⑭「再会と別れ」
ヒュドラとの激戦を勝ち抜いたアンセムは目覚めると小さな洞窟の部屋の中にいることに気づいたのだった…。
ぜひ楽しんでいってください!!
気だるい目を開けると俺はオールがうたた寝していたのが目に入った。
(イテテ、ここは?)
全身がまるで岩のように重くて動けない。体中に激痛が走るが、今はそれを気にする余裕はない。
アオは生きているのか?
う〜む。
ヒュドラ戦の記憶が頭がボーとして思い出せないな。
全身がズキズキしながら思考を働かせようと躍起になっていると、うたた寝していたオールが起きた。
「アンセム!!起キタノカ!?」
オールは俺が目覚めたのを確認してホッと胸を撫で下ろしている。
「モウ1週間も起きてなくテ心配していたところダ」
「オー…、ル」
喉が隠れてうまく喋れない。
「ア……オ…は?」
アオの名を言うと、笑顔になっていたオールの顔が急に悲しい顔になった。
「………。」
「アオは戦士の楽園に旅立っタ。コレはアオの形見だ。」
そうしてオールは大事そうに綺麗な青色の魔石を取り出して俺に渡した。
「そ……う…か。」
アオは本当に死んだんだな。
「す…まな…い……が、ひ……と…りに…して…くれ。」
「………わかっタ。」
オールが静かに出ていった。
仲間と逸れていきなり洞窟の中に飛ばされてしまい、寂しくなっていた俺をいつも一人にしないでいてくれたアオは俺にとってもう大事な家族だった。
スライスにしては頭が良すぎて何度も驚かされていたのがすぐさっきの出来事のように感じた。
父さんが死んでから涙を流さないと誓ってそれっきり涙を流さなかったが、久しぶりに目から塩水が溢れ出てきた。
なんで俺は涙を流しているんだ?
そうか、これは悔しさかだな?
俺は大切な全てを守ると誓ったのに結局守れなくて悔しいんだ。
そしてアオの死を未だに受け入れられていない自分がいる。
俺の鞄を覗くと必ずアオが顔を覗かしてくれると思ったが現実は甘くなく、もうアオはこの世にいない。魔石に差してきた月光が当たって、洞窟の中を青色に照らしている。
「ヒグッ…ヴゥ……。」
これで泣くのは最後にするから…。
だからしばらく泣かせてくれ。
一刻が過ぎてやっと落ち着いた俺は現実を受け止めて、冷静さを取り戻した。
周りを見てみると小さな洞窟のようだった。
近くにあった湧き水で顔を洗い、大量に置いてあった食事に手をつける。
1週間気を失っていたのは本当のようで一口食べると腹が鳴って仕方がなかくなり、一瞬で食べ尽くしてしまった。
なんとか腹の虫が治まり、少し狭い洞窟の外を出ようかと考えてみたが、体力がほとんどない今やれることはほとんどない。
だから、俺はオーガように作られた人間には大きすぎる寝具に横たわって静かに目を閉じた。
鳥のさえずりの音を聞いて目を覚めると、洞窟内に温かい光が刺していた。ふと洞窟を見わたすと俺の愛剣のバスターソードがあった。
は?
どういうことだ?
とりあえず重い身体を持ち上げてバスターソードに手を掛けると急に声が聞こえてきた。
「やぁ!」
「おわっ!?」
周りを見ても誰も近くにいない…。空耳だったか?
「やぁってば!!」
う〜ん、やはり疲れているようだ。もう少し寝るか?
「もうっ、君の愛剣だよ〜!」
「久し振りの再会なんだからもう少し喜んでもらってもいいんじゃないのかな?」
どうやらこれは幻聴では無いようだ。
なんか頭痛がしてきたぞ。
「ホント君ってさあ〜、無茶し過ぎだよ。おかげで二度と起きないんじゃないかとヒヤヒヤしたよ。」
「お前本当に何者だ?」
「だ・か・ら、君 の バ ス タ ソ ー ド」
「生まれ変わって神剣となったのさ。」
「訳が分からん。」
そう言うと俺の愛剣はこの分からず屋!!
と、でも言いたそうにため息を吐いた。
「いいかい、君は大切な人間の仲間を守るために一人で大勢の敵と戦ったよね?でも君は力尽きて死にそうになっていた。そこで僕は目覚めたのさ!!
