表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
82/237

-82-

やっと4日経った、という感じだ。

付き合い始めてから毎日電話しているというのに、直接会うまでのインターバルがかなり辛い。


身仕度をしながら、いつまでもこんな新鮮さが続いていけば良いなと思う。





待ち合わせ時間はいつかと同じ9時。今回はちゃんと寝れたけど、早起きしすぎて結果は結局一緒だった。

そして彼も。まだ20分前だというのに二人とも合流してしまった。



「早くない?」


「そっちこそ」


眠そうにしている彼を見ながら、私もこんな顔してるのかなぁ、なんてぼんやりと考える。





去年、今年はまだ一度もいちごを食べてないので、失礼ながら彼だろうがそうじゃなかろうがすごく楽しみだった。


だというのに、いざビニールハウスに行ってみれば『本日の営業は終了致しました』の札が立っていた。



「最悪…」


文句を言いながらシートベルトを着ける私を横目に彼が少し笑った。


「こんなオチなしでしょう」


「香西さんがいるせいかもよ」


一瞬固まったのち、すごい勢いで彼の方を見た。


「何でですか」


「だってほら、いっつも香西さんがウチに来てた時は天気悪かったじゃん。今日は天気良いからその分」


「失礼な!」


彼は車を発車させてから、わざとらしい口調で残念がった。


「あーあ、いちご食いたかったなぁー」


「…もう何も喋りません」



彼の方を向いていた私は顔を前に向け、ほんの少しだけ頬を膨らませた。すると横から大きな手が伸びて来て、私の右頬を掴んだ。


「ひゃ!むあー!」


一生懸命抵抗した。今、絶対ひどい顔になっている。

そんな顔を見せたくなくて左側を向くと、丁度青信号になったのか、彼が手を話して車を発進させた。


「何するんですか!頬が伸びたらどうしてくれるんですか」


「だっていかにも『掴んでください』と言わんばかりにむくれてたんだもん」


「そんなことないです」


「良いじゃん、香西さんドMなんだから」


「むぅ…」



『そんなことないです』と言えない私はホントにMなのかもしれない。けどここで引き下がったら負けな気がして、彼の左腕をぱしっと叩いた。


「ちょっと、運転中なんですけど」


「知りません」



わざと助手席の外側の景色を眺める。彼は笑い声を上げたあと、軽く息を吐いて話し始めた。


「そういやれんこん料理は作れるようになった?」


「うーん…一応、ね。味の保証はないですけど」


「そうなの?へー」


彼にしては珍しくこのリアクションで終わった。





が、やっぱりそういう終わり方があるわけでもなく、気付けば見覚えのある建物の前に到着していた。


「ここ、どこと思う?」



デジャヴってやつか、なんて思いながら考える。いや、全く同じ質問が以前にも…


「えーっと…家、内村さんの」


なので何となく答えには自信があった。しかしどういうわけか、彼がブーッ、と言った。


「はい、残念。平塚です」


「な、この前は建物を聞いたって言ったじゃないですか!」


「前回と全く同じと思ったら大違いだよ」




意地悪だ。なんて意地悪なんだ。

そんな彼には頑張っても敵わなくて、少しだけうつむいた。


「…ドS」





そんな私をよそに彼は車から下り、手招きして彼の部屋まで私を案内した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