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日が経つのは相変わらず遅い。教習があった時と同じように、彼女に会えるまでの時間が果てしなく長く感じる…たとえそれがたったの4日だとしてもだ。
ようやく彼女に会うことが出来る。池田ちゃんと飲みに行った時に遭遇した時は、結局お互いの約束があったためにすぐ別れてしまった。
なので、こうやってゆっくり会えるのは…そうだ、彼女のために実用的ドライブをした時以来だ。
あの時と気持ちは全く変わらず、あまりの楽しみさにまたあまり寝付けなかったし、予定時間よりもかなり早くに待ち合わせ場所に着いてしまった。
そしてもちろん彼女も。
「早くない?」
「そっちこそ」
彼女に飽きを感じることなんてないだろう。
彼女がいちご狩りに行きたいと言っていたので、場所を調べあげて遠出をした。というのに、すっかり営業が終わってしまったらしい。
「最悪…」
彼女がかなりがっかりしている。それも仕方ない、車で片道一時間はかかっていたのだから。
「こんなオチなしでしょう」
「香西さんがいるせいかもよ」
「何でですか」
「だってほら、いっつも香西さんがウチに来てた時は天気悪かったじゃん。今日は天気良いからその分」
「失礼な!」
「あーあ、いちご食いたかったなぁー」
「…もう何も喋りません」
すねてしまった彼女さえも可愛くて、赤信号になった隙に右の頬を掴んだ。
「ひゃ!むあー!」
何かよくわからない声を出している彼女が面白い。青信号に変わったので、その柔らかな肌から惜しみつつ離れた。
「何するんですか!頬が伸びたらどうしてくれるんですか」
「だっていかにも『掴んでください』と言わんばかりにむくれてたんだもん」
「そんなことないです」
「良いじゃん、香西さんドMなんだから」
いつものようにむぅ、と唸った小動物が俺の左腕を叩いて来た。
「ちょっと、運転中なんですけど」
「知りません」
ああ、アレだ、ツンデレってやつだ。そんなことを思いながら話し掛ける。
「そういやれんこん料理は作れるようになった?」
彼女がうーん、と言ったあと、前を向いたまま言葉を続けた。
「一応、ね。味の保証はないですけど」
どうせ今引き換えしてる最中でこのあとすることなんてないから、例の場所へ向かうことにした。そう、いつかも行ったあの場所へ。
建物の目の前に車を停めてハンドブレーキを引く。さすがにぼけっとしてる彼女でも二回目になればわかるだろう。
「ここ、どこと思う?」
俺の問いに彼女が少し考えている。どこに考える必要があるのだろう。
「えーっと…家、内村さんの」
さすがにわかったか、と思いつつも個人的に面白い展開へ持って行きたい。
「はい、残念。平塚です」
「な、この前は建物を聞いたって言ったじゃないですか!」
「前回と全く同じと思ったら大違いだよ」
「…ドS」
少しふて腐れる彼女を横目に思わず笑ってしまった。仕方ないじゃないか、彼女がドMなんだから。
車から下りて3階の自室へと向かう。今日はいちごが食えなくて腹が減ってる分、彼女の手料理は天の恵みになるに違いない。