ホント、生まれてすぐ主人が死にかけるなんてマジで焦ったんだらね。」
この剣は一度言語を習い直したほうが言いな。
「じゃあお前は今までどこにいたんだ?」
「君が死にかけていたから一生懸命治療してあげてたんだけどね。
その時にいきなり地面から岩が生えだしてきたんだよ。
これに関しても僕は詳しくないけど多分僕が神剣だったから女神様が持ち主である君に試練を与えたんだと思うよ。」
「聞いてて余計わからなくなる説明をするな!!」
「とにかく、その後君と僕は岩に飲まれて離れ離れになってしまったんだ。
気づいたらあの太陽が差し込んでいる綺麗なところに飛ばされてたんだよ。
いくらか時間が過ぎて退屈してたところに君たちがきて僕を守ってたのかな?
ヒュドラを倒してあと、オーガの中で一回り大きいオーガが僕をここまで運んできてくれたのさ。
君は昨日の起きてたけどその時は暗くて気づかなくていくら呼びかけても気づいてくれなかったんだ。
やっと再会だと思ったのに僕を無視して寝ちゃったんだ。
もう僕はプンプンだよ!」
「お前の説明能力はどうなってんだ?」
「まだドゥークとドーラのほうが、あれ…。あいつらの顔と性格がぼやけてうまく思い出せない?」
「どうやら君は度重なる激戦の反動で仲間との記憶が軽く消えているようだね〜。」
父についての記憶は少しあるが、ソフィアやギーク?グルセナ、ドゥークとドーラ、オリビア、プルセナにアーク…。
名前は出てくるがあいつらが誰なのか一切の記憶が無い…。
(誰だっけな?)
何故か分からないが、心に大きな穴が空いているような気がした。
洞窟の外に出てみるとオーガ達が訓練や狩りから帰って来る光景があった。
しばらく眺めていると訓練の指導をしていたオールが俺に気づいた。
訓練を中断して、こっちに近づいてくる。
「気分ハどうダ?」
「まあまあだな。」
「ここはどこなんだ?本当にヒュドラを倒したのか?」
「ヒュドラハお前が倒さシタ。ソノ後俺達ハ、洞窟を脱出シテ、今はここにイル。」
記憶に無いが多分かなりの激戦だったのだろう。それはこの重い身体が証明している。
「コノ後はどうするんダ?」
「とりあえず旅に出ようかと思う。どうやらほとんどの記憶が消えてしまったらしい。だから、それを取り戻そうと思う。」
「ソウカ。ならばこれをワタシとかないとナ。」
そう言ってオールは戦士の証の木製の人形を渡してきた。
「これは、『オーガの戦友、そしてオーガ種族の英雄に贈られる英雄の証』だそれがアレバ、他のオーガの集落に行っても、問題なく同族と交流ができる。オレタチハこの後移動スルガもし再会できタラもう一度剣を交え合オウ!兄弟。」
「あぁ…。修行サボるなよ!!」
「そっちこそっ!」
二人は本当の兄弟のように笑顔で鈍い音をたてながら拳をぶつけ合った。
俺が出発すると聞いて、集落のほとんどが俺を出迎えてくれた。
オーガたちはたくさんの素材や食料を山分けしてくれる。
強面のオーガもその顔を崩して笑顔で出迎えてくれていた。
そして一番嬉しかったのは、あるオーガの少女がアオの形である魔石に糸を通して首輪にしてプレゼントしてくれたことだ。
たくっ…、本当に、オーガは野蛮なやつって言ったのは誰だよ……。
「マタ来イヨ。」
「待ッテルカラナ。」
「またな!?」
俺に手を振っているオーガ達に見送られながら、俺は人間の街を目指して深淵の森を進んでいくのだった。
これで第一章「深淵なる洞窟」は完結となります。
次回からは第二章「新たなる英雄の旅立ち」です。
人間中心のパート中心になります。
第二章は最低25話分くらいになります。
これまで読んでくださった皆さんありがとうございます。そしてこれからも投稿は続けていくので応援してくださると嬉しいです。
第二章は2024年8月3日0:00から投稿開始します。
では次回もお楽しみに!!




