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ギルドへの帰還

「……ふう」


突然の戦闘にも関わらず、一パーティを全滅させたリオン。

大きく息を吐き捨てながら刀を鞘に戻すと、アリシアのほうへ体を向ける。


「終わったぞ、アリシア」


「……さすがですねリオンさん。それに比べて私は最初以外、なにもできませんでした」


ほとんど戦闘に参加できていなかったことにアリシアは落胆している様子だった。


「気にするな。元々、そういう指示を送っていたんだし、自分の身を守っていたおかげでこっちも戦いに集中できたんだから」


「……そうですか。ジャマにならなくて本当によかったです」


「それじゃあ、そろそろ戻ろうか?」


「は、はい。あ、でも……この人たちはどうしましょうか?」


アリシアは、周りに倒れているハリソン一味を見ながら紫音に質問する。


「当然、こいつらも連れていくよ。こんな面倒ごとに二度と巻き込まれないようにギルドに報告しなくちゃいけないからな」


「……ですが、この人数をどうやって?」


十人以上の数に全員気絶しているため歩かせることもできない。もちろん、全員を担ぐなど無理な状況なのだが、リオンにはなにか考えがあるようだ。


「これくらいの数なら問題ないよ。俺に任せておけ」


そうして、リオンたちはある方法を使って、アトラスへの帰路へとつくのだった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


ここはアトラスの玄関口となる門。

夕暮れの中、その門には二人の衛兵が暇そうにしながら立っていた。


「ふあぁあ、ねみぃ……」


「オイ、あくびをするな! 衛兵がそんなのでは、敵が来てもすぐに対処できないだろうが!」


「固いこと言わないでくださいよ先輩。そろそろ交代の時間ですし、終わったら一杯飲みに行きません?」


後輩の衛兵は、酒を飲む仕草をしながら呑気にそう聞いていた。


「まったくお前は……まあ、仕事が終わったら付き合っても……ん?」


「どうしました先輩?」


「……向こうからなにか近づいてきているぞ?」


「こんな時間に入国者ですか?」


「……いや、あれは!? ま、魔物だ! 魔物の襲撃だ!」


二人のはるか前方に巨大な影が見えていた。

明らかに人ではない、その影を見て衛兵はそう判断していた。


「ど、どうしますか? 軍に連絡しますか?」


「そ、そうだな……。軍もそうだが、念のためギルドにも連絡して応援を頼んだほうがよさそうだな。……お前はすぐにこのことを軍とギルドに――」


「あの……すいません……」


慌てて対処しようとしている二人のところにリオンが姿を現した。


「っ!? な、なんだお前!? どこから出てきた!」


「そんなことより君! すぐに門の中に入れ! すぐそこに魔物が来ているんだぞ!」


「それなら大丈夫です。あれ、俺のなんで」


「……はあっ!?」


リオンのとんでもない発言に衛兵は、目を見開きながら驚いていた。


衛兵たちを驚かせていた魔物は、実はリオンが創り出したアンデッドだった。

過去にリオンが討伐したジャイアントオークとゴブリン・ロードの亡骸を素体としており、今回は荷物運びのために呼び出していた。


衛兵に森で起きたことを話していると、その間にアリシアとリオンのアンデッドたちが荷物を連れて到着した。

オークとゴブリンの後ろには骨で作られた檻のようなものがあり、その中にハリソンたちが押し込まれている。


事情を聞いた衛兵たちは、オークたちに驚きながらもリオンたちの話を真剣に聞いていた。


「失礼だが、君のギルドカードを見せてもらってもいいかな?」


「……え? 別にいいですけど……」


突然、衛兵からそのようなことを言われたが、特に断る理由もないので素直に渡すことにした。

しかし、リオンのギルドカードを見ると、なぜか衛兵たちは眉をひそめている。


「君、本当にFランクなのかい?」


「ええ、そうですよ。ちなみに、今日冒険者になったばかりです」


「本当に君が全員、倒したのか? 彼らを調べてみたが、ほとんどがCランクでFランクの君じゃあ歯が立たない相手なんだが……」


どうやらランクを見てリオンたちの仕業だと信じていないようだ。

リオンとしては、その前にハリソンたちがそれほど高いランクだとは思わず、胸中で驚きの声を上げていた。


「本当ですよ」


「しかも、死霊術師なんて戦闘職、聞いたことがないんだが……」


「あれを見ても信用できませんか? あいつらは俺が使役している魔物なんで、俺の声一つであなたたちを襲わせることもできるんですよ」


半ば脅迫的な言い方をしながら後ろに控えているオークたちを指差す。

これには、さすがの衛兵も怯えてしまい、「すいませんでした」と謝りながらギルドカードを返してきた。


「ひ、ひとまず、こいつらのことはギルドに報告しておきますので、もう行っても大丈夫ですよ」


「では、後のことはよろしくお願いしますね」


そう言い残して、リオンは衛兵にハリソンたちのことを任せてその足でギルドへと向かった。


「この度は申し訳ございませんでした」


ギルドに入ると、登録の際に手続きをしてくれた受付嬢がリオンたちの姿を見て突然、謝罪の言葉を述べてきた。


「ど、どうしますか?」


「ハリソンのパーティがリオンさんたちに多大なご迷惑をおかけしたようで……調書を取ったのち、ハリソンらには厳正な処罰が下されますので、これからも当ギルドのご利用をお願いいたします」


