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さっきから気になっているのが、彼女の人差し指に巻かれた包帯。何をしたんだろうか。
「…その手どうしたの?」
「あぁ、火傷したんです。絆創膏が剥がれそうだったから念のために包帯巻いただけなんで、大した事ないですよ」
「料理してたの?」
「はい。お菓子作ってて…」
すっかり忘れていた。明日はバレンタインだ。
へえ、と言ったと同時に疑問が生じる。
あげる相手でもいるのだろうか…?
それはおいおい聞くとして、
「何くれるの?」
「…え?」
「いやいや、いつも丁寧に指導してる俺に何くれるの?」
彼女が苦笑する。
「作ったのはチーズケーキなんですけど…食べれますか?」
もちろんですとも。たとえ嫌いなものだったとしても食べてみせる。
「マジで!くれるの?」
「え?あげるなんて一言も…」
焦らす気か、この俺を。
じゃあ今聞くしかない。例のアレを。
「何、あげる相手でもいるの?」
車をバックさせながら彼女が喋る。
「いる訳ないじゃないですか。お姉ちゃんと二人で食べるんです」
つまり実家生の彼氏がいなければ、好きな人もいない。
「じゃあ何でくれないのさ」
彼女は後ろの方を見つめている。
「だって明日来ないですもん。次もしばらく後だし」
そういうことね。じゃあ貰える可能性はある。
「それだったら次来る時持って来てよ」
彼女は何も言わず笑顔で頷いた。