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俺の小説の9割が下ネタで親に見せられないんだが

作者: 大天使 翔

 俺はとある高校1年生の漢。


 俺の夢は小説家になることだ。


 ついさっき長編小説を書き上げたんだが、俺は気づいてしまった。


・・・俺の小説って9割下ネタじゃね?


 徹夜で書き上げたので、今は学校にいる。とある新人賞に応募しようと思い、あの小説を書き上げた。 


 応募要項には「未成年の方は保護者の同意を得て応募してください」と書かれてあった。どう見ても、あの小説は親に見せられる代物ではない。しかし、半年もかけて作った小説だ。出さないのも忍びない。俺は、ずっとそのことを考えながら帰宅した。


「おかえり」と言う母に微妙な相槌を打ち、2階の自分の部屋に上がる。そして、原稿を再度見てみる。・・・うん、我ながらに面白い。というか、今までの中でも最高傑作だと思う。


 展開を知っていても、自分のギャグに思わず笑ってしまう。これはもう出さない手はない。これなら、本当に小説家になれるかもしれないんだ。バレてもしょうがない。な~に。何とかなるさ。


 俺は原稿を封筒に入れ、ポストに投函した。その時は、とても満足した気分だった。しかし、1ヵ月後・・・


「何で俺出しちゃったんだろう」と口に出すほどの後悔が心を支配していた。小説家になった後はテレビとかにも出て、俺の名を知らしめようと思って、ペンネームも本名で出してしまった。


 しかも、親にばかり読まれることばかり気にしていたけど、世間の人に俺の小説が読まれることは想定してなかった。親に気を取られすぎた。


 こんな恥さらしの小説出しといて本名でテレビなんか出たら2チャンネル民の餌にされてしまうやないか。・・・まぁでも、あんな下品な小説が賞なんか取れるわけないでしょ。


 そんな考え抱いていた俺に「1次選考を通過しました」という知らせが届いた。


 半信半疑だったが、うれしくもあり、微妙な感情を抱いた。しかし、1次選考は編集者が応募作品全部の原稿をチェックして、気になった小説を「とりあえず」残しておこうという感じなので、目立っていて文章がきちんとしていれば大体通るそうだ。少しうれしかった俺でも、どんなにまぐれでも次はないだろうと思っていたのだ。・・・思っていたのだ。


 2次選考を通過してしまった。


「おい、嘘だろ」と思わず呟いてしまった。正直うれしいのはうれしいのだが、全く予想だにしていなかった。ポストに投函した時は、いい気分だったが、どうせ落ちるだろうとも心の奥底で思っていたのだ。


 しかし、ここで一つの事実に気が付く。まぁ1万歩譲って2チャン民のおもちゃになるのは受け入れよう。しかし、そうやって知名度がつくと嫌でも親は読むはず。というか、息子が作った小説を読まない親なんているだろうか。いや、いない。


 ・・・え?なんでそんなに親に見られるのは嫌なのかって?そりゃぁあんた、あんただって友達とエロい話は出来るけど、親とは出来ないだろ?そういうことなんだよ。


 そして「3次選考を通過しました」というこの世で最も無情でうれしくない通知が届いた。


 いよいよ現実味が帯びてきた。3次選考通過とは、応募された全小説の0.4%に相当する。数多の小説を読んできた編集者達の「慧眼」と「情熱」が入り乱れた会議により、ふるいにかけられた小説の中でも多くの編集者の支持を集めた小説のみが残ることができる。ハッキリ言って、まぐれで残れるはずはない。


 俺は、今まで何度も書くことを諦めてきた。しかしその苦悩が今、報われようとしている。最初にメールを見た時は「もうだめだ」と思ったが、俺の苦労を思い返してみれば、俺の性癖が親や世間にバレることなんて屁でもない。


