⑬「成人の儀式」
日本では夏が始まって段々と熱くなってきましたね。
皆さん熱中症にはきをつけてください。
それでは楽しんでくださいね!
二人は朝食を済ませてから慣れ親しんだテントを畳み、マジックバッグに入れて出発した。
四年ぶりの下山だった。
久しぶりの下山に二人は心臓をドキドキと鳴らしながら故郷の村へと歩いていく。
薄い空気を吸って息を吐くと白い空気が出て霧に紛れて消えていった。
山を下っていくと途中で広い森に入った。
今は亡き父がよく狩りに出かけた森だ。
山頂付近とは違い、この森には魔物や凶暴な獣が多数生息している。
そのため二人はは警戒を強める。
これもコーラスさんの最後の修行の一つである。
この森をコーラスさんや父無しに通り抜けたことは今まででなかったが、成長した俺達には不安や恐怖よりも自信や警戒のほうが遥かに強い。
魔物が近くにいないのに何故こんなに警戒してるのかって?
それは昨日の夜コーラスさんが森の中に人を殺す罠を仕掛けていると警告してきたからだ。
こんな森なんかさっさと通り抜けたいところだが危険な魔物や罠が蔓延る危険だらけの森の脅威を修行で思い知らされた俺達は警戒をしながらゆっくりと進むしかないんだ。
しばらく進んでいるとソフィアが立ち止まり、師匠から餞別に貰った杖を構えながら、
「兄さん。この先は未探索だから探索魔法を使うわ。集中する。警戒お願いね。」
と、言った。
俺はソフィアのお願い通り、辺りを警戒し始めた。
ソフィアが集中して魔法を発動できるようにするためだ。
するとまたもや詠唱を破棄して罠の探知魔法を発動した。
ソフィアは優秀な魔術士だ。
普通の魔術士が1人前になるにはどんなに短くても4〜5年鍛錬が必要だが、
ソフィアが1人前になるのにかかった期間は1年と半年である。
そして、魔術士の熟練の証でもある無詠唱魔法を獲得したのは1人前になってからたったの1年である。
その後は時々来る師匠と魔術の研究をしている。
まあ、そこら辺は俺もよくわかっていない。
魔術師は二人しか見たことないからな。
ソフィアの探知を終わったらしい。
彼女は薄目を開けてこっちを見る。
「ここから先は罠も魔物も数が多い。注意して進みましょう。」
俺はソフィアの忠告に黙って頷き立ち止まっていた足を前に動かす。
途中で罠に掛かってしまった不幸な魔物が首を落とされて息絶えているのを見て、緊張が高まる。
いくつかの罠を見つけ、解除しながら進んでいった。
やがて、罠が少なくなっていった。
見覚えのある大きな岩を見つけた時は胸を撫で下ろした。
やっと第一関門クリアだ。
戦場ではこれが当たり前になるのだろう。
この緊張感を覚えて置こうと気を引き締めていると、
ソフィアの顔が警戒一色に染まった。
「何か探知に引っかかったわ。真っ直ぐ近づいてくる!!」
俺は急いでバスターソードを抜いて構える。
ソフィアは氷撃の弾丸を杖から出して浮遊させていた。
木が倒れる大きな音が近づいてくる。
気配がすぐ近くになるとものすごい勢いでのワイルドボアが草むらから飛び出てきた。
「ブルルル」
俺達が小さい頃出会ったワイルドボアより一回り大きい。
この森の主であることが一発であることがわかった。
小さい頃は恐怖で何もできなかったが今の俺たちにとって敵じゃねぇぞ!!
「氷撃」
ソフィアがワイルドボアの頭めがけて氷弾を撃ち込んだ。
氷弾が頭にねじ込み、血が噴き出て、ワイルドボア怯んだ。
その隙に俺はワイルドボアの側面に回り込み、大きく踏み込んで上げていたバスターソードを力いっぱい振り下げてワイルドボアの首を狙う。
ズサーッ
ワイルドボアの首が落ちる。首が無くなった巨大な図体が音をたてて倒れる。
一息ついたソフィアはため息交じりに汗を拭って
「さっさと解体して先へ進みましょう。」
と言った。
解体するのは俺だけなのにうちの義妹は一番面倒臭そうなんだよ!?
