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今日の教習も終わりに差し掛かっている。




「セリーヌ・ディオン知ってる?

確かフランス語は喋れるけど英語が喋れなくて、それで…」


赤信号で止まっている車内で会話を続ける。

でも彼女に余裕なんてなくて、彼女は前を向いたまま口を開けた。



「あれ、カナダの人でしたっけ?

カナダの公用語って確かフランス語と英語ですよ」


カナダってフランス語圏なんだ…

10歳下の女の子に打ち負かされた気分だ。


ちょっと知識をひけらかしてみる。


「ベルギーもフランス語と何かが公用語だったよな」


「ドイツ語でしょう?」




ダメだ、現役生には敵わない。



彼女は信号を見つめたまま笑顔で話した。


「私来年の三月、ベルギーとフランスに留学するんですよ」



すごい、レベルが違う。


「まじで!何買って来てくれるの?」


「…え?」


「え?」



勿論買って来てくれるなんて微塵も思ってない。

何より彼女の教習期限は今年の九月。再入校でもしない限りその時期に顔を合わせることなんてまずない。


でも何故だろう、心のどこかに期待がある。




彼女は少しだけ顔をこちらに向けた。


「…え?」


「え?」




埒があかなくなるので、軽く笑って話題を戻す。


「フランスって言ったらプジョーだな。知ってる?フランスの車のメーカー」


彼女はへぇ、と言って微笑んだ。温かみのある笑顔。



「そういやさ、ダヴィンチってフランス人?」


彼女の眉間に少しシワが寄った。


「え?そうでしたっけ?

イタリア人だった気が…」


「あれ、フランスに住んでなかったっけ?

それにしてもあの人凄いよな。画家で…」


「医者で、建築家で、彫刻家…?だったかな」


「天才だよなー…もはや変態だな」



何故か彼女が挙動不審になった。別にダヴィンチが聞いてる訳じゃないのに。


ああ、車が動き出したからだ。



「そんな事言っちゃダメですよ!」


「変態だよね」


「か、変わった人と言いましょうよ、そこは」


「ま…でも芸術家って変わり者が多いよね。感性が違うからかな?

絵が上手い人って描き方が違うもんな」




再び赤信号で止まっていると、彼女が左手の人差し指でスッと直線を描いた。


「まず軸から捉えますもんね」


間違いない、彼女は美術経験者だ。


「香西さんめっちゃ絵上手そう!そんな感じがするよ。わかる」




照れ笑いをしてそうですか?という。

面白さとのギャップにある可愛らしさ。



…何かズルい。


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