狂喜1
この学園では学問向上を目指し、生徒同士の闘争心を高めるため、学年ごとにテストの順位が発表される。
発表されるのは上位三十人までで、廊下の壁に貼り出され、そこには私の名前や優子の名前も書いてあった。
でも私はこれが嫌いだ。
互いに調整することはできない。仕方がないとはいえ、私の隣に優子の名前が無いからだ。
私と彼女の間にいる生徒が、邪魔な存在だと見てしまうからだ。
◇
日曜日、雨の日の正午。
“愛花の部屋”には愛花と優子の姿があった。
人目を忍ぶ必要もない二人だけの世界。
二人はベッドの前にある低い円形テーブルに教科書やノートを広げ、カーペットの上に座り、そこで勉強をしたり、集中力が切れればトランプなどをして遊んだ。
雨が降っていなければ、外へ出てデートがしたかったのだろうが、これはこれで楽しくて、なにより一緒にいれるなら何処でも構わなかった。
部屋の中は普通の女の子らしく、インテリアにこだわった部分もあり、お菓子をのせたお皿やジュースの入ったコップも可愛らしい。
……優子は思案しながら、視線を斜め上に走らせて、答えが分かると問題の解答をノートに書く。
正解する度に愛花はご褒美のキスをしたが、間違えても励ますために結局は彼女にキスをする。
ゲームをすると手加減をしない愛花は、負けて悔しがる優子を小馬鹿にして微笑み、事あるごとに彼女の仕草を「可愛い」と言いながら愛撫するのであった。
しばらくして。
トイレを借りることを告げ、立ち上がった優子だったが。細くて柔らかい彼女のその手を、愛花は容赦なく掴んだ。
痛みを感じるほどの強い力。
「どこに行くの?」
「? すぐに戻るから」
「……なぜ?」
ヘビに睨まれたカエルのごとく、彼女は一瞬動けなくなる。
「ダメよ。ここにいて」
「……、――え?」