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延々と続く駐車作業に終わりが見えて来た。
あくまでもそれは時間的な事であって、技術的な事ではない。辛うじて駐車できるレベルで終わった。
もとの位置に俺が駐車して話を続ける。
「じゃあコレ復習で」
彼女がこくこくと頷く。
もう小動物にしか見えない辺り、脳内がおかしな事になっている。
「復習になると落ち込む香西さん」
彼女がまた反論して来た。
「そこまで落ち込んでないじゃないですか」
「でもこの辺へこんだんだよね」
この前と同じところを指す。毎回彼女はここで何も言わなくなってしまう。
可愛い奴だ。
笑いながらさっきの話に戻る。
「ドライブの事なんだけど…」
「…ホントに行くんですか?」
彼女が少しびっくりしている。彼女が発した言葉はやっぱり冗談だったんだろう。でもここで押しとかないと、もうチャンスはないと直感した。
「折角だし行かない?何回も通ったら道覚えるだろうし。
…嫌なら良いけどさ」
彼女が俺の方を見て首を横に振った。
「とんでもないです!私で良いなら喜んで」
よし、契約成立。バインダーから紙を取り出す。
「番号教えてもらって良い?休み確認して連絡するから。
香西さんも休み確認しといて」
「わかりました。
番号は090…」
彼女の名前と番号を裏紙にメモする。
電話しよう、今日帰ってすぐに。
今月から毎日教習があっているため、休みがまちまちになっている。だから実は自分の休暇はとっくにチェック済みだ。連絡先を知る手段としてはセコいといえばセコいが、まあ結果オーライだ。
早く仕事が終わらないもんかとじれったくなった。