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英雄の送人  作者: SOGEKIKUN
第一章〜深淵なる洞窟〜
12/77

⑨「オーガ」

ボロボロになりながらなんとか第三層を抜けられたアンセムだったがそこに忍び寄る集団がいた…。



今回は4000文字以上です。頑張りました!!!

是非楽しんでいってくださいね!


 クリスタルが放つ光が洞窟を薄暗く照らしている中、男は無限に続くかのように感じる迷路を一言も発さずに黙々と歩いていく。


アンセムが唯一着ていた服は擦り切れ、傷だらけでボロボロになっていた。


目の下に隈がはっきりとあらわれている。

アンセムは疲弊しきっていた。


第三層の砂漠で時々現れる魔物を狩り、食いつなげてきたが、残りはもう一日分しかない。

周りには岩ばかりが点在するのみであり、食料になりそうな植物や魔物もいない。


渓谷を登れば植物は所々に植物が点在しているが、壁を登るのに便利なロープも切れてしまい、使い物にならなくなっていた。


アンセムに焦燥感が襲いかかる。


 そんなアンセムに対して、隣を跳ねながら進むスライムは楽しそうにしている。


さすが魔物だ、魔力があるところではどこでもピンピンしてるらしい。


そんなスライムを羨ましく思いながらも、その元気が移ったのか疲れを少しごまかすことができた。


「アオ、回復してくれ。」


 ポーションは傷にしか効果がないが、少しだけ疲労回復能力がある。


緑色の温かい光が男を包み、疲れを癒していく。


アオも回復をするのに体力と魔力を使う。

だから、できるだけ手持ちの低級の回復ポーションで済ましていたが、それも4日目で切れてしまったため、残りは中級の回復ポーションだけになってしまった。


第三層や第四層になると魔物のレベルが上がってきて、アンセムも無傷で済まなくなってきたからだ。


それっきり、男はアオに頼り切りになってしまった。

アオがいなかったら俺はとっくに力尽きていたのかもしれない。


回復を済ましたアオは全く疲労を見せずに未だに元気そうに俺の周りを跳ね回っている。


(全く、こういうとき魔物は羨ましいぜ。)


様々な魔物と戦っていくたびにアオに魔石をあげていった結果、

今のアオはEランクからDランクくらいには強くなった。


今のアオなら、小さなゴブリンの群れがが出てきても平気な顔して蹴散らしてしまうだろう。


頼もしい相棒がいるのは今の状況では喜ばしいので、ただのスライム種にしては強くなりすぎていることに目を瞑っておこう。


コツコツと足音を鳴らしながら静かな洞窟の中を進んでいく。


暫く何の気配も感じなかったが、いきなり強い気配が複数体迫ってきて、冷静に素早く身構える。


(誰だ?)


姿を現したは大振りの大剣や斧を持っていたオーガの集団だった。


オーガ達は俺が身構える合間に素早く俺達を囲む。


なんて素早い身のこなしだ。


一人の戦士として感嘆の声を上げながらも同時に警戒を強める。


オーガ達の身長は5メートルもあるのに素早い身のこなしができる強敵なのだ。


俺は初めて出会う強敵の集団との間に緊張感が溜まっているのをヒシヒシと肌で感じる。


武器を持っている手は軽い石なら軽く握って砕いてしまうくらい強靭だろう。

赤い腕は筋肉が盛り上がっていて、血管がはっきりと浮き出ている。


お互い、強靭な戦士なことをわかっているらしい。


相手の出方を見分けるためお互いに沈黙を守っていいた。


「「……………。」」


数分の時間が経った後、オーガ達は何故か安心したかのように警戒の色で固まっていた顔を緩ませ、それぞれの武器をおろしている。


どうやら、即時戦闘は避けられたらしい。


オーガのランクは一体でB以上ある。

いくら俺でも複数で相手をするのはきつい。


アオも凄まじい空気が緩やかになったのか、プルプルと揺れていたのが止まった。


俺も剣を鞘には収めなかったが、構えを解いて剣をおろした。オーガ達は何故か全然警戒していない。


なんでだ?


心の中の俺の疑問に答えが帰ってきた。


「ナンダ、仲間カ。」


どうやら俺を仲間だと思ったらしい。


そんなに俺はオーガに似てるのか?






