この間、およそ1分
いきなりトバします。
散文気味で見づらいと思いますので、苦手な方は回避をどうぞ。
場所は断崖絶壁。
ひと組の男女が、ピンチに陥っていた。
具体的には、少し西洋人の血が混ざっているような美女が足場にしていた断崖絶壁の出っ張りが崩れ、落ちそうになった所を彫りの深い西洋人顔をした明らかに冒険家って格好をしたイケオジに助けられている。
「もういい!もういいの! 手を離して! でなければ貴方まで落ちてしまうわ!」
「そいつは聞けない相談だ! お前さんが居なくなったら、遺跡の謎が解けなくなるんでな!」
このやり取りを聞くだけで、大体分かるだろう。
そう、現在とてもピンチなのだ。
だからと言ってこの場には2人を助けてくれる人などおらず、無常にも男の方が支えにしている出っ張りも、ついに崩れてしまった。
「うわぁぁぁぁああああ!!!」
「キャアアァァァアアアア!!」
断崖絶壁の下は深い森。
そこへ落ちてしまう2人は、助かるのだろうか?
〜〜〜〜〜〜
場所は宇宙。
そこに1隻の小さな宇宙連絡艇が浮いている。
そしてその中で、宇宙文明の民とは思えない格好の男女が言葉を交わしていた。
男はまだ少年の気配を残す西洋人で、産業革命時代のボロ着みたいな服装だった。
対して女性は東洋人と西洋人のハーフみたいな顔つきで、いかにもな中世のお姫様然とした華やかなドレスを着ている。
「無理よ! 見てよ、正面にはこんなに帝国の宇宙戦闘機がいるのよ!? それを突っ切って伝説の宇宙の力が宿った剣が隠された小惑星を目指すなんて、何を考えているのよ!!」
叫び、大げさな身振り手振りで外をお姫様風の女性が指し示すとカメラがそちらへ寄る。
するとスペースプレーンのガラスの向こうには、沢山の武装したファイターが宇宙で陣を組んでいた。
その数、およそ数十万機。 もちろんそれらを格納しておける宇宙戦艦もいるので、数で言えばさらに増える。
こんな光景を対立者が目にしてしまえば、絶望しかない。
「でも、やるしかないんだ! 分かってるだろ?」
「ええ、ええ! 分かっているからこそ、こんなバカで無茶で無鉄砲な事は止めましょうって言ってるの!! 回り込む方法とか探しましょう、ね?」
「でも、やるしかないんだ。 行くよ!!」
「このバカァァアア!!!」
女性の悲鳴じみた怒声とともに、コスモプレーンは全力を出す。
〜〜〜〜〜〜
場所は現代。
桜が舞い散る季節であり、この日はとある学校の入学式の日だ。
そんな日の通学路に、走る足音とある種の悲鳴が響く。
「ヤバいヤバいヤバい! 遅刻するぅぅ!!」
新品の卸したての制服を纏い、パンは咥えてはいないが、とても慌てた様子で全力疾走している。
そんな様子でも、東洋人とは思えないほどパッチリした目と、とてつもなく整った顔をした自称平凡な顔の美少女だ。
なおその世界の平凡な顔は、現実では超絶美形である事を申し添えておく。
「あっ!!?」
そんな少女は慌てているせいか足下が不注意になっており、道路に転がっていた大きめの石につまづいてしまう。
――――まずい、コケる!!
だれがどう見てもコケてしまうだろう浮き方をした少女の体だが、眼前は暗かった。
「ふぎゃっ!!?」
「うおっ!? なんだなんだ??」
なんと少女は、同じ学校の制服と思われるモノを着ている男性の背中に顔面ダイブをしてしまった。
その男性は半グレじみた悪さを意識した髪型をして強気な表情をした超絶美青年。
…………現実で見ても美青年ではあるが、方向性は違くともキレイさのレベルは自称平凡な顔の美少女とあまり変わらないと感じるのはなぜだろう。
まあそれは今言う事ではない。
「あたたたた……ありがとうございます」
顔面ダイブだけでコケずに済んだ少女はお礼を言いながら少し距離を取った。
そしてその結果飛び込んできたのは、超絶美青年の顔。
「――――うわっ、キレイ」
「あ、ども」
思わずポーっと逆上せ上がり、素直な気持ちを口にしてしまった。
そんなのを聞いてしまった青年の方も思わずといった体で返事をする。
そして固まる空気。
なんと言うか、コレどうすんの? この後は何を言えば良いんだ?
