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最初に座ったのは、郊外で開拓を始めた人でした。何年もかかって森の木を切り倒し、畑を作っているうちに、近くで廃屋になっていた工房を見つけたのです。
疲れた体を、椅子に深くもたれていると、それだけで今日一日の疲労がゆっくりと抜ける気がしましたので、とてもお素敵な椅子だなと思っていました。
椅子もまた、そう思っている人の気持ちが嬉しくそして誇らしく思えました。
農家の男性は、椅子に座り。夕焼けの色の空を眺めながら、今日したこと、明日やらないといけないことを頭の中で整理をしていました
椅子は、そんな彼にこれから収穫される農作物の夢をそっと見させてあげるのが好きでした。
農家の男性は、開拓を続け、食料が不足すると近くの農家や街で働いて糊口をしのいでいましたが、やがてやっと収穫ができる目星もたってきました。
椅子の上でくつろぎながら、男はこれからの人生の過ごし方をようやく、考えるようになってきました。椅子は、そんな男の希望を未来へ未来へと誘ってあげました。
しかし、そんな思いとは裏腹に国の中は乱れてきました。沢山の騎馬が畑を荒らし、矢が飛び交い剣が振り下ろされました。
多くの実りの代わりに騎士達の頭が、土の上にころころと沢山転がりました。素敵な秋の夕暮れに農作業をしていた人も兵役にとられて遠くに連れられてしまいました。
椅子は、収穫間近の農地の隅に捨て置かれました。
そして、また軍隊がやってきました。