⑧「オークの再襲来」
「大英雄アンセム=ウォーカーはオークと深い因縁をもっていたのだろう。故に彼がいるのなら近くにオークあり、と言われていた。」
後の王であり、賢者アレクサンドルは研究の後にそう語ったのだそうだ……。
どうぞ、お楽しみください!!
父さんが死んだ…。
少年にとって幸せな日々が急に崩れ去っていくのを感じていた。
どうして……?
あんなに強くてたくましかった父さんが死んだ?
急に父さんとの記憶が頭の中に浮かんできた。
それは僕がワイルドボアという大きな魔物に遭遇したときの記憶だった。
それは大雨が降っていたとき…。
― ザーーー ―
窓の外で雨が降っているのを少年と少女がじっくりと眺めている。普段は落ち着きのない二人だが一つ一つの雨粒を数えるようにジィーと雨風が激しくなる様子を静かに観察している。
「お父さん遅いね。」
少女のほうが少し、心配そうにいった。
落ち着きのある声をしていたがその言葉に不安が混じっていることに少年は気付いている。
少年は心配させまいと何か良い言葉を思いつかうとしたが、少年自身も不安でいっぱいだったので思いつけない。
結局何も思いつかずに、しばらくしてから、
「遅いな。」
としか言えなかった。
今日は母さんの誕生日だ。
父さんは母さんの誕生日には必ず仕事を休んで晩御飯のご馳走を狩りに行く。
いつもは昼前には帰って来るだろうが、雨が強くなってしまいなかなか獲物が見つからないのだろうか?
夕方の時刻になっても帰ってこない。
母さんも落かない様子で編み物をしながら父さんを待っている。
しばらく待っても父さんはなかなか帰ってこなかったので少年はある決意をする。
「僕、父さんをお迎えにいく。」
まだ声変わりのしていない少しかん高い声が部屋に響いている。
「雨の日は、ダメってお母さんが言ってたんじゃない?」
少女は咎めるように言うが、顔では少しワクワクしているように見える。
「シー。母さんに秘密でね。」
少年が人差し指を口に押し当てると、少女は笑顔になった。
「なんか、楽しそう。」
「シー、お母さんには秘密だね?」
そう言って少女は先ほど少年が取っていたポーズを真似て口に人差し指を当てた。
「あぁ。秘密だよ。」
母さんにバレないように急いで外に出る準備を整えて外に出ていく。
外はすごい雨だったが、二人にとってへっちゃらだった。
父さんにこれくらいの雨でも平気だと自慢したかったからだ。
強風と激しい雨に打たれながら、フードが風に飛ばされないように深く被りながら森と村の堺の入り口に建っていた。
あたりは静かで強い雨の音が響いてくる。
― ザーーー ―
「お父さん、まだかな〜?」
「父さんならきっとすぐにおっきな動物を抱えて帰ってくるよ!!」
「うん…。」
その時、森からガサガサと音がする。
二人はその音に警戒して振り向くと、そこには普通のイノシシより二倍の大きさのワイルドボアがいた。
二人とも恐怖で足が動かなかった。
ワイルドボアは2人を見るとすごい勢いで迫ってくる。
2人とワイルドボアとの距離がどんどん縮まり、目前まで迫ってきた。
(もうダメだ!!)
