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転生者リオン

――深淵の森。

その森を知っている者は、口を揃えてそう呼んでいる。


広大な面積の森なのになぜか入り口はただ一つ。

森に入ったが最後、誰一人として帰ってきた者はいない。


森にはいったいなにがあるのか。

噂によると、森の最深部にはドラゴンが棲み付いているだとか、大昔の財宝が眠っているなどの根も葉もない情報が出回っている。


そんな謎に包まれている森の中に一人の男がいた。

男は木と木の間を移動しながらなにかを探しているような様子だった。


「……いた」


やがて、目当てのものを見つけ、男はニヤリと笑みを浮かべていた。

男の視線の先には、一回りも二回りも大きい猪型の魔物が森の中を歩いていた。


男は腰に携えていた刀を抜き、木の上から飛び降りた。


「《魂魄・斬》」


一見すると、ただ魔物を通り過ぎたかのように見えるが、次の瞬間、魔物は白目を向きながら地面に倒れ込んでしまった。

驚くべきことに、魔物は自分の身にいったいなにが起きたのか知らないまま絶命していたのだ。


「この程度か……? 前のより少し大きめだったから手ごわそうに見えたけど、そうでもなかったな」


若干の物足りなさを感じながら、まるで軽いものでも持つように軽々と魔物を持ち上げ、男は帰路についた。


男の名前はリオン。今年で15歳になる。


前世では、霊媒師として名を馳せていたが、仕事上のトラブルに巻き込まれ、天寿を全うしないまま殺されてしまった。

しかしなんの因果か、前世の記憶を保持した状態でこの世界に転生した。


赤子だったリオンは生後間もなく、深淵の森の近くに捨てられたが、運よくその森に住む女性に拾われ、今まで何不自由なく生きてこられた。


年を重ね、この世界になじんでいくうちにこれまで鮮明に覚えていたはずの前世の記憶もあまり思い出せなくなってしまっていた。

当時の交友関係はもちろんのこと、前世の名前すら忘れてしまった。


それだけ忘れてしまったにも関わらず、なぜか前世の能力や霊媒師だったときに関わっていた案件については鮮明に覚えていた。


「ただいま帰りました」


魔物を抱えたリオンが家に着くと、黒髪の美しい女性が出迎えてくれた。


「お帰りなさい、リオン。随分と大物を仕留めてきたわね。ところで、頼んでいたものは採ってきてくれた」


「はい師匠。この中に全部入っています」


「品質のいいものを採ってきたみたいね。これなら上質な薬品が作れるわ。悪いけど手伝ってちょうだい」


「分かりました、師匠」


そう言ってリオンは、家の中へ入っていった。

女性の名は、ロゼッタ。

長い黒髪を腰にまで伸ばし、髪の毛と同じ闇色のワンピースに身を包んでいる。

ふくよかな胸元に端正な顔立ち。街に出れば誰もが振り返るほどの美貌を持っていた。


彼女は赤子だったリオンを拾い、今まで育ててくれた恩人。

しかし彼女は、ただの人間ではなく、リッチと呼ばれる不死の魔女だった。


その昔、まだロゼッタが人間だったころは高名な魔法使いとして有名だったが、死霊術という禁忌とされていた魔法を極めたせいで、指名手配されて以来、この森で過ごすようになったという。


リオンを拾ってからは、彼を弟子として育て上げてきた。

素質は十分にあり、死霊術だけでなく、ロゼッタが持つすべての知識をリオンに伝授した。

リオン自身もロゼッタを師として崇め、彼女から教えを乞う合間に彼女の助手として必要な素材の採取のため度々森の中を探索することもある。


それが転生したリオンの15年間の軌跡だった。


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