実食レポート!~ポテトチップスコーヒー牛乳味~
※これは個人の感想であり、白バラ牛乳は別に鳥取のソウルフードではない、ポテトチップス白バラコーヒー味食べてみたけどおいしくなかった/ものごっついおいしかった、などの意見を否定するものではありません。
――47都道府県のご当地ポテトチップスが、コンビニで販売されている。
そして我らが鳥取県の味はなんと白バラコーヒーであるらしい。
その情報を我々が入手したのは、3月はじめ頃のことだった。
ご当地ポテトチップス――正式名は“ポテトチップス 47都道府県の味”――は、茨城の焼きいもバター味や新潟の笹だんご味など、その地域ならではの個性的な組み合わせが楽しい、できることなら全都道府県の味をコンプリートしてみたいと思わせるシリーズである。
松葉ガニや梨、椎茸にらっきょう、豆腐ちくわ――数ある地元の名産から白バラコーヒーを選ぶというそのセンスに、我々調査班は脱帽した。
感動すら覚えた。
ここで、この感動がいまいち伝わっていないだろうと思われる他県の方々へ白バラ牛乳とは、白バラコーヒーとはどんなものなのか簡単に説明させてもらいたい。
白バラ牛乳は、地元の酪農家による農業協同組合「大山乳業」による製品。鳥取県の学校、幼稚園などの給食で出る牛乳は、まず確実に白バラ牛乳であると考えてよい。
つまり、鳥取県民は白バラ牛乳に育てられたといっても過言ではないのだ。
牛乳としてはおそらく標準的な、あまり癖のなくさらっとした味わい。国内大手の乳業メーカーのものと比べると、たしかにお値段はやや高めだ。
しかし、それに見合うだけの、いや、むしろそのお値段を凌駕しているのではないかというほどの、圧倒的な品質。
「ごめんください、○治牛乳の宅配はいかがですか」
「あー、ごめんねぇ。うちの子、白バラじゃないと体調悪くしちゃうのよ」
「あっ、ですよねー。そうおっしゃるお宅、すごく多いです……」
牛乳宅配の勧誘に来た業者と、こんな会話を交わすのもよくある光景だ。
スーパーで白バラ牛乳が特売になる曜日は、店頭から白バラ牛乳が消え失せる。
帰省した家族が朝食に白バラ牛乳を飲み、「ああこの味だ」と感激する。
そんな、鳥取県民の生活……遺伝子、いや魂に根付いた味なのだ、白バラ牛乳は。
そして、この白バラ牛乳をたっぷり使用して作られたのが白バラコーヒーである。
いつまでも変わらない味、しっかり甘いけどしつこくはなく、コーヒーと白バラ牛乳のマイルドな風味が絶妙なハーモニーを奏でている。鳥取に来たら、もしくはこれを取り扱っている店を見かけたらぜひ試していただきたい逸品である。
驚くべきことにこちらの商品、香料やカラメル色素、乳化剤といったものが使われていない。
原材料名:生乳、コーヒー、果糖ブドウ糖液糖――以上。このシンプルさであの味。なんということだろう。
風呂上がりにコーヒー牛乳――鳥取県民が選ぶのは、もちろん白バラコーヒー。
――さて、そんな、地元民にこよなく愛されている白バラコーヒーがCalbeeのポテトチップスとコラボした!などと聞かされたからには、なんとしてもこれを入手、検証せずにはいられない。
使命感に燃える我々調査班は、まずポテトチップス白バラコーヒー味の目撃情報を募ることにした。
K氏「ああ、それならつい3日前、近くのローソンで見かけましたよ」
なんという幸運か、その証言は調査班のスタッフであるK氏によってもたらされた。
早速現地に走るスタッフ。
K氏の自宅から車で約3分の距離にあるコンビニにて、我々は無事実際の商品を手に入れることに成功したのである。
まずはパッケージを観察する。
ポテトチップスの写真がプリントされた上部にお馴染みのロゴ、コーヒー牛乳色をした帯で区切られた下は、白バラコーヒーのパッケージにも描かれている素朴なタッチの牧場の風景。
ポテトチップス感を殺さず、かつ白バラコーヒー感を表現した、なんとも素晴らしいデザインであるといえよう。
だがしかし、肝心なのはパッケージではなく中身、味だ。
白バラコーヒーとポテトチップスが、いったいどのような融合を果たしたのだろう……。
我々はそっと袋を開いた。
途端に鼻腔を刺激するコーヒー牛乳の香り。いや、これはただのコーヒー牛乳ではない、あの白バラコーヒーの香りだ!
一見なんの変哲もないポテトチップス――コンソメ味に比べるとやや黒っぽいシーズニングがかかっている――から白バラコーヒー感がむんむんと漂っているという、ある種異様な光景に恐れおののきながら、ぱりっと一枚。
まず感じたのは、口いっぱいに広がるコーヒー牛乳の味と香り。甘い! ポテトチップスは多少甘くともある程度の塩味がするものだ、という固定観念を覆す甘さ!
そしてこのコーヒー……あの白バラコーヒーのマイルドさをがんばって再現している。ほんのわずか、白バラコーヒーよりコーヒーの苦さや酸味が出てしまっているようにも感じるが、誤差の範囲と言ってしまっていいだろう。
特筆すべきはコーヒー牛乳の“牛乳”部分。もうこれ以上ないほどに白バラ牛乳なのである。白バラの味に慣れきってしまった贅沢な県民の舌が、一切の違和感を覚えず、「あ、これは白バラコーヒーだ」と認識した。
――食べ終わったあと原材料名を確認していて「全粉乳(白バラ全粉乳100%使用)」とあるのに気づいた。なるほど。
……な、なるほど、白バラ全粉乳……?
スタッフは、ここに大山乳業とCalbeeの本気を見た。
このすぐあとに続くのはほのかな塩味。それも、白バラコーヒーの風味の邪魔にならない程度のごく控えめな塩分だ。
そして少しずつ薄れていく白バラコーヒー味と入れ替わりにポテトチップス本来の味が顔を出す。
噛めば噛むほど感じるポテトの旨味は、さすがCalbeeとしか言いようがない。
意外な、しかしなかなか悪くない取り合わせに満足して飲み込むと、かすかに残る白バラコーヒーの香りが閉じた口から鼻へと通り抜けていく。
最後に舌に残った甘さ(これはおそらくステビアといった砂糖以外の甘味料)に、つい次の一枚を、さらにもう一枚をと、あっという間に55g入りの袋は空になった。
おやつに白バラコーヒーとポテトチップス――ともまた少し違う、これはまさに「ポテトチップス白バラコーヒー味」であった。
ポテトチップスからコーヒー牛乳味がするという未知の体験をしてみたいならぜひ食べてみるといい。しかし、けっしてこれが不味いというわけではないが、白バラコーヒーとポテトチップスうすしお味を別個に食べるほうが絶対においしいだろう(少なくとも、いち県民としてはこちらをおすすめする)との結論をもって、今回の調査は終了としたい――
たぶんもう買わない。