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変態の証明。  作者: チラリズム
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産声2


 生徒が寄り付かない場所だと安心し、油断していた。


 無垢むくな瞳、妖精のような肌。この時の私の目には、全ての人の顔にモヤがかかったように見えていて、見れたものではなかったし見ようともしなかった。

 だけど彼女は違う。何故だろう? はっきりと表情を確認できる。


「……生きてないの?」

「そうよ。私が殺したの」


 悲鳴をあげて逃げ出すものだと思っていた。


「手に、血が出てる」

「……平気よ、こんなの」


 なんなのこの子?


「埋めなきゃ、ウサギさん。手伝うね」



 ――衝撃が走った。

 神様からの福音ふくいんが聞こえたような気がした。

 普通ならばウサギが死んだことに悲しみ、涙を流してもおかしくない。

 彼女は私に似ている。いや、私そのものだ。


 私と彼女は手に泥を付けながら黙々と地面に穴を掘る。

 殺したウサギの墓を作り、埋め終わると立ち上がり、手に付いた泥を払った彼女は私の顔を見て天使のような笑顔を見せた。


「私の名前は西島優子。四年三組。よろしくね」


 私の中で何かが壊れる音がした。

 “特別”をみつけた。これは恋だ。体の震えが止まらない。


「……私は黒原愛花。一組よ」


 胡蝶蘭こちょうらんという花がある。花色の種類が多いその花には『純粋な愛』という花言葉があるそうだ。

 神様に願う。純粋さが欠けた、粗悪品のような私にも、どうか彼女を愛する事を許してください、と。



 下校の時刻になり、私と西島さんは一緒に帰ることにした。

 西島さんが“あのこと”をクラスの誰かに、もしくは教師に話してはいないか……そんなことは、彼女の笑顔を見ると考える必要はなくなった。

 友達との久しぶりの帰宅。二人でお話をした。

 話の内容は、西島さんがこの夏に転校してきたこと、引っ越して来た家の場所、趣味の読書。

 この時の私はどんな顔をしていたのだろうか? 私のことはほとんど話していない。


「……私の家、こっちだから、また明日ね黒原さん」


 私と西島さんは別れ道で手を振り別れた。

 ランドセルを背負った彼女の後ろ姿を目で追いながら、惜しむ気持ちを抑える。


 …………。

 あの子の、あの子の首を絞めてみたい。

 あぁ……早くあの子を襲いたい。

 私は西島優子を“好きになった”。

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