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付き合い初めてからというもの毎日電話をしている。もっともかけるのはいつも俺からだが。



最後の教習から約一週間経った今日、珍しく彼女から着信があった。


「もしもし?」


『こんばんはー。卒検受かりましたよ!』


「あ、ホントに?おめでとう」



もちろんこれだけじゃ満足しないのが俺だ。



「香西さんが自主経路設計も駐車も合格とか奇跡だね」


『ひどっ!私頑張ってたじゃないですか!』


「頑張ってた『けど』、道も覚えれないし、駐車手間取るし」


『むー…誰が教えたと思ってるんですか』


彼女の反応には全く飽きが来ない。いつものように爆笑する。



『ちょっと、そんなに笑わなくても良いでしょう!』


「だって香西さんマジウケるんだもん」


『私そんな面白い事言ってません』



何とか笑いを堪えようと軽く一息ついた。


「それにしてもさ、ホントよく自主経路設計合格したね」


『頑張ったんです』


地図すら読めない彼女は覚えるのにかなり苦労しただろう。そこは褒めてあげないといけない。


「おーえらいえらい」


自他共に認めるSの俺は、見事な棒読みで彼女を褒めた。もちろん彼女の反応は期待通りで面白い。


『そんな棒読みで褒められても嬉しくないし』


「よくがんばりました」


『無視ですか』


彼女といるとホントに退屈しない。いつも楽しい気分にさせてもらってばっかりだ。


「はー…ウケるー…」


電話の向こうで小動物がむぅ、と唸った。




その直後だっただろうか、彼女がねえねえ、と言って話し掛けて来た。


『私いつまで香西さんって呼ばれるんですか?』


そう言われてみれば…いつもの癖でついつい苗字で呼んでしまう。


『もしかして普通に下の名前で呼ぶのが面白くないからわざと?』


釈明しようとしてたのに…そう言われてしまったらいじる以外に選択肢なんてないじゃないか。


「ご不満ですか薫さま」


『当たり前でしょう!何でそこでさま付けなんですか』


やばい、明日腹筋が筋肉痛になってそうだ。笑いが止まらなくなってくる。


「当たり前でしょうって…」


『良いです、今日教習アンケートの指導が悪かった指導員の所に『内村新一さん 最低でした』って書いたから』


MはSにもなり得るというが…俺があれだけやめて、と頼んだのに書いてしまったのか。校長に呼び出し喰らったらどうしてくれるんだ。


「嘘!?ちょ、ま、おい!書かないでって言ったじゃん!」


『嘘に決まってるじゃないですか』


その言葉にかなり脱力した。俺がどれだけ冷や汗かいたと思ってるんだ。


「うわ、マジ焦った…」


彼女が笑いながら言葉を続ける。


『だって楽しかったですもん、ホントに』




家に押しかけていじめ倒してやろうかと思ったが、その言葉にそんな考えは吹き飛んだ。

そこは素直に話しておこうと思う。


「俺もすっごい楽しかったよ。不器用ながら頑張ってるの伝わって来たし、真面目だから教え甲斐あったし、何より人が良い。バカが付くほどね」


彼女が照れたような口調で答えてくれた。


『…そうですか?』


「香西さんが家族からも友達からも先輩からも…みんなに好かれる理由、わかるもん」


『そんな今更褒めたって何もあげないですよ』



何もいらない。彼女がそばにいてくれるだけで良い。


「よし、じゃあ今度の火曜、お祝いにドライブに行こう。いちご狩りの出来るとこちゃんと見つけたから」


『ホントに!?わぁ、楽しみです』


「香西さんが免許取る前に行かないと…死ぬ目に遭いそう」


『どういう意味ですか』




名前を呼ぶのは明日の電話の時のお楽しみにしておこう。


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