オーガの集落は小規模だった。

だいたい40体程か?


俺はオーガの集団に連れてこられて集落に来た。


何だかんだいってオーガたちと仲良くなってしまったのだ。


なぜだ?なぜこんなにも馬が合うのだ…。


自分でも仲良くなりすぎて怖い。


オーガは人間に敵対的だと聞いたことがあったが、仲間内だと友好的なのがわかったため、ひとまず()()()はしないですむとと安心すした。


「お前、あの後はぐれてたノカ?」


「良く一人で頑張ったナ。」


オーガ達は俺に様々な質問をぶつけてきたがいくつか良く分からない質問がいくつか飛んてきた。


「なんだ?あの後って。」


「何ダ?寝ボケテルノカ?マア、イイ。オイ、ソコノお前。族長二シラセテコイ。」

そのオーガが比較的若そうなオーガに声をかけると、その若そうなオーガの集落の中央の一番大きい建物の方向に駆けていった。


「ヨク、一人デ生キテイタナ。あの崩壊ノ後デ。」

「崩壊?」

「アア、ソウダ。」

(いったい何が起こったんだ)


俺がその質問をする前に話は進んでいく。


話を聞くとどうやらオーガたちが言うにはお出迎えの宴が開かれるらしい。 


オーガの集落に着くと、デカい柵に囲まれた大きな家がたくさん見えた。


流石オーガの集落だ。全体的に人間より色々スケールが大きい。


「イクゾ、早ク歩ケ。」

「ああ。」


門を潜ると集落の住人が出迎えてくれた。


俺と同じ背丈ぐらいの若い女のオーガから、歳が明らかな高そうなオーガまで、俺を物珍しそうに見ている。


「何ダ。コンナ次期ニ新入リカ?」

オーガ達のジロジロという目線にいつの間にか俺の腰袋に入っていたアオがふるえている。


(大丈夫だ。アオ。もしバレたら全速力で逃げるさ。)


「何ダ。仲間か?」


一人の男のオーガが隣の杖を持っている強面のオーガに話しかけた。


「ソウラシイ。」

強面のオーガは髭を探りながら不思議そうにこっちを見ている。


当たりを見回してもオーガたちは一人も警戒している様子もないようだ。


オイオイ。一人ぐらいは俺がオーガじゃないって疑ってくれても良いんだぜ?


居間に連れてこられて、座敷の上に座らされた。


数分の時間、アオと一緒に一人で待たされていたら、台所から数人の女のオーガが料理を運んできた。


男のオーガと違って女のオーガは全体的にスリムだったり、背丈が小さかったり。


意外と人間に近い見た目だ。


見ていると、すごいスペースで料理やら皿や酒が運ばれてくる。

主に酒が多かった。


オーガだもんな。

当たり前か…。


オーガはドワーフの次に酒が好きだ。


俺の知っている逸話では、

昔、ドワーフの国の王様と旅のオーガが飲み比べをしたことがあったという話や、

オーガを討伐するためにわざと酒をお供え物にして酔わせてから殺したなど。


とにかく、オーガは酒が大好きなのだろう。

まあ、俺も大好きなのだが。


そんなことを思っているうちに続々と料理が運ばれて、集落の殆どのオーガ達が集まってきた。


「カンパイ!!」


オーガ達が祝杯を上げる。

大勢のオーガの宴会はなんだか豪快で勢いがあった。

女のオーガ達も一緒に酒瓶を傾けて宴に参加している。


嗜むように飲んているが、実際は一度にグビグビと言っている。


なんだ、俺も負けてられないな。


俺は早速食べ物に手をつけ始めた。

どんな食べ物が出るのか恐れていたが出された食べ物はそんなに不味そうではないようだ。


見ろ。


アオなんて、普段食べ物なんて口にしないのに一心不乱にオークの肉にかぶりついている。


お前。その肉はつい先日まで震え上がっていたアイツラの肉だからな?


肉になっちまえばどうでもいいけど。


意外にもオーガたちの文化は優れていて、料理の味付けもしっかり次第。


人間でも食べれるものは沢山あった。


そして、何よりも良さそうな酒がいくらでもあった。


(久しぶりの酒だ!!)