(もう、ギルドに伝わっていたのか……)


衛兵の仕事の速さに感嘆しながらリオンはここに来た当初の目的を果たすことにする。


「後のことはそちらにお任せするので頭を上げてください。それよりも、依頼を達成したのでその報告をお願いします」


「さっそく討伐しに行ったんですね。……それで、討伐部位はどちらに?」


「ああ、今出しますね。それからどうも依頼の内容に手違いがあったようで、ホブゴブリンやゴブリンメイジもいたんですよ」


「……おかしいですね。事前に調査ではそのようなことは聞いていませんでしたが?」


「実際に見てもらったほうが早いですね」


「……はい? 実際とは……」


受付嬢の質問に答える前にリオンは影の中から洞窟内で討伐したゴブリンたちを取り出した。

ギルドの床に、ゴブリンの他にホブやメイジなどのゴブリンがドンと置かれていた。


「っ!? こ、これは……」


「……あの、こういう場合の報酬ってどうなるんでしょうか? ただのゴブリンが討伐対象なのにこれでは報酬の上乗せをしてもらわないと割に合いません」


アリシアが、依頼内容の誤りについてそう抗議するが、受付嬢は首を横に振りながら謝罪した。


「申し訳ありませんが、その場合でも報酬はあらかじめ依頼書に書かれている値段になります。何分、規則ですのでこちらではどうすることもできません」


「……そ、そんな……」


「どうしようもないなら、もういいです。アリシアもありがとうな」


「い、いえ……ありがとうございます。今日はもう遅いので明日にでも、討伐部位以外を素材屋に行って買い取ってもらいましょう。いくらかお金になるはずです」


「そうするか。……ん? あれって……」


ふとリオンの視界の端にある光景が映った。

それは最初、ギルドに訪れたときにも見かけた治癒術師の姿だった。


最初のときと同じようにギルドの一画を間借りして出張版の治療院を開いている。今もケガをしたらしい冒険者を相手に治療を行っている。


「リオンさんにアリシアさん、こちら依頼の報酬となります」


リオンがよそ見している間に受付嬢からゴブリン討伐の報酬の銅貨十五枚が提示された。

この金額は、安宿に一泊すれば消える程度のお金だが、初めての報酬にリオンはそのお金を握りしめながら歓喜していた。


少しして、我に返ったリオンはずっと気になっていたことを聞くために受付嬢に話しかけた。


「あの、すいません。あれはいったいなにをやっているのでしょうか?」


そう言いながらリオンは、先ほどの治癒術士を指差しながら尋ねる。


「あれは、フリーのヒーラーによる臨時の治療院ですね。あの方はパーティメンバーがいないため討伐系の依頼が受けられないので、ああして収入を稼いでいるんですよ」


ヒーラーが単独で討伐依頼を受けに行くなど確かに自殺行為だ。

ああいうお金の稼ぎ方もあるのだなと、感心していた。


「あれって、誰にでも貸してくれるんですか?」


「は、はい……。事前に申請していただければギルドの一部をお貸しすることはできますが?」


「……なるほどな。ありがとうございます。興味本位で聞いただけなので、俺たちはこれで失礼します」


リオンたちは、受付嬢に礼を言ってからギルドを後にした。


「リオンさん……いったいなにを企んでいるんですか?」


ギルドから離れて今日の泊まるところを探していると、アリシアからそのようなことを言われた。


「……なんでそう思ったんだ?」


「いくら興味本位といっても不自然でしたよ。なにか考えでもあるんですか?」


「まあ、ちょっとな。……でも今は宿屋を探すほうが先だ。早いとこ見つけないと下手したら野宿になるかもしれないしな」


「わかりました……でも……」


そこでアリシアはいったん言葉を止め、一呼吸入れてから次の言葉を続けた。


「それとは別に、リオンさんのことがもっと知りたくなったので宿屋を見つけたら教えてくださいね。……特にリオンさんが使い、死霊術について」


「ああ、約束する……」


いつになく真剣な眼差しをしたアリシアに、リオンは教えられることはすべて教えることにしようと、胸中でそう覚悟していた。


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