 どんな形であろうと、これは俺の努力の結晶なんだ。そう思うと、俺は身も心も裸になったような、清々しい気持ちになった。 


 そして、1ヵ月後


 俺はある日、アニメを見ていた。すると、知らない電話番号から電話がかかってきた。「なんだよおい、今いいところなんだよ」と毒づきながら応答すると、電話越しから30代くらいの爽やかな印象を思わせる声が聞こえてきた。


「あの、○○出版の○○と申します。○○さんの電話で間違いないでしょうか?」


「は、はい・・・そうですが、もしかして・・・」


「・・・はい。受賞おめでとうございます。あなたの作品「ビッチ×スケッチ×お尻合い」は銀賞に選ばれました」


 本当に受賞してしまった。俺は目の前の現実に付いていけず、しばらくポカーンとしていた。


「あの・・・俺なんですよね・・・俺なんですよね!?」


「はい、そうです。つきましては、弊社との契約や出版に関してなど、確認事項がありますので、3日後の午後1時、弊社に親御さん同伴で来てもらいたいのですが、ご都合はつきますでしょうか?」


 喜びも束の間、もう一つの現実に気づいてしまう。そう、もうこうなったら母に見せる以外に方法はない。


「すいません、確認するので、折り返し電話をさせてください」


 編集者っぽい男性は、分かりましたと言うと、自分の電話番号を伝えて電話を切った。俺の心の中には、喜びと、早く母に伝えたいっていう気持ちと、恥ずかしいっていう気持ちと、とにかくいろんな感情がうずまいていた。


 でも、とうとう来たんだ。言うべき時が。俺は、心の踏ん切りがつくと、アイロンをしている母のもとに出しに行った。


 母は、いきなり分厚い紙の束を渡されて困惑していた。そして、俺が事情を説明すると、母は「なんでずっと黙っとったん!?・・・まぁいいわ。とりあえず読むわ」と言い、かなり驚いた様子だった。


 俺は部屋に戻ろうかと思ったが、読み終えるまで母のそばで待つことにした。目の前で自分の性癖が暴露されている。男なのにBL好きなのがバレてしまう!


 俺は目を閉じ、正座をして、体をそわそわさせたりいろいろなことを考えながら2時間ほど待った。


「読んだよ」


「え!?あ、うん・・・その・・・どうだった?」


「面白かったわよ。思わず笑っちゃったし」


「え?本当に?・・・自分の息子がこんな・・・こんな卑猥なことを書いてるのに?」


「そうね・・・あんた・・・いつも机の上にティッシュが散らかってたからまぁ薄々感づいていたわよ。まぁ男の子で、年も年だしねぇ」


「うそ・・・バレとったんか・・・」


「何?もしかして私に黙っとったのってこれが理由?ハッハッハ!あんた馬鹿ねぇ。男の子も女の子もみーんなこうゆうことを知って大人になっていくんだから。じゃないとあんたも生まれてないでしょ。ハッハッハ」


 甲高い笑い声を交えながら、母は陽気に言った。


「まぁでも、あんなに可愛かったあんたがこういうことを想像するのはちょっとショックだけど・・・いいのよ。私の願いはあなたがただ健やかに育ってほしいだけ。あなたはありのままでいいのよ。他人の目なんて気にしなくていい。ありのままでいていいのよ」


 この瞬間、俺の心の中のもやもやは吹き飛んだ。不意に流れ出した涙を拭うと、俺は母に抱きついた。


 母は、いつも部屋に閉じこもっている俺を見捨てたわけじゃなかったんだ。俺のことを認めて、あえて何も言わなかっただけだったんだ。僕は延々と泣きじゃくった後、最後にこう言った。


「お母さん、ありがとう」

こんにちは。大天使 翔の一人、Sと申します。前作、前々作と謝罪文を載せてしまい、恥辱の極みでしたので、今回は短編にしました。見てくれてあざす。この小説は自分がもし小説家になったらこうなったりするのかな、早く小説家になりたいな(泣)という思いを込めて書きました。楽しめましたか?感想とかブックマークとか評価とかくれたら喜んじゃいます!それでは!

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