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芳山教授の日々道楽「雑貨屋」

作者: ヨッシー@

芳山教授の日々道楽「雑貨屋」


お天気快晴、

草木も芽吹く春の吉日。

そよ風が漂う絶好の行脚日和。

久しぶりの小旅行。足が弾むのは間違いない。意気揚々と旅先を闊歩する私がいる。

昨晩のお酒が良かったのか、目覚めも良く体調も万全だ。

得意げに鼻歌を歌い、威勢よく腕を振る。本人いわく、誇らしげに振る舞うさまは、まるで殿様。今日は、殿様として旅をしよう(バカ殿ではない)。

道歩く人々は、私の能天気な行動に躊躇するかもしれないが、気にしない気にしない。興味津々の視線を振り払い闊歩闊歩。

これも一つの道楽である。


ほぼ、無双状態で観光地を進撃すると、

何だ?

不思議な物体が目に入った。

店の軒先に吊された玉。

丸い、大きい、緑色、一応植物。

カシャカシャ、カシャ

隣に立っていた外国人が、頻りに写真を撮っている。

これは…

いわゆる杉玉?

青い杉の葉を集めて丸く整形し、球状の玉にして飾る。ここは酒屋だという看板。また、新酒が出来たという合図でもある代物。

酒屋は、毎年、新しい杉玉を吊るし、その色や状態で、お酒の熟成度を判断できる便利なアイテムである。江戸時代から続いている日本文化の一つで、古代、神への感謝を現したことが由来らしい。

さて、

ウンチクはともかく、なぜお雑貨屋の軒先に杉玉が?昔は酒屋だったのか?

私は、意気揚々とした気持ちを治め、店内に入ってみた。

無造作に並べられた雑貨たち+アクセサリーandTシャツetc。統一性はない。

どっからどう見てもただの雑貨屋だ。

強いて言えば、

ダサい。

キーホルダー、人形、お守り、ポスター、その他もろもろ。

チョンマゲをつけたドラえもんが歌舞伎をしている人形。熊本城の上にスカイツリーが乗っているロケット置物。

すべて怪しい(汗)

梅干の種入りペンダント、太刀魚の刀、鰹節の熊の手、木製のような紙製のような茶碗。二束三文のバッタ商品ばかりじゃないか。

ガヤガヤ、ガヤ

外国人たちが、大喜びでバッタもん商品を買い漁っている。

「大人気、日本製お土産!」とポスターに書いてある。のぼり旗が揺れる。


これは日本のお土産では無いぞ!

君たちは騙されている!


どちらかと言えば、パクリフェイク商品だ。各地、あっちこっちの文化いい所ごちゃ混ぜ商品。

ああ、悲しい、日本人として悲しい。こんな店が日本代表となる事が恥ずかしい。

しかし、大繁盛。

何故?

嬉しそうに雑貨を大量に買って、外国人は去って行った。その顔には笑顔が。

なぜ?

トントン、

誰かが私の肩を叩いた。

そこには、オモチャのチョンマゲをつけた怪しい男が立っていた。

新撰組の法被、腰にはオモチャの刀、胸には亀と書いてあるワッペン。どうやら雑貨屋の店主らしい。

なんと恥ずかしい格好なんだ君は、

「私に何か用かな?」

雑貨屋の店主はニヤリと笑い、軒先の杉玉を静かに指差した(金歯が怖い)

すると、

ピカピカ、ピカーー

なにーーー

杉玉が突然、光り出した。しかも七色に、大きくなったり小さくなったり変形も繰り返す。ミラーボールなのか?

ジャンジャカジャーン

大音量の音楽が流れ出す。しかもマッチ(近藤真彦)の「ギンギラギンにさりげなく」の歌だ。

パチパチパチーパチ、

外国人たちが一斉に拍手する。

何なんだ、これは?

わーーー

「タイムセール始まりますーー」

店主が、奥から「侍」という文字の入った野球帽を出してきた。

わーーー

外国人たちが一斉に群がる。

「侍ジャパンキャップ、ベリーグッド!」外国人の声。

「今しか買えないよー」店主の声。

「大谷選手のサイン入りだよー」店主の声。

なに?

よく見ると、帽子に下手くそな字で「大谷」と書いてある。

辞めてくれー、これは違うだろう。絶対バレるだろう!

恥ずかしくて私でさえ顔が赤くなる。

しかし、あっという間に完売。喜んで帰って行く外国人たち。

何なんだ、一体。

呆れてはてて、たたずむ私。

バイバイーー

店主が外国人たちを見送る。

この店主、只者ではない(汗)。外国人相手にボロい商売をしている。

何も知らない外国人たちに日本のお土産として、インチキ商品を売っている。

酷い男だ、一言言ってやろう。日本人として言ってやろう。

「君、君、こんな詐欺商売をして日本人として恥ずかしくないのか?大谷選手にあやまれ!」

「あなたは、何か勘違いをしていますよ」

「なに?」

「これは、オオタニとは呼びません。オオヤと呼びます」

なに?確かに場所によっては、大谷はオオタニと呼ばずオオヤとも呼ぶ所もある。

「しかし、世間一般にはWBCもあった事だし普通オオタニと呼ぶだろう」

「いいや、オオヤです。間違いなしにオオヤです。私の名字ですから」

「しかし…」

「これでいいんですよ。彼らが喜んで楽しんでくれば、それでいいんですよ」

「皆んなが笑顔になれば、世界は平和になります。争い事も無くなります。すべてベリーハッピーピースです」

うーん、一理あるかもしれない。

堅苦しい決まった同じお土産よりも、バッタもんの面白お土産の方がウケるかもしれない。もらった人々の笑顔が見える。

日本人ももしかして、外国に行って同じように、バッタもんお土産を買って喜んでいるかもしれない。

多分そうだ、そうかもしれない。

持ちつ持たれつ、これで世界が笑顔で平和になるのなら良いのかもしれない。

うんうん、これで良いのだ。これでいいのだ(バカボンではない)

自己完結。

よし、帰宅するとするか。

なぬ、

店先の駐車場には高級ベンツが止まっていた。よく見ると店主の身なりも高級ブランド物で着飾っていて靴も高そうだぞ。


本当にこれでいいのか?


後日談。

海外の旅行ガイドマップに、この雑貨屋が載っていた。「日本の大人気お土産店 侍ジャポン」(汗)

そこには、徳と描いてある野球帽をかぶっている店主が写っていた。ツバには徳川家康のサインが書いてある。


大丈夫なのか店主?

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