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変態の証明。  作者: チラリズム
23/25

証明2



 ……ひび割れた風景。


 鳥かごに入れられたあなた。

 でも安心して。私が解き放ってあげるから。



 優子が入院して三日が経ち、二学期を明日に控えていた。

 その夜。愛花の姿は面会時間をとうに過ぎた優子のいる病室にあった。

 病院には看護師と寝静まった患者が数名いたが、今夜は一際ひときわ静かで暗い廊下には人気がなく、偶然が重なった結果、彼女の侵入を許してしまったのだ。

 後悔はない。尊厳を保てていない。不安定で完璧な愛花は、ベットの上で眠る優子を見下ろす。


「ねぇ優子。二人でどこか遠くへ行きましょう」


 悪戯いたずらをした少女のように無邪気に笑う。


「……優子。一緒に死んでくれる?」


 彼女の声が二人きりの病院によく響いた。

 いつ戻るかも分からない優子の記憶。

 黒原愛花は我慢しない。ゆっくり壊れるなんてもう待てない。

 その時。優子は目を覚まし、ゆっくりと体を起こす。

 すぐに誰かがいることには気づいたのだが、眼鏡は駅のホームでの一件で壊れてしまったため手元にはなく、すぐには判断できないでいる。


「……く、黒原さんなの?」

「…………」

「どうして、ここに?」


 怒りとも悲しみともわからない感情が込み上げる。今の彼女を否定し、優子ではない“優子”の首を力一杯に絞めながらベットに押し倒した。


「黙れ! お前じゃない。お前なんかいらない!」


 あの時の、保健室での時とは明らかに違う純粋な殺意。

 ギシギシとベットは何度も音をたて、助けを求めてナースコールに手を伸ばす優子を妨げ、殺すことだけに集中する。


「お前は私の気持ちを踏みにじった。優子は私のそばにいなきゃダメなのよ! 返しなさい!」

「やめ、て……死にたくない!」

「返して!」


 そして彼女も姿を現した。どこからともなく、ウサギの被り物をした“愛花”がソレを見て囁く。


『口先だけなら誰だって恋をするわ。愛しているなら殺して。首の骨が軋む音、命を乞う声、絶望し、生にしがみつき、もがき苦しむ彼女の姿を』


 ーーーー。

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