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変態の証明。  作者: チラリズム
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産声1


 人の形をしたモノが嫌いな時期があった。


 小学校四年生。秋が終わりを告げる頃。

 私の両親は至って普通で、客観的に見ても平凡な家庭。そんな環境で私は育った。

 つまり、純粋さを置き去りにしたのは私の意思だったことに間違いはない。

 十歳の私は、とにかく嫌で。親戚や知人、近所の他人、もちろん家族にも愛想を振り撒く。

 いい子をあえて演じ、人と接するのを避けた。問題は起こさない。

 仲の良い友達もいない。少しは関わりのある同級生もやがては話しかけて来なくなった。

 生きながら死んでるような日々。私が選んだ選択。

 それでも人間とは不思議なもので、何かで埋めたい気持ちが湧いてくる。

 そして。私は狂っているのだと肯定こうていする“あの日”が訪れた。



 私が通う学校には、昼間でさえも日差しの入らない場所がある。

 飼育小屋の裏手に広がる雑木林。そこは昔からオバケが出るなどの噂があり、薄暗くて生徒は滅多に寄り付かない。孤立している今の私には適した場所。


「…………」


 そこで私は残忍な試みをする。

 飼育小屋にいた白いウサギを一羽連れ出し、ためらいなく首を絞めて殺した。

 残酷だと分かっていても、この時の私は止まらなかった。

 感じたのは達成感だと思う、だけどすぐに虚しくなった。


『……私、なにをしてるんだろう』


 地面に倒れるウサギを見下ろしながら私は思った。

 この瞬間に自覚する。

 闇が私に近づいて、私も闇に近づいた。そして私はその身に怪物を宿した。

 抵抗してきたウサギの爪で傷つけられた手。その痛みを残留させながら、雑木林を出ようとする。

 その時、ようやく私は彼女に見られていたことに気づいたのだ。


「そのウサギさん……死んでるの?」


 これが私と西島優子との出会いだった。

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