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3話‐3

「……実際に話を聞いても、まだ実感が湧かないな。お前が超能力者で、しかもヒーローとして活躍してたなんて」


「気持ちはわかるけど、事実だ。絶対に他言無用で頼む。特に、叔父さんと叔母さんには絶対に言うなよ。……心配させたくないんだ」


 翌日の放課後。

 カラオケボックスの個室で、約束通り二郎に俺が何故ヒーローを目指して活動していたのか、そしてその経緯の説明を終えたところだ。

 ……俺が炎を操る超能力者である事。

 世間では超能力者の立場が不安定になってきており、その状況に危機感を覚えていた事。

 その末に出した結論が、少なくとも自分だけでも受け入れてもらえるように、高校に入学した時点でヒーローとして活動を始めた事を、俺は初めて自分以外の誰かに打ち明けた。


「それにしても自分の立場の為に正体を隠してヒーローとして活動ねえ。随分と面倒くさいことをしてるな。お前の能力なら火力発電所にでもいけば、充分な立場が得られると思うんだがな」


 ……確かに、俺の能力は火種さえ用意しておけば、燃料無しで絶大な火力を出すことができる。


「そう思うだろ? だけど、あんまり長時間能力を使いすぎると疲れるんだよ。精神が磨り減っちまう」


 超能力も無尽蔵に使用できる訳ではない。

 使用しすぎると、精神的な疲労が蓄積して倒れてしまう。

 ……そもそも、核融合発電が実現して何年も経っているのだから、今更火力発電なんて時代遅れだろ。


「それに俺は普段の生活位は平穏に生きたいんだ。俺の能力がバレたら間違いなく警察辺りの監視対象になるだろうし、バレたくないんだよ。……ヒーローを目指しているのは、あくまで俺が超能力者という事がバレた時の保険だ」


「……ふーん」


 説明を聞いた二郎は、訝し気に俺の事を見てくる。

 まるで、俺の言う事を信用していないような、そんな雰囲気を感じる。


「どうしたんだよ? そんな目で見て」


「……いや、何でもない」


 ……二郎から感じた雰囲気は、俺の気のせいか?

 まあ、気のせいならそれでいい。

 それより、こっちも話したい事がある。


「そういえば委員長の事だけど、驚いたよ。まさか、あんなに行動力があるタイプだとは思わなかった」


「委員長が行動力のあるタイプ……? 何かあったのか?」


 委員長の事について話した二郎の反応は、思っていたものとは違っていた。

 何で委員長の事を話しているのか分からない様子だ。


「委員長が助けてくれたんだよ。俺とスピネっていう奴が戦っている間に、拘束されていた警官達を解放してくれたんだよ。……そういえば、委員長が危険を顧みずに動いてくれていた時に、お前は何をやってたんだよ? 昨日は委員長と一緒にいたはずだろ?」


「いや、委員長とはドーナツ屋でお茶した後にすぐ別れたよ。それに、俺が昨日の事を知ったのは一度家に帰った後の話だ。もしその場にいたら委員長の事を引き留めてたよ」


 ……言われてみれば、昨日二郎と出会った場所は、戦闘を繰り広げた場所からはそれなりに離れていた。

 どうやら本当に昨日は、早い段階で委員長と別れていたらしい。

 二郎が昨日の件に巻き込まれていなかったのにホッとすると共に、意外と慎重に考えていた事に驚かされる。

 普段の言動がうるさいので、興味があるなら危険な場所でも首を突っ込んでくるものと思っていた。


「……そういえば、委員長とはどうだったんだよ? 昨日の結果、教えろよ」


 結構早い時間に別れたみたいだから、あまり芳しい結果ではないだろう。

 本来なら触れない方が良いのだろうが、俺が二郎を焚きつけたのだ。

 俺には最後まで見届ける義務がある。


「話自体は結構盛り上がったぜ。昨日は委員長が用事があるとかですぐに解散したけど、連絡先も貰ったし、次回以降も期待できそうだ」


「マジかよ!? やったじゃないか!」


 予想していなかった結果に思わず驚いてしまう。

 そんな俺の反応を見た二郎は、にやりと口角をあげる。


「ただ、ある意味ではお前の方に脈があるかもな」


「……は?」


 あまりに突拍子も無い二郎のその言葉に、思わずドキリとしてしまう。

 ……俺と委員長が脈があり?

 委員長との接点なんて、クラスメイトだという事くらいしかないし、俺なんかじゃ全然釣り合わない。

 少しばかり動揺する俺を他所に、二郎は笑いながら話を続ける。


「予想通り驚いてるな。冴えない自分が委員長みたいな娘と脈があるって言われたら、そりゃ驚くよな」


「……色々と突っ込みたい所はあるが、聞かないでやる。結局、どういうことだよ? 思い当たる節が無いぞ」


 相変わらず妙にムカつくニヤケ面をしている二郎を問い詰める。


「俺のスクラップブックの中身を見ながら、ヒーローについて話してたんだよ。委員長もそれなりにヒーローの事を知っていてさ、話はそれなりに盛り上がってたんだが、お前の活躍を集めてたページになると、それまでよりも食いつきがよくなったんだよ」


「……ああ。つまり、普段の俺じゃなくてヒーローとしての俺に興味があるって事か」


 少し驚いたが、それなら納得できる。

 精力的にヒーローを目指しているからか、マスコミも俺の活躍を報道するようになってきてはいたし、ファンが付く事もあるだろう。

 ……がっかりなんてしていない、筈だ。


「その通り。……なあショウ、これはチャンスじゃないか?」


「チャンス? 何がだ?」


 また変な事を言い出したな。

 ……いや、コイツが普段からアホな言動をしているからといって、今回も同じようにアホな事を考えているとは限らない。

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