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今度こそ、と約束をして次の月曜にドライブデートをすることになった。




実は池田ちゃんに謝り続けた日、彼女のことを突っ込まれたのだ。



『内村さん彼女出来たんですね』


『覚えてたんだ』


『記憶が飛ぶまで飲んでません!

そんなことより…私彼女さんの顔に見覚えあるんですけど』


『…あ、そう?まぁどこにでもいそうな顔だとは思うけど…』



あの時は何と言ったら良いかわからなかった。卒業生だよ、と言ったって何も問題はなかったのかもしれないが、何となく気が引ける。





電話で他愛のない話ついでにその話をしてみた。携帯の向こうからは苦笑いが聞こえる。


『すみませんね、どこにでもいそうな顔で』


「いや、変な意味じゃなくて…卒業生って言いづらかったんだって」


『うーん、まあわからなくもないですけどね』



一応理解はしてくれているみたいだ。だが、やっぱり出会いの話をしにくい関係ってまずいんだろうか。


彼女を傷つけてはいないか、それだけが心配だ。




わざと話をそらすように彼女に話し掛ける。


「あ、そうだ。俺最近花粉症に悩まされてるんだけど…」


『花粉症にはれんこんが効くんですよ』


「へー」


『鶏のひき肉と合わせてつくね作るとか、煮物でも美味しいし』



自分では作る気にはなれない。面倒だからというのも理由だが、何より彼女がいるから。付き合ってるんだし、作ってもらったって悪くはないだろう。


「ねえ、今度家で作ってよ」


『やですよ、めんどくさい』




彼女は時々意地悪になる。だが俺がいじれば形勢逆転は目に見えている。


「料理が出来ないからって意地張らないの」


『なっ!あのチーズケーキ誰が作ったと思ってるんですか』



彼女はいつも俺の期待に応えてくれる。予想通りの反応についつい笑ってしまう。


「嘘って。美味かったもん、あれ」


『ホントに?料理は作れるけど美味しくないんで…』



彼女はたまにこんな感じで真剣に悩んだりする。彼女の言い草だと謙遜が自虐になりかねない。



「俺チーズケーキ以外食ったことないからさ、上手いかどうかはわからないじゃん。

だから今度作ってよ、普通の飯をさ」


『もうちょっと上手くなってから』


「ダメ、今度」


彼女がむぅ、と唸った。何をそんなに謙遜するんだろうか。


「大丈夫だって、お菓子が作れるなら普通の飯とか楽勝でしょ?」


『…ハードル上げないでくれませんか?』


「上げてない上げてない」



彼女が何か言いたげにうー、と言ったあと、念を押すように切り出して来た。


『不味かったら言ってくださいよ?不味かったのに美味しかったよ、って言われるのが一番辛いんですから』


復習項目がついたらへこむんだから、そんなバカ正直に言ったら泣いてしまうんじゃないかと多少不安になるが、そこは彼女からのお願いだ。腹をくくるしかない。


「わかったよ、楽しみにしてるから」


『…はい』




その後何も喋らなくなった彼女がおかしくて、思わず笑ってしまった。


「何、もー…そんな気負いしなさんなって!」


『だって…』


「仮に今度不味かったとしてもさ、どんどん上手くなっていけば良いわけじゃん」


『まあそうですけど…』




月曜まであと4日ある。限界まで調整するんだろうか…楽しみだ。


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