表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/44

5話‐2

「……残り一機」


 崩れ落ちる二機の胸部を念入りに踏み砕いて破壊しつつ、先程躱した機械人形を睨む。

 その瞬間、機械人形は俺に背を向けて走り出した。

 ……状況的に不利と判断して、逃走を選択したのか?


「待て!」


 見逃した後で何をやらかすのかわからない以上、逃がすわけにはいかない。

 ……待てと言って待ってくれるはずも無く、機械人形は俺に目もくれず逃走を図る。

 機械人形を追いかけるべく、地を蹴り駆け出す。


「待てって、言ってるだろ!」


 金属の塊の癖に、予想以上に機敏な動きをする機械人形に苛立ち、このままでは埒があかないと判断して、機械人形へと炎を放つ。

 俺に背を向けて逃走する機械人形は、なすすべなく炎に包まれ破壊される……筈だった。

 機械人形を焼き尽くすはずの炎は、機械人形に届く直前で掻き消えてしまう。

 まさかと思い空を見上げると、ヴァッサが俺の事を見下ろしていた。


「……またか! また俺の邪魔をするのか!?」


『それはこちらのセリフです。何故、何度も私達の邪魔をするのでしょうね? 貴方は』


 俺と機械人形の間に割って入る様に、ヴァッサが上空から降り立つ。


「この機械人形は、やっぱりお前達が所有していた物なのか。……こんな高価な物、どうやって大量に所持しているのか気になるな」


『貴方が私達の同志になるというのなら、教えてあげても良いですよ。それと、大量に所持していたといった方が正しいですね。どこかのヒーローさんが殆ど破壊してしまいましたから。残ったのはこの一機だけです』


 ……何度断っても、俺を仲間に勧誘してくるな。

 そうまでして俺を仲間にしたい理由があるのか?

 ……確かに俺の超能力は強力だ。

 単純な火力勝負なら、余程の事がない限りは負けない自信がある。

 とはいえだ、態々自分達に敵対している奴を勧誘するより、そこらのチンピラを捕まえて、スピネやフレーダーのように戦闘服を与えて頭数を揃えた方が良いと思う。


「俺を仲間にしたいんなら、もっと良い土産を持って来いよ。例えば、お前の仮面の下がどんな顔なのかとかさ!」


 とりあえず勧誘を断り、ヴァッサの元へ走り出す。

 奴の能力は未だにわからないが、先手を打って倒してしまえば関係ない。


『申し訳ありませんが、その要求は受けかねますね』


「なら、力尽くで剥ぎ取る!」


 点火装置を起動し、火花を散らす。

 靴裏からのジェット噴射で加速するが、ヴァッサが俺に掌を向ける。


「チィッ!」


 作戦変更。

 ヴァッサに向け、火炎放射をお見舞いする。

 ……しかしというべきか、当然と言うべきか、ヴァッサが炎に包まれることは無かった。

 放たれた炎は二つに切り裂かれ、霧散してしまう。


「うお!? あ、危ないな!」


 炎を切り裂いた何かは、そのままの勢いで俺のスーツの一部を切り裂く。

 ……咄嗟に回避した事でスーツが傷つくだけで済んだが、まともに喰らったら体に穴が空いていたかもしれない。


『避けましたか……。その実力、やはり捨て置くには惜しいですね』


「まだ勧誘してくるのかよ。人のスーツを台無しにしといて、今更仲間になると思ってんのか?」


『今日のところは無理みたいですね。ですが、貴方はきっと私達の同志になるはずです。……貴方と私は似ていますから』


 俺とヴァッサが似ているだって? 一体どこを見てそんな事を――お互い見た目が不審者であるという意味では似てるかもしれない。

 いや、そんな事よりももっと聞き捨てならない発言があったぞ。


「おい! 私達ってことは、お前以外にもまだ仲間がいるのか! それに、俺とお前が似ているって……一体、どういう事だ!」


『残念ですが、そろそろ潮時。機械人形も逃げおおせた事ですし、今日はこの辺りにしておいてあげますよ。……また、会いましょう』


「待て! 勝手に話を終わらせようと――」


 逃走を図るヴァッサを追いかけようとするが、ヴァッサが再び俺に手を翳すと同時に何かが射出される。

 射出されたモノは、透明で視認しにくいものの、辺りの景色を歪ませているお蔭で大体の位置はわかる。

 ヴァッサの攻撃を避け、駆け出す……瞬間、背後から衝撃を受け吹き飛ばされ、その場に転倒してしまう。


「このッ……」


 背中をさすりながら起き上がり周囲を見渡すが、既にヴァッサの姿は見えなくなっている。

 そして、遠くからサイレンの音が響いてきた。


「逃がしたか。……けど、収穫はあったな」


 現場から逃走する為にバイクに跨りつつ、スーツに付けられた傷跡と、背中をさすった手を眺める。

 ……僅かだが、水滴が付着していた。 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