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なんてこった…。
彼女とのドライブデートを翌日に控えた今日、何と彼女の指導が入っていた。
彼女とはあの電話以降特に接触がない。
気恥ずかしさが募る。
気を取り直して配車へ向かうと、珍しく彼女が車の外に立っていた。
「おはようございます、運転席どうぞ」
「あ、はい」
二人同時に車に乗る。何だか微妙な空気が流れていていたたまれない。
「…仮免の表示板前と後ろにつけた?」
「あ、今つけました」
会話はそれだけだった。どうしようか悩む。
いつもの雰囲気を出すには開き直るしかないと決心する。
「メールは?」
彼女はシートベルトを着ける動作を途中でやめて固まっている。
「メールしてって言ったじゃん」
「本文は作ったんです。送信してないだけで」
「しろよ!」
笑う俺をよそに、彼女はいつも通りむぅ、と唸った。
「だって今更送る内容なんてないじゃないですか。集合時間も場所も決まってるのに…」
「行き先決まってないじゃん」
彼女がえ?とでも言いたげな顔をしている。
「え、検定コースと家から大学と教習所までの道でしたよね?」
本気で言ってたんだ。おかしくて笑ってしまう。
「OK、OK。じゃあその他は俺にお任せって事で」
「はぁ…」
彼女は少し困惑気味で承諾した。
今日も相変わらずお世辞でも上手いとは言えない駐車措置が続く。
「ホラ、もっと綺麗に駐車してよ」
「むー…」
彼女が横やら後ろやらをきょろきょろと見渡す。
可愛らしい小動物を横目に、包帯の取れた左手の人差し指を見つめる。
「…そういやチーズケーキは?」
彼女が前を向いて口をかぱっと開けた。
「…忘れた」
「はぁ!?次の時間にくれるんじゃなかった?」
「でも今持って帰っても邪魔になりません?
どうせ明日会えるんだし、その時にでも渡そうかなって思ってたんですけど…嫌でした?」
なるほど、一理ある。
明日どんなチーズケーキを渡されるのか楽しみだ。駐車と違って料理は上手いはずだから。