この後は知っている森の景色だったのでワイルドボアの解体を終えて掌より小さい魔石だけを回収したあとはスムーズにに森を抜けることができた。
村に近づいていくと村の入口のそばで茶色の短髪の男が煙草を吸いながら石に座ってくつろいでいた。
案の定コーラスさんだった。
「てっきりアンセム坊やの寝坊のせいで日入りまで待つ羽目になるかと思ったが案外早く帰って来れたようだな。」
真面目そうな雰囲気を作り出しながらこの男は、落ち着いた声でアンセムをからかう。
「本当にアンセム坊やは世話が焼けるんですよ〜。」
ソフィアもコーラスさんの悪ノリに便乗して俺をからかい始めた。
「うが〜!!えるせぇー!!!」
あはははは
ドッと笑いが起こる。
「さて、冗談はそこまでにして今日でお前の修行は終わりだ。
後は成人の儀式をするだけだ。
ソフィアの師匠の酔っ払い女は朝から酒飲んでるから、酔いが覚める頃の夕方から始めるぞ。それまでは村でゆっくりとするんだな。」
そう言って愉快そうに俺をからかって笑いながら、コーラスさんは煙草の煙を微かに残して村の方に戻っていった。
「俺は剣の素振りをするがソフィアはどうする?」
「久しぶりにたくさん歩いて疲れちゃった。家でお昼寝するわ。夕方になったら起こして頂戴。」
夕日が傾きだして成人の儀式が始まった。
ソフィアの師匠で父とともにいくつもの戦場を渡り歩いた戦友の魔法使いであるソルティアが魔法陣を描き、俺を座らせた。
ちなみに魔法使いとは魔術士がかなりの鍛錬を積んで全ての上級魔法以上を使えるようになったマジックマスターのことを言う。
体系はスリムで胸も大きく黒髪の美人だ。豊満で20代後半の見た目なのに年齢はなんと45歳だという。
まったく、驚くべきことだ。
本人曰く酒の功名だという。
絶対に嘘だ。
そんなソルティアは酒瓶を口に寄せてグビグビ音を鳴らしながら、成人の儀式に使われる呪文のようなものを唱えている。
―世を創りしセルビアよ 今ここに舞い降りたまえ―
人の子が旅立ち そなたを祝福せん
大いなる力を与えし大地 空を立ち上がらせ
飛び立ちのとき ここに一つの力が芽生えよう
さあ 力を与えよ オーランド
―そなたの生命の息吹が 我らの力にあらんことを―
儀式が終わる頃には太陽が沈みかけていた。
成人の儀式が終わると、見届けていたコーラスさんが近づいてきた。
「4年間お前は努力し続けた。これからも修行を続ければお前はこれからもっと強くなる。そしてお前の偉大な父をいつか超える時が来るだろう。成人おめでとう。」
そう言って、父と母の指輪を渡してきた。
胸が湧き上がる気持ちだった。
その後俺の成人を祝って宴が開かれた。
久し振りのご馳走に手を進めながら村を見渡すと4年前よりも村は豊かになっていたことに気づいた。
話を聞くと父の友人達であったコーラスさんやソルティアなど父にお世話になったらしい多くの傭兵達がこの村を拠点にしていたらしく、
色々村の手伝いをしてくれていたらしい。
俺はコーラスさん達に感謝の念でいっぱいになったのと同時に父に凄さを感じた。
華やかな宴が終わった後、俺は膨らんだ腹をさすって祭りの後の余韻に浸りながら家の屋根の上できらめいている星たちを眺めていた。
すると誰かが梯子を登る音が聞こえてきた。
「兄さん、やっぱりここにいたのね。」
「ここは俺の定位置だからな。」
そう言ってソルティアにニッコリと笑いかけると、ソフィアは帽子を外しながら近づいてきて俺の隣にすわって俺の胸に顔を寄せた。
「じゃあ私はお兄さんの隣にずっといるの。しわくちゃのおばあちゃんになってもね。」
「ああ、頼りにしてる。」
星を眺めている二人は小さい子供のと重なっていた。
「俺達、あの時よりも強くなったよな?」
「強くなったわ。けど…。」
「けど、なんだ?」
「まだ自分たちの身を守るだけの力しかないわ」
「そうだな。もっと強くならきゃな。」
「…………。」
「…………。」
沈黙の中風が優しく吹いて空の星を流している。
遠くでは傭兵達が焚き火の周りで酒を飲んで騒いでいる声が聞こえた。
「さて、明日は出発よ。朝早いんだから早く寝なさいよ。もう寝坊助のアンセム坊やじゃないんだから。」
そう言って俺の頬にキスをして立ち上がり、僅かにに紅い顔をしながら梯子を下っていった。
そのときのソフィアは最近成人したばかりの十四に似つかない色気があることに気づいて思わずドキッとしてしまった。
義妹に変な虫がつかないか心配になってしまった。
「今夜はあまり寝れないかもしれないな。」
そう言って、俺は梯子を降りていったのだった。
次はアンセムが目覚める話です。
日曜日の0:00に投稿します。
楽しみに待っててくださいね〜。




