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2話‐7

 ヒーローとスピネの戦闘が行われた現場近くのビルの屋上から、スピネを倒して走り去るヒーローの後ろ姿を見下ろす。


『……素晴らしい能力を持っている。貴重な超能力者を捨て駒にしてまで実力を測るだけの価値はあったみたいですね』


 スピネを失う事になってしまったが、奴の様な自分の身の程も弁えない人間は組織においていずれは不和を招く。

 いずれ排除すべき駒と重要な情報を交換したと考えれば、悪い手では無かっただろう。

 ……炎を自在に操り、爆発すらも起こす事のできる強力な超能力者。

 必ずや、私たちの同志にすべき人材だ。


『……それにしても、あれほどの能力を持ちながら何故ヒーローなんて愚かな真似を行っているのでしょう?』


 小首を傾げて暫しの間、彼がヒーローとして活動する理由について考えてみるが、答えはでない。


『……まあ、そんな事を気にしても仕方ないですね。それよりも、どうやって彼を仲間にするかを考えなくては』


 地位や金銭が目的でヒーローを行っているのなら、その目的と引き換えに組織へ引き込む事も容易な筈だ。

 そうでなければ面倒かもしれないが、その時はその時で考えれば良いだろう。


*


 左の掌に付いている点火ボタンを押してみるが、点火装置が作動する事は無い。


「……完全に壊れたか」


 スピネとの戦闘後。

 バイクで戦闘現場から離れた後、人気の無い路地裏まで移動した俺はスーツの損傷具合を確認していた。

 スピネの糸弾によって破損した点火装置はこの場での応急修理ではどうにもならず、部品をほとんど丸ごと交換しなければ復元できない程に破壊されてしまっている。


「今のまま修理する位ならもっと頑丈に作り直すか? ……とはいえ、これ以上強化するには金も技術も足りないか……」


 こういう時、資金力や技術力があるヒーローなら悩む事もなく解決できるのだろう。

 しかし俺は、超能力者であるという事以外は普通の男子高校生。

 自分で勉強してスーツの改造を行うにも、限界がある。

 そもそもスーツの性能向上に用いる資金自体が、スーツの部品とバイクの購入及び免許取得。

 そして、バイクの外観を偽装するホログラム装置を取り付ける改造で尽きてしまった。


「もう一度バイトでもするか?」


 しかし、そうなるとヒーローとして活動できる時間が少なくなってしまう。


「……とりあえず、今日の所はスーツを使える状態にまで復元をするだけにしておこう」


 幸いな事に予備の部品はある為、復元するだけなら問題無い。

 そうと決まればこのまま帰る訳にはいかないし、まずは着替えよう。


「あの! ちょっといいですか! 貴方はここ最近、この辺りで活躍しているヒーローの――」


 制服へと着替える為にヘルメットを脱いだ瞬間、路地裏の入り口から凄く聞き覚えのある騒がしい声が聞こえた後、何かが落ちたような音が響く。

 慌ててヘルメットを被りなおし、声の主へと視線を向ける。


「マジかよ、ショウ。お前がヒーロー……?」


 そこには俺の友人、一条二郎が呆然と立ち尽くしていた。

 その表情は当然ながら凄く驚いており、信じられないようなものを見る目で俺の事を見つめていた。

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