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英雄の送人  作者: SOGEKIKUN
第一章〜深淵なる洞窟〜
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⑫「蒼い魔石」

アンセムの立てた作戦がうまくいきそうになったとき、ヒュドラの思わぬ攻撃にアンセムは窮地に陥ってしまう…。


是非楽しんでいってくださいね!!!


一瞬の出来事だった…。


俺がヒュドラに噛み殺される直前に何か柔らかいものが横から飛び出てきて俺を押し出した。


押し出された俺は横に吹っ飛んでヒュドラの牙から逃れる。


なっ、何が起きた!?


俺がいた場所を見てみると、魔物が倒されたときの独特な匂いと、綺麗な青色の大きな魔石が転がり落ちているのが分かった。


 アオ?


 嘘だろ?


 「アオ!?」


 誰か、嘘だって言ってくれよ。


俺の悲痛の願いとは裏腹に周りを見渡して見てもアオの姿が見当たらない。


青い魔石がヒュドラの足元にあるだけだ。


どこだ…、どこにいる?


「アオ?」


オールや他のオーガ達の顔で全てを理解した。


そうか、アオは死んだのか…。


「グルルルル」


ヒュドラが獣のような唸り声を上げた音に反応して、顔を上げる。


そうだ…。こいつがアオを殺したんだった。


アオが殺されたのに不思議と頭の中は冷静であいつをどうやって殺すのかだけを考えていた。


体がマグマのように熱いのに心は氷よりも冷たく感じられる。

 

ヒュドラは雰囲気がいきなりに変わった男に対して警戒して攻撃を仕掛けなかったが、

我慢を知らなかった竜はついに火球を打ってきた。

 

少しの間、男は微動だにしなかったが、

火球が来ることがスイッチになったのか、

飛んでくる火球目にも止まらない素早い動きで避けて、後にまるで瞬間移動に感じるほどのスピードでヒュドラに迫る。


ヒュドラは男の動きの変化に驚いたが空かさず残りの3本の首を動かして、

牙を男に向けて噛み付こうとした。

対して、男は全ての攻撃を瞬時に拳で弾き、

そのままヒュドラの懐に忍び込んだ。


そして、剣を刺していた背中に飛びの乗り、勢いよく剣を引き抜いた。


剣を引き抜いたと同時に、血が飛び出して血の雨を作り出している。


ヒュドラの悲鳴が洞窟内に轟きわたる。


ヒュドラの悲鳴はオーガたちが耳を塞いでしまうくらいには大きいが、

男はその轟音にお構いなしで先程引き抜いた剣で空気を切るかのように、剣や拳を使って高速で攻撃していく。


本来はヒュドラの胴体は非常に硬く、再生も早いので攻撃するうつけはいないのだが、

男は首、胴体関係なくまるで布を切り裂くかのようにたやすく見えるかのように攻撃していつた。


 再生を繰り返して、中々終わらない激痛に鳴き叫びながらヒュドラは再生中の首で反撃しているがそれも一瞬で弾かれてしまう。


男の攻撃を止める術はないようだ。


あたりに血が飛び散り、血の池を作っていった。

もう、これは闘いではなく虐殺のようだ。


血の海が広がっていた。


その光景をオーガ達は呆然としながら見守っている。


初めの頃、ヒュドラは悲鳴を上げながら反撃していたが時が経つに連れてヒュドラの原型が削れていき、

最後にはオーガ1体分の大きさになり、再生が止まった。


再生が止まっても、剣が折れても、男は攻撃の手をやめない。


ついに跡形もなくなりそうになったときに、肉塊は崩れ去り、とてつもなく大きな紅い魔石と多少くたびれながらも綺麗に輝く大剣が転がり落ちた。


 本来勝利を掴んだオーガ種族は勝鬨を必ず上げるとのだが、このときだけは誰も声を上げない。

オーガ達の仲間の敵、やっと外に出られる喜びが湧き出てくるはずだが、あるのは恐怖の念と尊敬の念だけだった。


ヒュドラが完全に死んでしばらくした後にやっと男の攻撃が止まった。


一時前まで激戦が繰り広げられていた洞窟内は、静まりかえっていた。


男は何も喋らずに折れた剣を上に掲げた。


(アオ。)


オーガ達は男が折れた剣を掲げるのと同時に反動のように勝鬨を上げた。


頭が回らない。


アオは結局生きてるのか?ヒュドラは倒したのか?


