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3話‐5

 フレーダーは俺の蹴りを受け止めるが、その衝撃で姿勢が崩れたのを見逃さない。

 着地した俺は姿勢を崩したフレーダーへと間髪入れずに何度も拳を叩きこむ。


「その程度か、ヒーロー!」


 ……だが、連撃を受けた筈のフレーダーは大して痛がる素振りを見せずにそう言い放つと、至近距離から超音波を発する。

 俺は避ける事もできず、衝撃によって吹き飛ばされてしまった。

 ……奴の戦闘服、耐燃性だけじゃなくて防御面にも優れてるようだ。


「ズルいな。俺のスーツより上等な物を着てるじゃないか」


 痛みに耐えながら立ち上がり、何とか攻略法を探すべくフレーダーを見据える。


「羨ましいか? お前も俺達の仲間になれば、今身に付けているちんけな装備なんかじゃなくてもっと強い装備で暴れる事ができるぜ」


 ……コイツもスピネと同じように俺の事を仲間に誘うのか。


「断る。スピネにも言ったけど、お前らみたいに変なコードネームを名乗らされるのは御免だ。名前位は自分で決めたい。それに、このスーツは結構気に入ってるんだ」


 フレーダーの誘いを即座に突っぱねる。

 犯罪者の仲間入りするくらいなら、初めからヒーローなんて目指す訳が無い。

 ……とはいえ、どうやってこの状況を打破したものか。

 一度退いて対策を練って出直すのもありだが、スピネの時みたいに白昼堂々暴れられても困る。


「俺としてはお前がいなくても構わないんだが、ボスはお前の事を随分と買っているみたいだからな。強引にでも一緒に来てもらうぜ!」


 フレーダーはそう言うと、俺目掛けて再び超音波を放つ。

 即座に飛び退き、襲い来る超音波を間一髪の所で回避していく。

 ……ここは、一度撤退した方がいいか?


「おっと、コンビニの中には人質がいる。お前が逃げだしたら、人質がどうなるかわかるよな?」


 ポケットに収まっているバイクの入ったケースに手を伸ばそうとした瞬間、俺の考えを見透かしたかのようにフレーダーが人質の存在を俺に知らせてくる。

 ……逃げる前に人質を解放するのが先か。

 コンビニ内に目を向けるが、少なくとも視界に入る範囲には人の姿は見当たらない。

 そうなるとバックヤードで拘束されているのか、フレーダーが嘘を吐いているかのどちらかだな。


「おいおい、余所見をしてるんじゃないぞ!」


 ……確かめるしかないか。

 再び放たれた超音波を回避し、コンビニを背にできる位置まで駆け抜ける。


「逃げると思ってるなら、心外だな!」


 そして拳を大きく振りかぶり、フレーダーに向けて特攻をしかける……振りをする。


「突っ込んでくるか! 馬鹿め!」


 ……今だ!

 自身に迫る超音波、今度は避ける事なくその場で跳躍して俺自身の身で受けとめる。


「馬鹿め! 俺に近づけるとでも思っていたのか!」


 ……最初から近づく気なんて無かったんだけどな。

 遠距離から一方的に攻撃できるのなら、その優位性を保つために超音波で攻撃を行うのは自明の理。

 だったら、逆に利用してやればいい。

 フレーダーの勝ち誇ったような台詞を聞きながら超音波に吹き飛ばされた俺が向かう先は、コンビニの中。

 ガラス片まみれの床に落下してしまわないように、小規模の爆発を起こして俺自身を店内の奥まで吹っ飛ばす。

 途中にあり商品棚の上を通過し、奥にある冷蔵食品棚まで吹き飛んでいく。

 ……今の爆発と、俺が突っ込んだ衝撃で店の商品が幾つか駄目になってしまったかもしれないが、人質解放の為だし仕方ない事だろう。


「ぐっ……。爆発の衝撃はいつまで経っても慣れないな」


 ……わかっていても痛い事には変わりがない。

 フレーダーと距離を離すことはできたが、すぐに様子を見に来るはず。

 爆発の衝撃や躰を棚に打ち付けた事によって生じた痛みを堪えながら、フレーダーにこちらの行動を悟られないようにバックヤードまで身を屈めて駆け抜ける。


「おい、大丈夫か」


 バックヤード入り口の扉を開き、人質の安否を確認する。

 俺の目の前には三人の店員と、偶然居合わせて巻き込まれてしまったであろう二人の客が床に転がされていた。

 皆一様に手足を拘束バンドで縛られて身動きが取れず、口もガムテープで塞がれており声を上げる事も出来ないようだ。

 ……声をかけても反応が無い。

 慌てて近寄って安否を確かめると呼吸はしているようで、外傷も見当たらない事から気絶しているだけだとわかり一先ず安心する。

 ……さて、これから彼らを安全な場所まで連れていく必要があるが、一度に全員を運ぶ事はできない。

 どうしたものかと考えていると、先程まで気絶していた筈の客の一人と目が合ってしまった。

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