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変態の証明。  作者: チラリズム
9/25

二人2


【ちょっと居ません】

 あまりにも簡潔かんけつした内容のメモが保健室に残されていた。

 学園全体の保健の管理を任されていて、居るはずの先生がいない。そのことに優子は軽く戸惑いを見せたが「さて、と」という言葉が微かに聞こえたことにより、瞬時に愛花に目をやる。

 なんのことやら、と言わんばかりに彼女は故意に目をそらした。


「愛花ちゃん」

「たまたまよ……」

「愛花ちゃん!」


 頬を膨らます優子、それを見た愛花はあっさりと白状した。


「先生はね、この時間になると職員室にコーヒーを飲みに行くのよ。ちゃんと調べてあるの」


 過剰かじょうな愛のために徹底する愛花。そんな彼女に、心を開いて受け入れる前の優子なら顔色を変えて怯えていたかもしれない。

 しかし、今の彼女は恥ずかしがる素振りを見せながら、その場で立ち尽くしている。

 包み込むような愛に触れ、圧倒的な魔女の誘惑に敗北しているのかもしれない。

 そのまま手を引かれ、ベットまで導かれ、間仕切りカーテンを閉めた瞬間。我に返った優子は声を上げる。


「愛花ちゃん。ごめんなさい。……私そろそろ戻らないと」


「…………」


 ベットの上に招き損ねた彼女は、上目遣いで黙り込んだ。

 優子はひたいに汗をにじませ、少し震えた声で戻ることをもう一度告げると、申し訳ない思いを胸にいだきながらカーテンを開けようとする。

 愛花の気持ちは嬉しいが。これ以上、教室へ戻らないと生徒達に怪しまれるかもしれない……と、優子の考えは妥当だとうである。


「……恋人なのよ。恋をするのよ」


 歯がゆい気持ちで思わず言葉に出し、表情を曇らせる愛花。


 ――突然。強い力で引き戻された優子は唇に温もりを感じた。

 今までよりも濃厚で長い口づけ。

 聞こえてくる時計の針が刻む音。

 望んでいないキスに優子は目尻に涙を浮かべた。

 その感情が伝わったのか、自ら離れる愛花だったが、彼女の表情はまだ曇ったままである。


「いや、優子……行かないで……」


「愛花ちゃん……?」


 寒気を感じてしまう優子、その体は次の瞬間、ベットの上に倒れ込んでいた。


「――ッ!」


 “愛花に押し倒された……”。

 そのことに驚きを隠せない優子の首元には、今まさに愛花の両手がせまっていた。

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