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変態の証明。  作者: チラリズム
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疑心2



 六年生のある日。

 理科室での授業中、一人の女子生徒が威圧的な態度で暴言を吐いている。

 その相手は西島優子だった。


 一方的に責め立ててくる女子生徒に、優子は黙り込んでしまっている。

 理科の実験でグループだった二人。おそらく優子のミスに対して苛立いらだちを覚えたのだろう。

 先生の仲介ちゅうかいにより騒ぎは無事治まった。


 ……この時。同じクラスだった黒原愛花は、まだ“友達同士”である優子のことを見ていることしかできなかった。

 自分のその手を強く握りしめて、ただ見ていることしかできなかったのである。



「私達のこと……気づかれたかな?」


 今にも消えそうな声で優子は呟いた。


 曇り空の帰り道。

 優子は両手で自分のスカートのすそを集めるようにして握り、俯いたまま愛花の後ろを付いて歩く。

 その脳裏に浮かべているのは。教室にいた他の生徒達からの視線だった。


「ごめんなさい愛花ちゃん……私」

「問題ないわよ優子。心配しないで」


 自販機の前で愛花は振り返ると、落ち込む彼女の顔を上げさせて微笑んだ。

 優子が教室でとった行動。口をついて出た言動。

 おそらくそれは……。


「独占欲かしら?」

「…………」

「“保健室”の時とは逆になったわね……ふふっ」


 愛花はどこか楽しんでいるように問いかける。

 何を思い、何を好み、何に怒るのか。そんな彼女を知るのが愛花は好きだった。

 優子の価値観は出会ったあの日から変わらない。

 不変的な彼女の態度に優子は素直な気持ちで口にした。


「私のこと、嫌いになった?」

「……?」


 呆れた表情で肩をすくめる。これは経験にない。


「どうしてそんなことを言うの? 私達、誓約したじゃない?」


 見透かすような瞳で顔を覗き込まれた優子は、今にも泣き出しそうになる。


「よしよし……本当に泣き虫さんね。ダメよ優子」


 母が子をなだめるように、愛花は優子を抱き寄せて頭をなでた。

 重ねる体。聞こえてくる互いの心臓の鼓動。

 今のこの二人に、他の何かが入る隙間なんてない。


「私は優子だけよ。愛してる。誰かに奪われたりなんかしないわ」

「……絶対に?」

「――――!」

「証拠を……証拠を見せてほしいの!」


 ため込んでいたものを吐き出すように声を張る優子。

 考慮できないくらいの精神状態。

 そんな彼女の心境の変化を悟り、そして新たな一面を知れて喜びながら、容易ではなさそうに思えるそれに、愛花は全霊をもって応える。


「いいわ。ついてきて」

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