酒力は強かったが、それでも美味な酒だったので酒瓶を大きく傾けて夢中で飲む。


隣で酒を飲んでいる、さっき見かけた強面のオーガの方向に振り向いて、ある疑問をぶつけてみた。


「なあ、あんた。この酒は何で出来ているんだ?」


その強面のオーガは酒瓶をゆっくりと傾けた後、こちらを見て、


「蜂蜜ヲ発酵サセタ物二"フォーレストスネーク"ヲ漬けタモダ。」


ただそう言って、再ビ酒瓶を傾けだした。


(ホウ、そんな酒があるのか。辛味が強いがこれも中々いける。この強面のオーガが夢中になるのも納得だ。)


夢中で酒を貪る俺の元に40体のオーガの中でも一回り大きなオーガが近づいてきた。


格好を見るに、この集落の族長らしい。


「お前も巻き込まれたノカ?」


いきなり族長が聞いてきたその質問に、俺は再び疑問を思い浮かべる。


「どういうことだ?」


やっと聞きたかったことを俺は酒瓶をあぐらをかいている足の横に置く。


俺の質問にオークの族長はこう返す。


「俺達はいつもどおり森で暮らしていたんだが、

突然周りが動き出して岩が伸びていって、気づいタラ集落ごとここにイタ。お前外の者だったノカ?」


他のオーガとは違って、意外と優雅な言葉だった。

族長に選ばれただけであって、他のオーガ達よりも知性が高いのだろう。


たが、そんな丁寧な言葉でも、全く理解が出来なかった。


「いきなり洞窟が地上にできたとでもいうのか?」


「ソウダ。」


その後あれこれ聞いてみて、

わかったことは大きな地響きが起きてから起こったこと、何度もここを出ようとしたが、首がいくつもある大きなトカゲ(多分ヒドラだろう)に阻まれて、でられないことだった。


ヒドラは凶悪な魔物だ。


いくつか種類が分かれているが、どれもSランク以上の脅威だ。

国が全力で動いてもギリギリ討伐できるような魔物だ。

いくらオーガが集団でかかっても倒すのは困難なのだろう。


ここを出るのに1体でも戦力が必要で行き詰まっているとき、すごい戦士の匂いがしたので確認して見たところ、俺達を見つけて仲間を見つけられたと喜んでいるようだ。


何度も言うが俺はオーガじゃない!

ちゃんとした人間だからな!!!


ちょうど明日に出発するようなので、今日の宴会はここでお開きになった。


チッ、もっと酒を楽しみたかったのに…。


用意された寝床は少しボロかったが俺が使っていた寝床より居心地が良かった。


なんとアオの分も用意されていた。

アオは美味しいご飯も、居心地も良い寝床を用意されてご満悦のようだ。


俺は嬉しそうに跳ねているアオを後にして近くの滝に体を洗いに行く。


外を出ると虫の鳴き声が聞こえてくる。


裸足でも歩けるくらい、ツルツルの大理石の上を歩く。これを作ったオーガはさぞ手先が器用だったんだろう。


 しばらく道を歩いていたらオーガたちが集落の広場で稽古をしているのが見えた。


耳を澄ますと、遠くから金属どうしがぶつかる音が聞こえる。


オーガの戦士として一人一人のレベルは高く、戦力だけなら一国の軍隊を軽く捻り潰すことは容易に見えた。


俺の目線に気づいたオークたちが俺に手を振っている。俺も手を振リ返す。


あんなに人間に恐れられているオーガが無邪気に見えた。


うん?

稽古に誘っているのか?


