⑦「砂漠の第三層」
オークから逃げ延びたアンセム達はいつの間にか灼熱の砂の大地にいた。次々と変わる環境にアンセムは力を奪われていくのだった…。
楽しんで見ていってくださいね!!
「ゼェゼェ、ハアハア。」
「アチーナ………。」
二匹?は灼熱の砂の大地に囲まれていた。
さっきまでそこら中にあった木など、植物は微塵も姿を見かけない。
第三層はただ砂と雲一つ無い、きつく砂の大地を照らす太陽の空があるのみだった。
俺達は第二層でオークの群れに追いかけられていた。
トレントがオークに怒り狂って攻撃してくれたお陰で、やっとオークを撒けることができた。
そんなとき地面が光って景色がガラリと変わった。
さっきまで洞窟を通っていたはずなのに、ふと周りを見てみたら周りの風景は砂だらけに変わっていた。
どうなってんだ、このダンジョンは?
食糧は残り4日分、第二層で食糧を補給出来たが、補給できた分は数日後には腐ってしまうだろう。
実際は3日分あるくらいだろうか。
幸い、アオからいくらでも水が出てくるので、水不足にはならないだろう。
どうやら第二層のときに水を大量に吸っていたら少しの魔力があればいくらでも水を生成できるようになったらしい。
もう俺は驚かないからな!!
しばらく進んでみたが、一向に出口が見えない。
どうするのか。この後…。
少し疲れてきたので近くにあった6~8メートルの岩で休もうと、アオに声をかける。
「アオ、ここらで一旦休憩にするか!」
アオが頷くようにピョンピョン跳ねる。
やはり、アオも疲れていたのだろう。この暑さなんだ。適応能力の高いアオでも流石にきつかったのだろう。
近づいていくと急に岩が大きく揺れて砂がこぼれ落ち始めた。
な、なんだ!?
俺達が驚く合間に岩が動き出して、ゴゴゴゴと音を響かせながら立ち上がる。
岩だと思って近づいたのは、どうやらゴーレムだったらしい。
「アオ!!戦闘準備!!!」
俺の声にゴーレムはでてきてすぐ俺達に気付いて、岩でできた拳を振り下ろしてくる。
俺はその攻撃に剣を抜かず、とっさに避ける。
ゴーレムの装甲は魔力でコーティングされていて、物理攻撃が効きにくい。
そのくせ物量攻撃を得意とするので剣士にとってあまり出会いたくない相手だ。
俺なら力でなんとかゴリ押しでいけるが、それは俺の愛剣があるときの話だ。
スケルトンが持っていた、半分なまくらみたいな剣で切れるわけない。
多少なら俺も魔法が使えるが、初期魔法ぐらいが限度だ。
こんなことになるなら、面倒臭がらずソフィアに魔法の使い方、叩き込んでもらえば良かった。
俺が後悔している合間にゴーレムは今度は巨大な図体に似合わないほどの速さで腕で砂の地面ごと薙ぎ払ってくる。
後方に下がりながらギリギリ避けても次々とその巨体から来る広範囲の攻撃が続く。
アオも時々触手みたいに伸ばして、突いたり鞭みたいに攻撃してくれているが数トンもありそうなこいつには雀の涙程しか食らわせられていない。
かくいう俺も現在ダメージを与えてられていない。
状況は明らかにこちらが不利だ。
こういうときは逃げるが勝ちだ。
「アオ、逃げるぞ!!!」
そう言うと、アオは急いで俺の鞄の中に飛び込む。
アオが俺の鞄の中に入ったのと同時に、俺は一目散に逃げ出した。
俺は傭兵だ!!
人間相手のスペシャリストなんだよ!
冒険者じゃああるまいし、いちいち化け物の相手をしてられるか!!!
俺だって色々な魔物と戦ってきたが、一人で頻繁に襲いかかってくる魔物を全て処理できるのかってんだよ。
団員とともに戦って、全ての敵と言えるものに打ち勝ってきたアンセムには今一緒にいるのはこのゴーレムの前にはどうしても頼りにならなそうな、青色のスライムがいるだけだ。
幾千と言えるたくさんの戦に参加した男でもさすがにここまで来るとお手上げらしい。
彼は全速力で逃げる。
素早い動きのできるこのゴーレムだがあの質量だ。
スピードに限界があったのだろう。
アンセム達のスピードについていけないようだ。
ゴーレムとの距離が少しずつ離れていく。
獲物を逃がしてしまいそうになったゴーレムは諦めたのか、何か光を放っている。
何故か、急にゴーレムは歩く音を止めた。
一度余裕ができたので一瞬振り返って見て見たところ、怪しい光がゴーレムから伸びている。
その光は段々と俺に標準を定めているようで、走っている俺のに近づいてくる。
嫌な予感がするのは気のせいだろうか?
ゴーレムはどんどん放つ光を大きくしていく。
同時に段々と、ここらの空気が変わっていくのを肌にヒシヒシと感じる。
ヤバいッ!
