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私は元々お風呂が大好きで、温泉ともなれば露天風呂で30分も過ごしたりする。

外の景色を眺めながら背伸びをした。あとでこんな良い所に連れて来てくれた彼に感謝しなきゃ。



そうこうしているうちに40分も経過していた。さすがにまずいと思って慌てて湯槽から上がる。長くなってきた髪を結んで浴衣を着た。


のぼせた身体を覚まそうと、自販機にあったコーヒー牛乳を買ってみた。こぶりだけど、彼と半分にしても問題ない量ではある。




お風呂場から出てくると彼がすでに待っていた。ずいぶん待たせてしまったんじゃないかと慌てて彼に近寄る。



「お、来たね」


「はい、これ。いりますか?」



そう言って彼にビンを手渡した。

彼は何も言わずに笑顔だけを向け、ビンの蓋を開けた。




その時、彼がぐいーっとコーヒー牛乳を飲み干してしまった。私の分なんて一滴も残っていない。


彼は満面の笑みで空のビンだけを渡した。


「ん…ありがと」


「ちょっ、と!全部飲んで良いなんて一言も言ってないし!」


「『いりますか?』って言ったじゃん」


「全部飲んで良いなんて言ってません」


「全部ダメとも言ってないよね」


「む、ぅ…」




確かにそうだけど…そう言われてしまったら反論しようがない。


私はきっとこの先彼と喧嘩したとしても勝てないんだろうな、と痛感した。






2人でぶらぶらと下町を歩く。家族旅行の時とはまた違った感じで、何事も楽しい。



すると私の足元を二歳くらいの子供がよちよち歩いていた。ふとその子の行く先に目をやると、若い夫婦が笑顔で子供の到着を待っていた。


「わー、可愛い…」


私は子供とか、小さくてぷくぷくした感じのものを見ると目を奪われてしまう。この子も最近歩けるようになったばかりなのか、小さな足で懸命に歩いている姿がとにかく可愛い。



すると彼が突然手をぎゅっと握って来た。


「…欲しい?」


「え?」



思わず彼の方を振り返った。ぬいぐるみ感覚で連れて帰りそうとでも思ったんだろうか。つい笑ってしまう。


「やだなぁ、連れて帰ったりしませんよ」


でも切に子供が欲しいと思う。出来ればずっと可愛い時期のままで。



「お母さんが学生結婚で、大学四年の時にお姉ちゃんを産んだから、何かそういうの羨ましいなって」



大学二年になる今年、お母さんがお姉ちゃんを生んだ歳まであと2年だ。対抗意識があるわけじゃないけど、何だかつい比較してしまう。



彼は少し笑って言葉を発した。


「何、誘ってんの?」


「誰を?」


「俺を」


「どこに?」




コンサート?いや、まだずいぶん先のこと…映画?いやいや、『え』の字も言ったことないし…ドライブ?誘ったっけ?



彼がふっと笑ったあと、真っすぐと私を見つめた。


「あとで教えてあげる」




何であとで?そう思ったけど、ちゃんと教えてくれるだろうと期待してあえて聞かないことにした。


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