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変態の証明。  作者: チラリズム
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疑心1



 チャイムが鳴り、今日でテスト期間が終了した。

 教室にいるほとんどの生徒が険しい顔で答案用紙に向き合っていたが、黒原愛花は違う。

 体調も万全で、冷静さを失わず、平常心でテストに取り組めた。

 優子のことを想えば、このつまらない日常にも自然と溶け込んでいける。

 他の生徒からは優秀でクールな生徒会委員の女子生徒だと印象付いている愛花。

 あの特別な感情は表情に一切出さず、少しずつ狂っていこうと心に誓ってからは、器用に生きていくのがさらに上手くなった。


 下校時刻……。

 テストからの解放感で背伸びをする生徒もいれば、まだまだ勉強不足を自覚して足早に塾へと向かう生徒もいる。

 半数の生徒が教室からいなくなるなかで、愛花の黒い瞳が見つめる先には、ゆっくりと自分のペースで帰り支度をする優子の姿があった。


「ねぇ黒原さん、これからカラオケ行かない?」


 声をかけてきた二人の生徒が愛花の視界をさえぎった。そのうちの一人は上履きの色が違うことから下級生だとわかる。

 愛花に話しかけている二人の姿に気づいた優子のその表情は、普段に見せる優しくて大人しいものではなく、唇を軽く噛みしめ、嫌悪感けんおかんを抱いたものだった。

 怒りに身を任せ、合理性よりも感情を優先するような性格ではないはずの優子が見せた憎悪のある姿。


「…………」


 気がつけば二人の後ろに立っていた。


「あの……」

「……?」


 優子の声に振り返る二人と、椅子に腰掛けたままの愛花。

 前のめりになり、勇気を振り絞るように声を出した。


「私から黒原さんを奪わないで!」


 緊迫した口調で言ったその言葉に誰より驚いたのは優子自身だった。

 自分がこんなことを言うなんて、と少しだけ口を開いたままその場で固まってしまう。

 教室中の空気も変わる。


「なに?」


 聞き返す生徒。

 その彼女の肩に軽く手を乗せた後、愛花は優子のもとへ歩み寄る。


「自分も一緒に行きたかった。声をかけてもらいたかった。そういうことよ、ね? 西島さん?」


「え、あ……うん」


 その後。

 西島さんと先に約束していたことがあるから。と、愛花は結局二人の誘いを断った。


 ――あの二人。最近仲いいよね。


 それは教室を出る時。

 どこからか、確かに聞こえた声だった。

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