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変態の証明。  作者: チラリズム
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二人1


 気持ちのいい晴天の下、校舎裏の木の側で二人の女性が抱き合っている。

 春の季節。この時期に咲く桜にも劣らない美しさがそこにあった。


「ねぇ優子。私のこと好き?」

「ぁ、黒原さん……ここでは」


 学園内では名前で呼び合うことを避けたいと思っていた優子は困り顔で愛花に詰め寄るが、


「ううん、やっぱりなんでもない。好き、大好き」

「そ。どこが好き? 答えて……」


 二人だけの秘密の時間。

 特別を共有できなかった今までの日々を穴埋めするかのように、短い中休みだろうと目一杯に愛を堪能たんのうする。


「……目が好き。見られるとゾクゾクする」


 そう答えると、二人は静かに唇を重ねる。

 何度も交わし合い、その度に幸せを噛み締めた。


 穏やかな風が吹くなかで、優子は咄嗟とっさに自分の唇に人差し指を当てて愛花の唇が触れるのを阻止する。

 授業が始まる時間が近づいていた。

 残念そうな表情をする愛花を見て、仕方がないよ、と優子は首を横に振る。

 そして二人は肩を並べて歩き出した。本当は手を繋ぎたかったし、もっと寄せ合いたかった。

 もどかしい気持ちのまま、二人は教室に戻る……。


『純真な女の子』

 なにも知らない者が見れば、誰もが二人のことをそう思うだろう。

 彼女達の心の中に闇が隠れていることは誰も気づいていない。



「先生、すみません……少し具合が」


 授業中。一人の女子生徒が手を上げ、教師に体の不調を申し出る。

 ……黒原愛花。彼女だった。

 普段から健康的な体を主張していただけに、ざわつくクラスの生徒達。


「わかったわ。西島さん、お願いできる?」

「――はっ、はい!」


 急に呼ばれて緊張したのか、優子は若干声を裏返らせて席を立つ。どうやら彼女は保健委員のようだ。

 愛花を連れて教室を出ようとするが、その前から感じていた視線、それは明らかに優子を意識している愛花のものだった。

 これはもう体調不良の信憑性しんぴょうせいが薄くなる。

 廊下を出て二人きりになると、すぐに優子は確認の意味も込めて注意した。


「ダメだよ愛花ちゃん。よくないよ」

「ふふっ……いいじゃない、一度くらい授業をサボってみたかったの」


 それを聞いて優子は少し呆れた顔になる。

『もしバレたら怒られちゃう』

 そう思いながらも愛花の後をついて行くしかなかった。

 愛花は胸の辺りで腕を組みながら、優子の少し前を歩いていたが、誰も見ていないのをいいことに、彼女の手を握り、そして保健室へと向かうのであった。

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