産声3
自分の誕生日やクリスマスのプレゼントに欲しい物が無かった。
それでも子供らしくしなければならないと思い、いつも両親にはそれらしい物を買ってもらう。
だけど、私にも本当に欲しいモノが出来たのだ。
母親に駄々をこねるように言いたい。
『西島さんが欲しい。すごく欲しい』
なんて。そんな最低で汚らわしい、私のわがまま……。
◇
「うん、いいよ。じゃあ今日は公園で」
西島さんから了承を得る。
学校の掃除の時間。ゴミ捨て当番だった私達は、各自の教室からゴミの入った袋を持ち出し、一緒にゴミ捨て場の前で帰りに寄る遊び場所について話していた。
そんな時でも私の頭の中では、人気の無いこの場所で、彼女を押し倒したいと考えている。
今はこれだけで幸せだった。
◇
学校の帰り。
西島さんが住んでいるマンション近くの公園。そこで私達は二人で遊んだ。
遊ぶといっても、歩くのも食事をするのも、全てがゆっくりで少し危なっかしい西島さんが相手だと、ほとんど遊具を使うことはない。
程無くして公園の端にあるベンチに座りお話しをする。
「高校生なんだ、黒原さんのお姉さん」
「うん。もうすぐ大学生、そしたら一人暮らしをするみたい」
他愛のない会話。
吸い込まれるような西島さんのその瞳。たったそれだけで私を夢中にさせた。
私と顔を合わせるだけで表情を明るくする彼女と、死んだ動物を邪険に扱う魔物のような私。
……釣り合わない。誰が見てもそう思う。
でも、私には分かる。彼女の中にある私と同じ闇を、本当の彼女を引きずり出したい。そうすればもっと仲良くなれる。
「……!、……黒原さん?」
――しまった。踏み込みすぎた。
理性を失い、私は本能のままに西島さんの手を握りしめていた。
「ご、ごめんなさい!」
「ううん大丈夫。ちょっとびっくりしただけだよ」
慌てて私は手を離す。
焦ってはいけない。
私が彼女に特別を感じたように、今はまだ微々たるものでも、彼女も私に特別を感じているはずだ。同じ“匂い”のする唯一無二の私を。
いつか彼女は私を求める。
その時まで観察をしながら待とう。
「西島さん……駄菓子屋さんが近くにあるの、行ってみない?」
「……うん」
あなたはまるで爆撃機。とても危険で愛おしい。
改めて実感する……。
西島優子。私はこの娘が欲しくて、壊したくて、殺してみたい。他の人間なんて知るものか。
――私は今日、怪物になった。
……“優子”は。
しばらくの間、他の生徒と同じように私と接してくるだろう。
友達として、学校で何気ない会話をし、時には遊び、次第に距離をとる。
数年で会わなくなるのが一般的な人間によくある現実。稀に友人関係として長く続くこともあるが。
きっと私達は永遠になれる。
私が欲しい彼女にまた会える。必ず一緒に愛し合える。
私の優子に会うのが待ち遠しい。
この時の私はどんな顔をしていたのだろうか? きっと悪魔のように幸せな顔をしていたに違いない。