的な微妙な空気だ。
そのまま両者が固まること少し。
不意打ち気味に学校からチャイムの音がしてきた。
すると少女の方が先に我に帰る。
「ヤバッ! 遅刻するぅ!! コケないよう支えてくれて、どうもありがとうございました! それでは!! うわーーー、遅刻する〜〜〜〜!!!!」
忙しく捲したて、駆け去った少女。
残った青年は少し呆然としていたが、おもむろに口から息が吹き出た。
「ぷっ。 面白い子。 さあ、僕も遅刻しないよう、行かなきゃね」
歩き出す青年は、あと少しで知るだろう。
先程の少女とは同じクラスになって、少女が巻き起こす騒動にことごとく巻き込まれてしまう事を。
〜〜〜〜〜〜
場所はド田舎の集落。
集落に立ち並ぶ家はどれも古びており、住人達はどことなく陰気な表情ばかり。
そんな中、集落で1番若い……むしろ幼い男女がいた。
この男女は生気に溢れ、どこで何をしても新鮮味に溢れた体験の様で人生を謳歌している。
そんな2人の内、異常なまでに清潔で、歯はキレイに整い、将来は世間を騒がす美形になるだろうと簡単に想像できる西洋人顔の男児がキラキラ輝かせた目で言う。
「知ってる? 今空にかかってる虹のふもとには、宝が眠っているんだって」
「ふーん」
「なんでいつも、そんなに反応が薄いのさ」
「ふーん」
このふーんとしか言わない方も、西洋人でありながら他国のエキゾチックな地域の血が入っているのか、純粋な西洋人にはない造形美を持っている美しい顔立ちをしている女児だ。
――――2人共ド田舎らしい地味な服なのに、2人が着ると上等な街歩き用の服にも見えてくるから不思議だ。
その女児は、この男児が何を言い出すのかの想像がついていて、そして反対の意味を示す意味も無いと知っているからこそのリアクションなのだ。
もちろんそれだけが理由ではない事も申し添えておく。
「今から虹のふもとに行って、その宝をボク達だけのものにしようよ!」
「ふーん」
女児の返事の音程がわずかに上がったが、そんなモノは男児は気付かない。
そしてもう、女児のふーんの返事に慣れて来てしまっていて、ふーんの細かいニュアンスを感じ取る事すらしなくなっていた。
なにせ男児は直情径行。
「ほら、今から行こう!!」
「またぁ!? アンタのお守りは大変なんだからね!!」
いつもこうやって女児の手を掴み、大冒険に連れ出す。
女児もこういった大冒険が好きなんだろうと思い込んで。
そしていつも巻き込まれる女児は嫌嫌な態度をとっているが、実際はこの男児の面倒をみることを楽しんでいたりするが、それは秘密。
「まずは線路に出よう! 線路にそって歩くほうが楽だからね!」
「ああもう、アンタってばいつもこう考え無しで動く! もっと考えて動きなさいよ!!」
ど田舎の2人の平和な日常は続く。
……………………。
………………。
…………。
「はっ!?」
どうやらこの女性の意識がトンでいたらしい。
「やっぱり耳かきは気持ちが良い。 けど、ほどほどにしないと……」
かきすぎると中耳炎の原因になるので、力加減や回数や時間を気にしなければならない。
「うう……もうちょっと耳かきしたい……。 でも……うぅ。 あ〜、ダメダメ、顔を洗って切り替えてこよ」
洗面台に付いた鏡に映る女性の顔は、さっき見えていた幻覚の女性の方に似ている…………気がした。
(耳かきでトリップしている)この間、およそ1分。
なおトリップ中に見たのは妄想です。
ここまで気持ちよくトリップできる耳のかき方なんて、作者は知りません。
あと鏡を見て妄想してた美形ヒロイン達に似てるかもとか言うが、別に似ていない。 モブ顔の、気持ち良すぎる耳かき技術を持つだけの一般人。