危険だと判断した俺は咄嗟に今度こそ本物の岩の陰に身を隠した。
その時にゴーレムの放っていた光は解放された。
光線が放たれた途端に大きな轟音が砂の大地に響きわたる。
「ゴォォォ」
とてつもないエネルギーだ!!
数十秒間の間、ゴーレムによるエネルギーの解放は続いたが、やがて勢いが弱まって光が小さくなり、消えていった。
音がしなくなった後に、顔を上げるとすぐ近くにあった砂の地面が大きくえぐられている光景が目に入ってきた。
ヒェ〜!!
あたりは砂埃が舞って煙幕となり、周りが見えなくなる。
俺達が跡形もなくなったと勘違いしたのか、ゴーレムは満足したらしく、この騒動を放ったらかしにして、重い音を響かせながらどこかに去っていった。
一息ついたアンセムは鞄の中に入っていた小さな存在に出てもいいという合図を送る。出てきたアオは無事だったようで、どこも傷ついていない。
最近はツキがないな。
酷い目にあってばかりだ。
砂埃が風に乗せられて消え去る頃には、あたりは夕焼けの色が地面を照らしていた。
疲れが溜まっていたが暑さが和らぐ夕方はできるだけ移動したいので、アンセム達はまた足を前に進め始めた。
数刻ぐらいは歩いただろうか。
夕日はすでに地平線に沈みかかっていた。
そろそろ体中が限界を迎えていた。
さっきのゴーレムといい、遭遇して襲われたサンドワームといい、連戦に連戦を続けて体がガタガタだ。
何処か、休める場所は?
そろそろ拠点を作らなければいけないな。
俺は重い頭を無理やり上げて、周りを見渡した。
あ、有る!?
運良くオアシスを見つけられた。
げ、幻覚じゃないよな?
俺は砂だらけの腕を振り払って、目をこする。
汗が蒸発して出来た塩に目が入り、痛みに目がチカチカするがそれを我慢しながら見る。
完全に日が落ちていたら見つからなかっただろう。やっとツキがこちらに回ってきた。
完全に日が沈んでしまう前に急いで拠点を作り上げて、垂れる汗を拭うことも忘れて火打石で焚き火を作った。
冷えてきた空気に温かい空気が入り混じる。
少し休憩をした俺は、オアシスの水をアオの作った土製の器に入れた後、焚き火の火で沸騰させた。
普通は時間をかけて冷ますものだが、一刻も早くオアシスの水を飲みたい俺は、唯一お得意だった魔法を唱えた。
「水よ凍れ【グレイシアス】」
沸騰していた湯水がだんだんと温度が下がっていって、一部が凍りだした。
思えば、この魔法には色々助けられている。
今みたいにサバイバルに使えるし、戦闘中に相手の動きを鈍らす事もできる。
さらに、この魔法は使う魔力も節約できる。
魔力が少ない俺にとって、この上なく使い勝手のよい旅の相棒だ。
もちろん、今ここにはない愛剣のバスターソードの次くらいだが……。
俺は今はないバスターソードの念を首を降って取り消す。
アオご怪訝そうな顔をしている。
「なんでもないさ。」
何かを察したのか、アオは触手のように身体の一部を伸ばして俺の肩に置いた。
少しの時間が経って、3分の一ほど凍らしたところで、
俺はここで魔法を中断して、土製の器を焚き火の上から移動させる。
触ると少しひんやりていて丁度が良い。
俺は半分を水筒に詰めて中身をいっぱいにした。
そして、残りの半分を勢い良く飲む。
アオは自分の水を何故飲まないのか?
と、でも言いたそうで不満そうにしている。
別に特段魔力で作られた水が不味い訳では無い。
気分の問題だ!!
やはり自然の水の方が美味しいんだよ。
そういえばかなりの距離をこの砂漠で歩いたものだ。
そろそろ、次の階が見つかってもおかしくないはずだ。
そう思うと早くこの過酷な環境から抜け出したくなった。
そう思いながら、サンドウルフの肉をを焚き火で調理して、口に含めて水を飲んだばかりで栄養を欲しがっている体に送り届ける。
まあ、狼にしては不味くはない。
腹が膨れた俺は、ごろりと背を突いて真っ黒な空に浮かぶ綺麗な星を見る。
これも全部ダンジョンが作った偽物の星空なんだろうか?
そう思うと、なんだかいたたまれない気持ちになってきたぞ。
そんなアンセムの願いの裏腹に、太陽が完璧に沈んだ砂漠は焚き火の光以外は暗闇に包まれており、まるでアンセムを包んで、決して逃さないように見えるのだった。
俺は、胸の中で溢れる不安を押し殺して、途中で狩ったサンドエルフの毛皮で作った寝袋を敷いて眠ることにした。
「俺が寝ている間は頼んだぞ。」
俺は、飛び跳ねながら当たりを警戒しているアオに一言かけてから、ゆっくりと眠りについた。
絶望的な環境が続く中、さらなる脅威がアンセム達に襲いかかる!!!
日曜日の0:00に投稿しますので楽しみに待っててください!!




