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2話-3

「ショウ、これから暇か?」


 一日の授業が終わり帰り支度をしていたところを、二郎に声をかけられる。


「要件によるな。一体どうした?」


「昨日言ってたドーナツ屋の件だよ。お前のことだから待ってても連れて行ってくれないだろうし、俺から誘う事にした」


 ……そういえば、そんな事も言っていた。

 最近は友人と遊ぶ事も無かったし、パトロールへ行く前にドーナツ屋に寄るか。


「わかった。それじゃあ――」


「火走君に一条君。今、大丈夫ですか?」


 了解の返事をしようと口を開いた俺に割り込むように、が声をかけてくる。


「委員長!? 全然、問題無いよ! それで、何の用?」


 俺が反応するよりも早く、二郎が委員長に返事をする。

 ……先程俺と話していた時よりも、二割増しでイキイキとし始めたな。


「私も一緒にドーナツ屋さんへ付いて行っても大丈夫ですか? この間のヒーローに関する話を、聞かせてもらいたいと思っていたんですよ。それに、甘いものには目がありませんから。勿論、お二人が良ければですけど……」


 マジかよ、委員長。

 ヒーローに興味があるって言っていたのは社交辞令じゃなかったっていうのか!?


「俺は勿論歓迎するよ。ショウも良いだろ?」


「俺は……」


 構わない、そう続けようとした口を一度閉じて、考える。

 ……連れが一人増えるくらい、俺としては何の問題も無い。

 問題無いのだが……。


「……用事を思い出したから、二人で行ってきなよ。場所は教えるからさ」


 二郎が彼女にするなら委員長とほざいていた事を思い出したのだ。

 それならば、二郎と委員長を二人きりにしてやる方が良いだろう。

 ……二人きりにするお膳立てをしてやるのは何だか少し癪だけど、二郎が委員長と付き合えるわけないだろうし、夢くらいは見させてやってもいいじゃないか。


「ななな、何を言ってるんだ!? 委員長と二人でなんて……」


 狼狽え始めた二郎の肩に手を回し、二人で委員長から距離を取る。


「お前、彼女にするなら委員長って言ってただろ? こんなチャンス、そうそう訪れないからな。気を使ってやったんだよ」


「そんな……、俺にも心の準備ってものがあるんだぜ? それをお前、いきなりこんな……」


 うじうじと言い訳を始めた二郎の両肩を掴み、正面から向き合う。


「俺はお前ならやってくれるって信じている。このチャンスをモノにしなきゃ、男じゃないだろ?」


「ショウ……。お前、俺の為にそこまで言ってくれるのか」


 俺の話を聞いた二郎は、声を震わせて涙ぐむ。

 面白そうだから即興で盛り上げてみただけでここまで感動するなんて、すこし引いてしまうな。

 ……いや、俺にそういう才能があるのかもしれない。


「……わかった。俺、頑張るよ!」


「よし、それじゃあ行ってこい。心配するな、骨は拾ってやる」


 覚悟を決めた二郎の背中を叩き、委員長の元へと送り出す。


「応! ……おい、最後に何か――」


「あの、一体何を話しているんですか? やっぱり、急に同行しようなんて迷惑ですよね……」

 

俺達がコソコソと話す様子を伺っていた委員長が不安げな様子で口を開く。


「大丈夫! 大丈夫だよ! それじゃあ早速行こうか! じゃあなショウ! ……報告を楽しみにしてろよ」


 最後の言葉を俺にだけ聞こえるように小声で告げると、慌てた様子で委員長の元へと駆け出していく二郎を見送る。

 ……どうせ振られるとは思うけど頑張れよ、二郎。


「さて、俺も頑張るとしますか」


 ……スピネの奴が、今日も襲ってくるかもしれない。

 それまでは、いつもの様にパトロールだ。




 時刻は十七時半。

 暫くバイクで街中を走り回っていると、通知がきたことによってコンソールのランプが点滅する。 


「……まだ暗くなってないのに、随分と早いな」


 バイクを止めてコンソールのモニターに注目して、通知を確認する。

 ……通知の内容を要約すると、駅前に超能力者が現れて通行人を襲撃。

 既に警察が対応しているが超能力者は人質を取っており、手を出すことができないらしい。

 超能力者は人質解放の要求として昨晩、自分と戦ったヒーローを呼べと言っているそうだ。

 ……嫌な予感がしてSNSにアップされた画像を見ると、人質を取って何事かを叫んでいるスピネの姿が映っていた。

 ……不味いな。


「あの野郎。白昼堂々と関係ない人達に手を出しやがって」


 俺はスピネの事をよく知っている訳ではない。

 しかし、前回と前々回の戦いを俺なりに分析して、奴は悪知恵を働かせて慎重に動くタイプだと結論づけていた。

 だからこそ昨日は深追いしなかったのというのに、まさかこんな事になってしまうなんて。


「早く駆けつけないと、俺の評判が下がっちまう」


 ヒーロー活動をしている目的である、超能力者としての立場を確立するのが難しくなるのはごめんだ。

 俺の目の前で人質を傷つけさせるつもりはないが、俺が駆けつける前に人質に危害を加えられてしまっては、防ぎようがない。

 ……それに、俺の不始末で誰かが傷ついたら明日の寝覚めが悪くなる。


「頼むから人質に怪我なんて負わせてんじゃないぞ……」


 焦る気持ちを落ち着かせながら、駅前へと急ぐためにバイクを加速させた。

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