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変態の証明。  作者: チラリズム
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産声3


 自分の誕生日やクリスマスのプレゼントに欲しい物が無かった。

 それでも子供らしくしなければならないと思い、いつも両親にはそれらしい物を買ってもらう。

 だけど、私にも本当に欲しいモノが出来たのだ。

 母親に駄々をこねるように言いたい。


『西島さんが欲しい。すごく欲しい』


 なんて。そんな最低で汚らわしい、私のわがまま……。



「うん、いいよ。じゃあ今日は公園で」


 西島さんから了承を得る。

 学校の掃除の時間。ゴミ捨て当番だった私達は、各自の教室からゴミの入った袋を持ち出し、一緒にゴミ捨て場の前で帰りに寄る遊び場所について話していた。

 そんな時でも私の頭の中では、人気ひとけの無いこの場所で、彼女を押し倒したいと考えている。

 今はこれだけで幸せだった。



 学校の帰り。

 西島さんが住んでいるマンション近くの公園。そこで私達は二人で遊んだ。

 遊ぶといっても、歩くのも食事をするのも、全てがゆっくりで少し危なっかしい西島さんが相手だと、ほとんど遊具を使うことはない。

 程無くして公園のはしにあるベンチに座りお話しをする。


「高校生なんだ、黒原さんのお姉さん」


「うん。もうすぐ大学生、そしたら一人暮らしをするみたい」


 他愛のない会話。

 吸い込まれるような西島さんのその瞳。たったそれだけで私を夢中にさせた。

 私と顔を合わせるだけで表情を明るくする彼女と、死んだ動物を邪険じゃけんに扱う魔物のような私。

 ……釣り合わない。誰が見てもそう思う。

 でも、私には分かる。彼女の中にある私と同じ闇を、本当の彼女を引きずり出したい。そうすればもっと仲良くなれる。


「……!、……黒原さん?」


 ――しまった。踏み込みすぎた。


 理性を失い、私は本能のままに西島さんの手を握りしめていた。


「ご、ごめんなさい!」

「ううん大丈夫。ちょっとびっくりしただけだよ」


 慌てて私は手を離す。

 あせってはいけない。

 私が彼女に特別を感じたように、今はまだ微々たるものでも、彼女も私に特別を感じているはずだ。同じ“匂い”のする唯一無二の私を。

 いつか彼女は私を求める。

 その時まで観察をしながら待とう。


「西島さん……駄菓子屋さんが近くにあるの、行ってみない?」

「……うん」


 あなたはまるで爆撃機。とても危険で愛おしい。

 改めて実感する……。

 西島優子。私はこの娘が欲しくて、壊したくて、殺してみたい。他の人間なんて知るものか。

 ――私は今日、怪物になった。


 ……“優子”は。

 しばらくの間、他の生徒と同じように私と接してくるだろう。

 友達として、学校で何気ない会話をし、時には遊び、次第に距離をとる。

 数年で会わなくなるのが一般的な人間によくある現実。まれに友人関係として長く続くこともあるが。

 きっと私達は永遠になれる。

 私が欲しい彼女にまた会える。必ず一緒に愛し合える。

 私の優子に会うのが待ち遠しい。

 この時の私はどんな顔をしていたのだろうか? きっと悪魔のように幸せな顔をしていたに違いない。

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