ソフィアを抱いて思わず目をつぶってしまう。
ところがいくら待っても何も起きない。
恐る恐る目を開けると、そこには父の後ろ姿があった。
あれだけ降りしきっていた雨は止んで、夕日が森に差し込み始めた。
「父さん!!」
父さんがすごい勢いで進んでいたワイルドボアを体当たりで止めたらしい。
ワイルドボアは痛そうにうめいて倒れていた。
父さんはゆっくりとした足取りで倒れて呻いているワイルドボアに近づいていって、バスターソードでトドメを差した。
「ブヒー!?」
ワイルドボアが死に際の叫び声を上げる。
ワイルドボアに差したバスターソードをそのままにして父さんは僕らの方に振り向いて黙って向かってきた。
てっきり怒られるかと思ったが、父さんは僕らを黙って抱きしめたのみだった。
その後の1日はあっという間だった。
泣いているソフィアを慰めながら家の帰路を歩いて、母さんに泣いて怒られて。
その後、家族全員でご馳走を食べた。
ご馳走を食べる頃には、ソフィアも泣き終わって笑顔でワイルドボアの肉を頬張っている。
母さんはいつもどおり世話焼きそうにソフィアの汚れた口をタオルで拭いている。
「ごめんなさい。」
僕は罪悪感に耐えられなくて口を開いた。
その言葉に母さんと父さんは顔を合わせて頷き合う。
すると父さんが、
「確かに、軽はずみな行動で自分自身とソフィアを危険に身を晒させた。だがお前は最後までソフィアを身をていして、守ろうとしていることは誰にも出来ない、凄いことだ。」
「そうよ。ソフィアもお兄ちゃん格好良かったって影で言ってたのよ。」
「母さん!?」
義妹の焦り声と同時にドッと家族で笑いが起こる。
あぁ…、いつまでもこんな日々が続けばいいのに。
だが、そんな日々はもう戻ってこない。
「嘘だ!!」
「お兄ちゃん、待って!」
義妹の叫び声を無視してコーラスさんの隣を黙って通り抜ける。
僕は父さんの死という現実を受け入れられなくて、家を飛び出してしまっていた。
―――――――――――――――――――――――――――――――
「ペシペシっ!!」
クソッ、またかよ…。
嫌な夢から目を覚まし、現実に戻る。
オークの執念深さは本当だったんだな…。
アオに起こされて、二度と顔を見たくなかった奴らに囲まれていた。
数は前の二倍くらいいる。
まじでこいつ等しつこすぎるんだよ。
「よお〜!!また豚肉になりに来たのかぁ?仲間みたいに。」
疲れが溜まり、酷い顔をしていると思うがそれを悟らせないくらい元気な声で盛大に馬鹿にする。
するとオーク達は怒り出して、
「ピギィー!我らの同志の敵!!」
「よくも我らの同胞達を殺してくれたな!!!」
「この恨みがはらされるまでこの復讐は終わらない!!」
「たとえオーガの仲間だとしても私たちはお前に復讐する!!」
ピィーだのなんだのうるせえわ。
こっちは眠いんだよ…。
ふんっ…、いいだろう。こっちだって考えがある。
「お前ら俺がオーガだっての行動だよなぁ?
この俺様が他のオーガと全く別の行動をとっていたと思うのか?」
お前らの嫌いなオーガってやつを利用してやる!!
オーク達は俺の言葉に不安な顔をするがそのうち、
一体のオークが勇気を出すように高い声で、叫んだ。
「ピギィー!そんなの嘘だ!!周りを見たが、お前の仲間は見なかったぞ!?」
一体のオークが勇気を出して発した言葉にオーク達は再び勢いづき、ピギィーなのピギャーだの鳴り出す。
「アッハッハッハ!」
俺の笑い声に再びオーク達は静まりかえる。オーク達はこいつ、まだ何か隠しているのか?と言っているような顔をしている。
「お前らは馬鹿か?俺達はお前らよりも頭がいい!!お前らが周りを見回してすぐに見つけられるように隠れていないのさ…。」
勿論嘘だ。オーガの巨体でどうやってこの砂しかなく、障害物の全くない中でどうやった隠れるってんだよ…。
少し考えれば一瞬でわかるのだが幸いこいつ等は頭が弱い。
そのため俺の言葉を信じ切って、こんなに怯えている。
もう、ピィーなど控えめな小さい鳴き声しか聞こえなかった。
「見ろ!このスライムが水を上に吹き出したとき俺たちの仲間がきて、お前らを食べ尽くすだろう!!
やれ!スライム!!!」
アオが水を勢い良く吹き出す途端にオーク達はパニックを起こし、数刻もしないうちに足音以外残さずに消えていった。
最後の1体が転びながら走り去っていくのを確認して急いで拠点を引き上げてこの場から立ち去る。
さっさとクソッタレのこの階層からづらかろう。
そうして眠い目をこすりながら、夜明けの光に照らされながら男とスライムは再び歩きだした。
少しずつ体力を削られていくアンセム…。
彼を待っている自然の脅威はなんなのか?
次回の舞台は第四層です。
月曜日の0:00に投稿する予定です。
お楽しみに!!




