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4話-6

「今日も現れないつもりか! 腰抜けのヒーローめ!」


フレーダーは超音波を放ち街を破壊しながら、俺に対する悪態を吐く。


「俺にだって用事があるんだ。お前だけに構っている暇は無い!」


 路地裏でスーツに着替えてフレーダーが暴れている現場に戻ってきた俺は、背後から飛び掛かり不意打ちを仕掛ける。

 咄嗟の事で反応できないフレーダーを何発か殴りつけてから、一度後退する。


「……全然効いてないか。やっぱりその装甲服、ズルいな」


「今回は、装甲服だけじゃないぜ!」


 そう言うとフレーダーは、何かを放り投げる。

 放り投げられたその何かは一瞬にして大きくなり、三つの人影を形どって俺に向かって来る。

 ソレは人の形を模してはいるが、服を着ておらず金属の装甲が露出しており、一目で人間ではないと判断できた。


「機械人形!? こんな物まで用意してるのか……!」


 機械人形。

 それは人間の代わりに危険な仕事を行う為に開発が続けられている、最新鋭のテクノロジー。

 一部の施設で実験的に配備されているとニュースになっているのを聞いた事がある。

 ……一部にしか流通していないはずの機械人形を何故フレーダーが使用してくるんだ?

 動揺する俺を他所に、機械人形は無機質に攻撃を仕掛けてくる。


「くっ……」


 先陣を切った機械人形の拳を受け止めるが、残り二機の機械人形が続けてこちらに向かって来る。


「この!」


 拳を掴んでいた機械人形を蹴飛ばし、二機の機械人形の攻撃から身を躱す。


「おっと、お前の相手はそいつらだけじゃないぜ!」


 機械人形の後方から放たれたフレーダーの超音波を、その場から飛び退きなんとか回避する。

 ……四対一、多勢に無勢だな。

 警察が早く駆けつけてくれれば多少は楽になるかもしれないが、無い物をねだっても仕方がない。


「……機械人形相手なら!」


 機械人形相手なら何をやっても構わない。

 両手の拳に炎を纏わせ、近くにいる機械人形を目掛けて駆けだした。


「オラァ!」


 機械人形が俺に反応して攻撃を行うよりも早く炎の拳を叩きこみ、バランスを崩した所を蹴り飛ばす。

 三メートル程蹴り飛ばされた機械人形が地面に倒れ、その近くにいた機械人形の腕部が展開し、内部に隠されていた銃口が此方に向けられる。


「させるか!」


 銃口が火を噴くよりも早く、機械人形に向けて火炎放射を放つ。

 激しい炎の渦に巻き込まれた機械人形は、銃弾を放つことなくその場で崩れ落ちていく。

 黒焦げになった機械人形の姿を確認した後、三機目の機械人形の元へと接近して、拳を振るう。

 しかし、俺の攻撃が当たる前に、機械人形が俺から距離を取った事で、振り抜いた拳は空を切る。

 ……二機の機械人形がやられていたのを見て、学習したのか?


「機械に俺の事が測れるかな!」


 例え機械が俺の事を観察しようと、その上をいけば問題ない。

 そう叫び、機械人形へ向けて再度、駆け抜ける。

 ……今度はジェット噴射を用い、先程よりも速く動き、スピードを威力に乗せた炎拳を叩きこむ。

 先程よりも強い一撃を喰らってよろめく機械人形へ、二度三度と拳を叩きこんでいく。 


「コイツでとどめだ!」


 攻撃を受け続けた事でひび割れた胸部装甲を目掛けて、炎拳を放つ。

 ヒビ割れて脆くなった装甲は、俺の拳を防ぐことができずに破壊され、胸部に大穴が空く。

 拳を引き抜かれた後、胸部が穿たれた事でスパークしつつ仰向けに倒れていく機械人形を尻目に、最初に蹴り飛ばした機械人形の元へと向かう。


「最後はコイツだ!」


 今まさに立ち上がったばかりの機械人形の頭部を、炎を纏ったままの拳で掴み、その装甲を溶かしつくす。

 頭部を掴んでいた手を放し、もう片方の手で機械人形を殴りつけると同時に機械人形の首が飛び、機械人形はその場に崩れ落ちる。

 飛んで行った頭部は、機械人形がやられていく様を呆然と眺めていたフレーダーの足元まで転がっていった。


「どうするフレーダー? 頼れる仲間は全て破壊した。大人しくお縄についたほうが良いんじゃないか?」


「テメエ、やっぱり俺相手に本気を出さなかったな! 何の理由があるんだ!」


 ……質問していたのは、俺の方なんだけどな。

 まあ、いいか。


「……お前相手に本気を出す必要は無い。それだけだ」


 俺の返事を聞いて、一瞬呆気にとられたような表情を浮かべたフレーダーは、我に返ると同時に声を荒げて怒鳴り散らす。


「俺を嘗めやがって! テメエは、絶対に潰す!」


 そう言い放つと共に超音波が俺に向けて放たれる。

 ……いい加減ワンパターンなんだよ。

 超音波で攻撃してくることを見越していた俺は、フレーダーが超音波を発するよりも早く横へ飛び退き超音波の射程範囲から離れる。

 側面から感じる超音波による振動が収まると同時に、大地を蹴ってフレーダーの近くまで全力で駆け抜ける。


「オラァァァ!」


 駆け抜けた勢いのまま全力で、回し蹴りをお見舞いしてやる。


「ぐおッ……」


 呻き声を上げて蹴り飛ばされるフレーダー。

 ……これで決まってくれれば楽なんだけど、世の中そう甘くはない。


「本気を出す必要は無いと言った通りだろ? このまま大人しく――」


「クックックッ……」


 倒れたまま起き上がらないフレーダーを見下ろしながら降伏を促すが、奴は不気味に笑って俺の言葉を遮る。


「どうした! なにが可笑しい!」


「アーハッハッハッ!」


 この状況で笑う意味がわからずに怒声をあげる俺を見て、フレーダーは更に大きな声で笑い始める


「お前がそのヘルメットの下でどんな顔をしているか分からんが、勝ち誇った間抜けな顔をしていると思うと可笑しくてな」


「……現に勝っているからな。負け惜しみは――」


「危ないぞ! 後ろ!」


 突如聞こえた男の声に反応して後ろを振り向くと、首の無い機械人形がふらつきながらも立ち上がって俺に銃口を向けていた。


「このッ!」


 炎を放ち、銃口を焼き尽くす。

 更にそのまま機械人形を炎で包みこみ、爆発によって機械人形を破壊する。


「隙ありだ!」


「しま――」


 機械人形に気を取られていた隙に起き上がっていたフレーダーに胸倉を掴まれたかと思うと、そのまま勢いよく投げ飛ばされる。


「ぐっ……」


 地面に体を打ち付けた衝撃で、思わず呻き声が漏れる。

 ……駄目だ、痛みで倒れている時間なんてない。

 何とか立ち上がって戦闘態勢をとりつつ、視線を先程声がした方へと移す。

 ……二郎と委員長がカフェの入り口にいて、鳥野さんが二人を店内に連れ戻そうとしている。


「あ、アンタ達! 危ないから安全な場所に――」


 二人の姿を見て思わず叫んだ俺を見て、フレーダーは起き上がる。


「俺の邪魔をしやがったな! アイツ等、タダじゃ済まんぞ!」


 不味い!

 激昂するフレーダーの様子を見て、二郎達に向けて走り出す。

 フレーダーが二郎たちに向けて超音波を放つと同時に、俺は二郎達を守る為に彼らに背を向けて立つ。

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