだ。
中にはすでにどこからか食べ物と飲み物を持ってきて、くつろいでいる住民もいた。
これを商機だと急いで観戦者達に飲み物や食べ物を配っている少女がお祭り以外にはめったに使われない観客席を髪を揺らしながら徘徊している。
きっとあの住民の状況は彼女たちのせいなのだろう。
僕は彼女たちの商売魂に呆れのため息をついた。
平和な街に住む人々は娯楽に敏感だ。
故に騒ぎを聞きつける能力は異常だ。
すでにお祭り状態になっているが騒ぎはもっと大きくなってしまうだろう。
そんなお祭り状態の中、リリアは男を熟視しながらストレッチをしている。
そしてどこから現れたのか、いつもの司会者が実況用の席にいつの間にか現れて、実況を始める。
「さあ!始まりました。決闘大会!!」
勝手に決闘大会と言う名前をつけられてる…。
「今回の戦士はこの二人です!!」
うおーー!!
観客達が一斉に歓声をあげる。
「まず決闘を申し込んだチャレンジャーを紹介します!!綺麗な青髪を降ろし男を魅了する少女、リリア〜!!」
うおーー!!
柄にもなく綺麗だのなんだの褒められたリリアは顔を少し赤らめながら歓声に答えて手を振っている。
君、そう言うキャラじゃないでしょう?
「最近冒険者を始めた彼女のランクはGランクですが彼女の槍術はタイへン素晴らしいものらしく、冒険者試験で元Cランク冒険者の試験官を打ち負かしたとのことです!!彼女の槍術は相手を打ち負かすことができるのだろうか〜!?」
わ〜〜!!!
「そして可憐だが危険な少女に相対しているのは〜、大剣を持った謎の仮面戦士ぃ〜〜!!」
うおーー!!
「彼から伝わってくる空気と鬼の仮面にはあの恐ろしいオーガを匂わせるかのようです。果たしてどのような勇姿を見せてくれるのかぁ〜〜!」
うわ〜〜〜!!
リリアとは違い、男は歓声に答えずに大剣を杖のようにして構えている。
仮面をつけているのはあまり目立ちたくなかったのだろう。こんなに人の注目を集めていたらあまり意味のない行為に思えるのだが。
観客たちは、みな集中しているのだろうと思っているのだろうと気にも止めなかった。
しかしその盛り上がりなど気にせず、当の本人は酷い後悔に包まれていた。
どうしてこうなった…。
気づいたらお祭り状態になって、当初の目的である目立たず行動することができなくなっていた。
「ねぇ、相棒。この状況どうするんだい?」
「誰だよ!?俺をこんな目にあわせた奴は?」
「あんただよ!!」
「グッ!?」
「あ…ぐうの音は出るんだね。」
「う、うるさい。集中したいんだ。今すぐ黙らねえと、溶鉱炉にぶちこじまうぞ!?」
「お〜と!?女の方は準備を済ませたようで槍を構えだしたぁ〜!」
アンセムも後悔の念をねじ切って杖のように刺していたバスターソードを構えだす。
互いの間に緊張感が走る。
二人の緊張感が伝染したのか、あんだけ騒がしかった観客達も急に静かになった。
急に沈黙を遮るようにバードが喋りだした。
「大切に扱ってね?」
やかましいわ!!
このおしゃべり剣は人が集中しているときもお構いなく話しかけてくるのでそのうるさい口を閉じてないと溶解炉にぶち込むぞと脅しをかけて静かにさせていたが、我慢できなかったようだ。
「あの子中々やるようだ。」
「あぁ。知ってるさ。」
歓声を上げていた観客達が二人の戦士の気迫に押され、辺りは沈黙を保っていた。
永遠かと思える数秒が過ぎた後、二人は一斉に駆け出す。それと同時に沈黙を守っていた観客たちが一斉に声を上げる。
最初に攻撃を仕掛けたのはリーチが長い槍を持っておるリリアだった。
アンセムは斜め上から襲ってくる槍の穂先を避けて、リリアの懐に飛び込む。
リリアもそれを予想していたのか、完全に懐の中に飛び込まれる前にアイスシードを発動する。
「我を凍える壁で守り給え!【氷の壁】」
リリアの前方に平らな氷の壁が出来て、アンセムのバスターソードの刃から防いだ。
観客席から驚きの声が上がる。
そう、魔法は完全な専門知識である。
魔法を専門にしている魔術士でないと魔法を発動させるのも難しいのだ。
それに荒くれ者の多い冒険者だ。
剣と魔法を習う余裕はない。
しかし、この少女は成人したての年齢で両方使って見せたのだ。
リリアは一旦距離をとってから氷の壁を素早く回り込んで、槍をアンセムに突き刺そうとする。
ここでリリアは勘違いをしていた。
相手も初期魔法なら容易に使えるということを…。
男はバスターソードを構え直さず、軽い詠唱を済ました後、水魔法を発動する。
「水の精霊よ我に生命の源を授け給え【水よ、出でよ]」
リリアは攻撃魔法が来ると考え、焦りながらもなんとかガードの構えを取ろうとするが身体にきた衝撃は熱い炎や雷ではなく、水圧だった。
たいした攻撃がこなくてアングリしていた所にアンセムは続けて魔法を放つ。
「水を凍らせたまえ!【凍れ】」
リリアの身体は、ほとんどが固まってしまった。
全く動かせないようだ。
なんとか動かそうともがいたがびくともしない。
アンセムはゆっくりとバスターソードを構えてリリアの首のすぐ先に当てる。
「まだやるか?」
「こ、降参よ…。」
リリアは凍っていなかった左手を静かに上げた。
うおーーーー!!!
「勝ったのは〜。謎の仮面戦士だぁ〜〜!!」
盛り上がりが高まる中ゆっくりと男は稽古所から立ち去った。
勝者として祭り上げられている筈の男はそれらを全く気にぜず、誰かと言い争っていた。
リリアはその男の背後を悔しそうに見ることしかできなかった。
次回は月曜日0:00です。
次回をお楽しみにーー!!