疲れていなかったら是非稽古に参加したいところだが、残念ながら明日はヒドラと戦うので疲れを癒すために遠慮することにする。


俺は気づかないふりをして再び道を進み始める。


一度振り返ってみるととオーガ達は稽古の続きを始めたようだった。


広大な洞窟の中を見渡すとあたりて家の光が少しずつ消えていくのがわかる。


上を見るとものすごく高井天井で光る、きれいなクリスタルの光が星のように見えた。


その調子で久しぶりにのんびり歩いていくと、

ザザザーという大きな音がが聞こえてきた。


洞窟内で流れている小さな滝だった。


そこでは族長が一人でモーニングスターを振り回していた。


族長は普通のオーガより一回り大きい。


その巨体が振り回すモーニングスターの威力は計り知れない。


俺だって飛んでくるトゲのついた鉄を避けるので精一杯かのように見えた。


一人で練習しているのは集落のオーガでは相手にならないからだろう。


 俺は疲れているはずなのに、そのオーガの族長のきれいなモーニングスターの動きに興奮してしまった。


あいつと戦ってみたい。


そう言って、族長の前に踊り出ていった。

「俺と手合わせ願う。」


「イイダロウ。」


オーガの族長は静かに俺の提案に乗る。


そしてその族長は名を名乗った。


「私の名はオール、ダ。」

「なぜ名を?」


俺のその質問に不思議そうにオールが答えた。


「知らなかったのか?オーガのクセニ…。俺達は、決闘や手合わせのときに名を名乗り合うノダ。お前も早く名をイエ。」


俺は偽名を名乗ろうとしたが一度途中で口をつぐんだ。


一瞬迷ったがやっぱり本名を名乗ることにした。

何故か分からないがオールには真剣さを感じられたからだ。


「アンセムだ。」


偽名を名乗ることは失礼だろう。


「ソウカ…。お前の名は アンセム ダナ。」


2人は静かに相手の出方を伺い合う。

近くで流れている滝の音が段段と強くなっているように聞こえる。


数秒先にオールが動き出した。モーニングスターを振り回すようにして勢いをつけて、俺に振る。


それを俺は後ろに下がり、避けた。


オールが振り上げたあとにできる隙を俺は使うとする。


しかし、オールはそれは対策積みのようですぐに体勢を変えて無理やり逆方向にモーニングスターを振り返す。


人間の筋肉ならばその負荷に耐えられないだろうが彼はオーガである。そんな無茶動作でも十分耐えられるのだ。


その行動をお見通しだった俺はまるでわかっていたかのように上にとんで避ける。


出来た隙を埋めるように、今度は拳が飛んでくる。


俺は急いで避けて、距離を取る。


相手も距離を取る。


お互いに黙って見つめ合う。


数秒後、二人は沈黙の中ぶつかり合い、水のバシャバシャ音だけが、水面に響際立った。


実力はほぼ互角だろうか。


お互いに攻防を繰り返している。


唯一違うのは俺とオールの経験の差だった。


俺は自分より大型の敵と幾度も戦ってきたが、

オールは自分より小さい強敵とは今まで戦ったことがなかったらしく、

俺の動きに若干遅れているようだ。


俺はその隙を見逃さなかった。


オールの足をすくい上げて転ばせ、転んだオールの首元に、俺は剣先を当てる。


一瞬の静寂が流れる。


「降参ダ。」


片手をあげて、笑顔でオールは降参した。

2人とも息が上がっていたが、どちらも楽しそうである。

オールも久しぶりの好敵手に出会えて嬉しそうだった。


「もう一本タノム。」

「いいぞ。」


滝の音が勢いよく響く中を2人の漢はお互いの武器を鳴らすのだった。




しばらく武器を交えあった後、

疲れの無いいきいきとしている2人は滝のような汗を洗いながらこれまでの境遇を語り合った。


実は俺はオーガじゃないことなどや、人間なんだということ。


俺の告白に最初はビックリしていたオールだったが、


「一度剣を交えた者同士は兄弟ダ。だから、たとえ種族が違えども仲間には変わりはナイ。」


と言ってくれた。

オーガってのはとことん戦士なんだと思った瞬間だった。


その後は、オールの番だった。

幼き頃から他の子供のオーガよりも大きくて、成人してからは自分より大きな生き物をみたことがないこと。

集落の長になってからは今まで負けたことがなく人生がつまんなかったこと。


俺に負けたことで人生が楽しくなったことなど。



楽しそうに語り合う2人は生まれや種族も全く違うが、まるで本物の兄弟に見えるのだった…。


こういう兄弟の絆って言いですよね〜。

私もこんな出会いが来ることを願っています。


次回は、土曜日の0:00に投稿する予定です。

次回もお楽しみください!!!

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