男は倒れた。





「兄さん!起きてってば!!もう朝よ!!!」


魔法使いとして一人前の証である帽子を被った少女が藁で寝ている少し子供っぽさを残した、大人になりきれていないような青年を起こそうとしている。


「う〜ん…、もうちょっと…母さん……。」

「誰がお母さんよ!!」


青年の寝坊助な声に突っ込んでみても青年は起きないようだ。


「ゔ〜ん…もう少しだけぇ。」


だらしない格好のまま、寝ている姿に少女はため息を出して、手を青年の少し上にかざす。


「クリエイトウォーター」


少女が詠唱無しに呪文を唱えると勢い良く水が噴き出し、大量の水が青年を襲う。


ドバーーー


「オワーー!!?!」


「何すんだよ!?馬鹿義妹!イテッ!ッ〜〜〜!!」


青年は驚き起きて、非難の声を上げようとするが近くにあった木の柱にぶつかって声にならない悲鳴を上げた。


そんな青年の災難にお構いなしで少し大人びたようすの彼女は声を上げる。


「今日はコーラスさんに一人前の儀式を受けるんじゃないの?寝坊してるようじゃまだまだ儀式は早いんじゃない?アンセム坊やはお昼までおねんねでちゅか〜?」


「うるせぇーー!お前だってつい先日成人になったばかりじゃねーかよ!!」


「それでもアンセム坊やとは違って、成人してます〜!!」


く〜〜、グーの音もでねえ!!


「寝ぼけてないでさっさと着替えて!!遅れたらコーラスさんに絶対怒られるよ!」


修行中よく聞こえたコーラスさんの怒鳴り声が頭の中で再生されながら、半分寝ぼけたまま着替えを済ませて父の形見であるバスターソードを手にとる。


身支度が出来る頃には、朝ごはんのいい匂いが漂ってきて目が完全に覚めてきた。


4年間の修行の間、朝ごはんは必ずソフィアがいつもご飯を作っていが一度もソフィアの味に飽きたことがない。


ソフィアの作る飯はものすごく美味しいのだ。


鳴るお腹をさすりながら小屋を出ると、ソフィアが丸太の上で座りながら焚き火の上に母さんがよく使っていたフライパンをかざして卵とベーコンを焼いていた。


眠気覚ましに周り見てみるとを辺りは穏やかな空気に包まれていた。


草原が爽やかな涼しい風に吹かれゆっくりと揺れている。木は少ししか生えていない。


空気は薄いがとても綺麗で透き通っている。


少し先の景色を見ると霧が風に流されながら遠くの平地に向かって降りていく。


近くにある源水の湧き出る池から水鳥の心地よい鳴き声が微かに聞こえてくる。


アンセムは綺麗な空気を胸一杯に吸い込んで、深呼吸をする。

どうやら朝ごはんが出来るのはもう少し時間がかかりそうだ。

 


 アンセムは朝ごはんの準備をしているソフィアに顔を洗いに行ってくると声をかけた後、ゆっくりとした足取りで獣道を進み湧き水を目指す。


勿論自分の身を守るための武器は忘れない。


ここがいくら魔力が少ない土地だとしても油断はできない。


どんなに魔力が少ない土地にも強力な魔物は必ず生息しているからだ。


 アンセムが歩き始めてから数分が過ぎたところに湧き水はあった。顔を洗いながらこれまでの出来事を思い出す。


父さんが死んだのを聞いた翌日にコーラスさんに修行の稽古を頼んだこと。


父さんのような立派な傭兵になるために


俺が修行し始めてから半年頃に、母さんは重い病気にかかってしまい、1年足らずに死んでしまったこと。


母さんが死ぬ間際に今まで知らなかった父さんの夢を託されたこと。


平和な世の中にするという夢


4年間の修行は辛く、厳しいもので何度も逃げ出したくなったが、頑張って踏みとどまって歯を食いしばりながら努力し続けたこと。


ソフィアが魔法を習い始めて1年足らずで一人前の魔法使いになったこと。


この長いようで短かった4年間はたくさん辛いことがあったが一つ一つ俺を成長させてくれた。


これで二度と大切な存在を失わせなくて済むんだ。


そんなことを思っていると、ソフィアの声がする。


「兄さ〜ん、朝ごはんの準備ができたわよ。」


「あぁ、今行くさ。」


「それじゃあ、行ってくるよ…。父さん母さん。」


そう言って青年は元気よく立ち去った。


青年が話しかけた場所を見るとある二つの墓石があった。


その墓石は決して大きくも豪華な装飾もなく、質素な作りだが、太陽の光がよく当たるこの場所では幸せそうに感じさせてくれる。


二つに並んでいる墓は穏やかで優しい空気に包まれながら、立ち去る青年の後ろ姿を見守っているかのように見えた。




次回の投稿は来週の月曜日の0:00です。

楽しみに待っててくださいね。



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